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アルスの異世界日記  作者: 藤の樹


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55/276

55日目 大地の牙、危機一髪

●55日目(グリウス歴863年6月27日)

一通り、巨人族の目撃場所や日時、目撃した状況を確認してあるので、

出発する事にした。

最初に目撃されたのは、ジュノー王国とエルフ王国の間で

ややエルフ王国寄りという事だ。多分、薬草採取で行った付近に近いはずだ。

最初はそこへ向かう事にする。


ほどなく目撃のあった場所と思わしき所まで来た。

目撃した冒険者が何箇所かに石を積んで目印を作ってくれたおかげで、

場所を特定する事ができた。

ちょうど昼になっているので、森に入る前にリリーと昼食を取る。

最近のリリーはずっと出っ放しでも大丈夫だし、

スキルのおかげなのかこちらの考えを言葉にしなくても伝わっている感じだ。

特に顕著(けんちょ)なのが戦闘中で戦闘になれば巻き込まれないように離れてくれる。

昼食を済ませて入るのだが、

そう言えばレンジャーのようなスキルは持っていない。

ここでスキルを取ってもいいのだが、

魔法などの獲得SPのコストがどんどん大きくなるので正直節約したい。

それというのも、風属性や光属性のレベルは9なのだが、

10にするにはそれぞれ1500のSPが必要になる。

ここは追跡ではなく、索敵とフライの魔法で探索した方が早いかもしれない。

索敵の範囲は自分を中心に500mあるのだから、

街道から500m以上奥に入ってジグザグに飛行すれば、

かなりカバーできると思う。

ここ最近、フライで飛ぶときにリリーは服の中に潜り込むことが多くなった。

なんでも飛ばされないように、しがみ付いているのが大変なのだとか。

リリーに飛んで行くぞと意識を飛ばすと、服の中に潜り込んだ。

「フライ!」

「ミサイルプロテクション!」

念の為、遠距離物理攻撃に対する防御をしておく。

索敵には色々とモンスターを補足しているが、巨人族は見つからず、

彼此(かれこれ)2時間ほど経っている。

うーん、なかなか見つからないなぁと思っていると、

ようやく索敵に集団を補足できた。数は20近い。急いでそちらに向かう。

近づくにつれ、激しい戦闘音が聞こえてくるが上空からでは、

木の()い茂る枝葉に(さえぎ)られて、状況が判別できない。

上空と言っても、木の天辺(てっぺん)付近を飛んでいるので下は見えていない。

索敵のマップ化でそこで戦っているのが、

大地の牙とトロールやオーガーなのは判っている。

そして、戦闘をしているのは大地の牙の面々のようだ。

木々の隙間から森の中へ低空で侵入していく。

すると少しずつ状況が見えてきた。

どうやら大地の牙はかなり劣勢に立たされている感じだった。

トロールが2体でそれを大盾持ちのザナッシュと

戦鎚のマークが1体ずつ抑えている。

しかし、魔法の武器ではないので、防戦一方のようだ。

リーダーのピエールが2体のオーガーと接敵し、

シーフのクロムが1体のオーガーと対峙(たいじ)している。

こちらもピエールが無理に2体押さえているが、かなり危険だ。

クロムは回避に専念しているようで、引き付けるので手一杯のようだ。

バリントンは守りと(いや)しの魔法で援護しているのだろうか、

攻撃しているようには見えない。

テトリアは、シーフのクロムに対峙しているオーガーに

ファイアボルトで攻撃しているが炎の威力が弱いせいか、

決め手になっていない。

森の中でなければ、もう少し威力のある魔法を使っているはずだ。


「能力強化-全」

一気に射程内に入るため、飛行速度を上げる。

「ウインドスラッシュ!」

まずは、戦闘力の低いクロムと対峙しているオーガーを攻撃する。

オーガーは胴体部に大きな裂傷を負って倒れた。

今の俺のステータス値のMAG(魔力)は、『270』ある。

Bランクの魔術師でも30あれば非常に優秀なのだが、

その10倍近い能力値だ。

魔力値によって、魔法ダメージが左右される様なので凶悪と呼ぶに相応(ふさわ)しい

ダメージ量になる。

突然の攻撃と破壊力に敵味方共に一瞬動きが止まる。

「ダブルスペル・ウインドスラッシュ!」

今度はピエールと対峙しているオーガー2体が

同時に先程と同じように倒れた。

「アルス!」叫んだのはクロムだった。

俺がピエールの近くに着地すると、

「助かった。」とピエールは声を掛けてきた。

近づいて判明したのだが、敵の増援と思われる一団が

この付近に近づいてきている。

「増援がくるぞ。」

俺はそれだけを伝えると、トロールに対峙している2人を見る。

このまま戦闘を離脱するのは厳しそうだ。

かなりダメージを負っているマークの方から片付ける事にした。

