53日目 英雄誕生?
●53日目(グリウス歴863年6月25日)
今日は王城に行く事になっている。
もう王様に会わないで、金だけ貰えればいいんだけど。
そう思いながら、王城へ行く。
王城に着き、前回と同じように別室で待つように言われたのだが
そこから先に案内してくれたのは、
なんと最初に王城へ来た時に案内してくれた人だった。
「いやあ、また、手柄を立てたのですか。すごいですね。アルス殿。その若さでBランク冒険者というのも納得ですよ。」
そう言って、気軽に話しかけてくれる。
「この通路を行くという事は、また王様と会うんですか?」
確認のため訊くと、当然ですという感じで答えが返ってくる。
なんで、わざわざ下々の人間に会うんだろう。
王様なんだから金渡して「はい、さようなら」でいいんじゃないかと
思ってしまう。
そんな事を考えている内に、あっという間に謁見の間の前まで来た。
前回教えたのは憶えていますかと訊かれたが、
実は3回目とは言えず、大丈夫ですと答えておく。
扉が開き、中に入り王様の前に進み出る。
「アルスよ。よくぞ参った。」
流石に3回目ともなれば名前で呼んでくるようだ。
部屋には王様に意外にも重臣と思しき人や宮廷魔術師のようなお爺さんや
騎士っぽいのが数人いた。
「此度の働き、誠に見事であった。流石は、ジュノー王国筆頭冒険者である。」
ん?今なんて言った?筆頭冒険者だって?
一体いつそんなモノになったんだ?そんなの聞いたことないですよ。
「そちの働きによって、我が国に蔓延っていた悪を処分する事が出来る。礼を言うぞ。」
「いえ、勿体なきお言葉。」
「そちは、ランゴバルドを救い、エルフ王国並びにドワーフ王