「リピートスペル・ウインドスラッシュ!」

風の刃がトロールに向かって飛んで行く。

そしてワンテンポ遅れて、もう一つの風の刃が飛んで行った。

連続した風の刃がトロールを切り裂き、

トロールは再生することなく倒れた。

いくら再生能力があってもそれ以上のダメージを負えば、

再生が間に合わず倒すことができる。

1体目のトロールを倒した時、5体のオーガーと2匹のトロールと

ジャイアントがこちらに近づいているのが見えた。

先程の攻撃でトロールに対して過剰(かじょう)攻撃であったのを見たので、

通常の攻撃に切り替える。

「ウインドスラッシュ!」

ザナッシュの前にいたトロールも絶命した。

よく見るとザナッシュの大盾は既にボロボロでもう役に立ちそうになかった。

ザナッシュは盾を捨てて、こちらに()けてきた。

ピエールは全員に向かってポーションで回復するように指示を出している。

魔法使いの2人は、「すまん。MP切れだ。」とピエールに伝えた。

近づいてくるジャイアントを鑑定する。

ジャイアント種の中のヒルジャイアント(丘巨人)と呼ばれる種族らしい。

特殊能力は無いがその大きさを利用した一撃の攻撃力の高さと

移動速度に優れている。

とはいっても巨体を活かして歩幅が大きいだけなのだが。

「オーガーは任せる。押さえてくれ。あとは引き受ける。」

そうピエールに言うと、分かったとピエールから帰ってきた。

流石に5体のオーガーは厳しいと思ったので、

火災を無視して魔法を発動させる。

「ライトニング!」

オーガー1体とトロールが直線状に並んでいたところを

見逃さずに狙い撃ちする。

稲妻がアルスの指先から(ほとばし)り、オーガーを貫通してトロールをも貫通する。

流石(さすが)にトロールは死ななかったようだが、

オーガーは隣にいたオーガーにぶつかり倒れた。

ぶつかられたオーガーはよろけて足を止める。

「ストーンブラスト!」

よろめいたオーガーとライトニングを喰らって瀕死(ひんし)のトロールに向けて

無数の石の(つぶて)が襲い掛かる。

この攻撃により2体の魔物は動かなくなった。

残り3体のオーガーと1体のヒルジャイアントがこちらに向かってくる。

まだ、フライの効果が残っているので

()えてオーガーを無視して、ヒルジャイアントの後ろに回る。

ピエール達がオーガーに向かって弓矢で牽制(けんせい)攻撃しているのもあり、

オーガーは大地の牙へと向かっている。

ヒルジャイアントはそれ程頭は悪くないので、

俺が後ろに回った事で足を止めて、俺を牽制する動きになった。

多少距離を開けて着地しながら魔法を発動する。

「アースシールド!」

「ミラーイメージ!」

すぐに防御魔法を整える。

ヒルジャイアントは土属性に耐性があり、

火属性にも若干の耐性を持っていて弱点らしい弱点は無い。

ヒルジャイアントはHPがかなり高いが、逆にMPはかなり低い。

距離があるうちに試したい魔法を発動する。

「ハイデンスペル・マインドブラスト!」

黒っぽい(もや)のようなものが、ヒルジャイアントの頭部に集まりながら

色を濃くしていき、頭の中に吸い込まれていく。

その瞬間、ヒルジャイアントは、白目をむいて昏倒した。

まだ生きてはいるので、とどめを刺した。


大地の牙は残り3体のオーガーに対して

ピエール、ザナッシュ、マークが相対(あいたい)していた。

テトリアとバリントンは、周囲を気にしつつ少しずつ後退している。

クロムは身を隠しながら、後方へ回ろうとしていた。

Bランク冒険者と言えどもオーガーと1対1は厳しいようだ。

特にザナッシュは盾を失っているので剣で受け流すのに精いっぱいだ。

ピエールもオーガーに対して力負けしているようで、

攻撃してもかすり傷を負わせられる程度だ。

唯一、マークは打撃を与えているが、

先程の戦闘で疲労とダメージが完全に回復していない。

その為、防御に気を使いすぎて攻めあぐねていた。

そのマークが対峙しているオーガーは攻撃するために

大きなこん棒を振り上げる。

しかし、そのオーガーは突然後ろに激痛が走り、

こん棒を落としてよろめいてしまう。

背中にはクロムのショートソードが深く突き刺さっていた。

そして、その好機にマークは戦鎚をオーガーの頭に全力で殴り掛かり、

その一撃でオーガーは動かなくなる。

それと時を同じくして、ザナッシュはオーガーの攻撃を受け損ねて、

吹き飛ばされる。ザナッシュは意識はあるようだが、動くことができない。

口から血を吐き出して苦しそうにしている。

マークはカバーするためにザナッシュを吹き飛ばしたオーガーと

改めて対峙する。

吹き飛ばされたザナッシュにテトリアが走り出し、ベルトポーチから

取り出したポーションを飲ませようとしている。

マークもピエールも疲労がピークに来ているようで、

肩で息をしている状態だ。

クロムのショートソードは後ろから全力で突き刺したのと

オーガーが仰向(あおむ)けに倒れたことで回収できない状態になっている。

そして更に悪い事にピエールの剣も中ほどでぽっきりと折れてしまっている。

今は、木を盾にしてなんとか(しの)いでいる状態だった。

そしてなんとマークが疲労のために、

木の根に足を取られて転倒してしまった。

その好機を逃すまいとオーガーは大きなこん棒を振りかざす。

しかし、その振り上げた瞬間にオーガーの胸から光の弾丸が貫通してきた。

一瞬動きと止めたオーガーはそのまま前にゆっくりと倒れていく。

マークはそのオーガーの下敷きになるまいと転がって避けた。

そしてピエールと対峙していたオーガーも最後には風の刃で倒れた。


「大丈夫でしたか。」俺は大地の牙に近づき、訊いた。

「いや、助かった。なんとか命拾いした。」

テトリアにポーションを飲まされているザナッシュ以外は、

大きなダメージを負ってはいないようだ。

「アルスはなんでここに?」

ピエールは訊いてきた。

「昨日、ランゴバルドに戻ってきたら、ギルド長から依頼されて調査と討伐に来た。間に合ってよかったよ。」

「ホントに有難(ありがた)い。このままだったら、俺達は全滅していた。」

「なんでトロールなんかに手を出したの?森の中じゃ大地の牙も十分に力を出せなかったんじゃないの?」

「最初はトロールはいなかったんだ。オーガーが3体だけでいたから、仕留(しと)めようと思ったんだ。そのくらいなら俺達でも可能だからな。だけど、残り1匹まで来た時に、敵の増援が横から来て危うく、態勢が崩されるところだったんだ。なんとか持ち直したが、トロール2体は厳しく防戦一方だった。なんとか逃げる隙をつきたかったが、それも作れず、少しずつ後退していたんだ。そうしたら、アルスが来てくれた。感謝してるぜ。」

大地の牙が休憩している間に、

ジャイアント含む魔物を異空間収納に入れていく。

「その状態じゃあ、厳しいだろ。街まで着いて行こうか。」

「それは助かる。しかし、一応報告のあった巨人族の部隊と思わしき奴らは倒したが、他にいるかどうか判らない。ただ悪いが街道まで付いて来てくれると助かる。流石に装備なしじゃ、どうにもならないからな。」

「わかった。」

そう言って、一緒に収納してしまったクロムのショートソードを

クロムに返す。

「そうだ、大地の牙が倒したオーガーがどの辺りか分からなかったから、持ってきてないよ。」

とピエールに言うとクロムは一人で走って行った。

(しばら)くして、魔石だけ取ってきたと戻ってきた。


森を出た所で、すでに夕暮れに差し掛かる所だった。

大地の牙を街道まで見送る。

「このまま街に着いて行ってもいいですよ。」

大地の牙は、どう見てもボロボロな状態に見える。

「俺達は、今日は街に戻るだけだから、何とかなるさ。それよりも、輸送部隊の方が心配だ。気に掛けるならそちらを気にしてやってくれ。」

ピエール達全員が気にするなという態度で手を振る。

「分かったよ。じゃあ、気をつけて。」

一旦、別れを告げて、彼らと離れる。

「フライ!」

「ミサイルプロテクション!」

今度は、街道沿いを飛行する。できれば暗くなる前に合流したいところだ。


暫く、飛行しながら進んでいくと、小さな明かりが見えてくる。

どうやら、以前、エルフのヒュリアとドワーフのギームと

分かれた橋までやってきた。

ここにはドワーフの警備兵が常駐しているはずだ。

橋の手前で、着地して橋を渡っていく。

橋をかなり渡った所で誰何(すいか)の言葉が聞こえる。

「誰だ。一旦止まれ。」

ドワーフの警備兵らしき者達が3人現れた。

「驚かせてすみません。私はランゴバルドの冒険者のアルスと言います。冒険者ギルドの要請で周囲の警戒に当たっています。物資の輸送部隊はもう通過しましたか。」

ゆっくりと橋を進みながら訊ねた。

「これは『妖精族の友』のアルス殿ではないですか。ようこそ、ドワーフ王国へお越しになりました。歓迎いたします。」

そう言って、ドワーフの警備小屋へ案内された。

そう言えば、そんな称号を授けられたんだっけ。正直忘れてたよ。

「なんで皆さん俺の事知ってるんですか。」

「王都から各門に通達が出されています。特徴をはじめ、似顔絵も届いていますので、分かるのです。ハハハ」

そう言うとニコニコしながら、今日は是非(ぜひ)泊まっていってほしいと言われる。

「それと物資の輸送はドワーフ側からも護衛が付いているので心配はいりません。」

部屋に通されて、ひと心地した。

「ここに来る途中、巨人族を見ましたよ。他の冒険者達と協力して殲滅しましたが、こちらでは大丈夫ですか。」

と確認したが、特に問題は無いようだった。

一晩、寝床が借りられるようなので、ここは甘えておこう。


寝る前に、ステータス画面を覗くと、レベルがまた上がっていた。

ジャイアントとトロールのおかげかな?

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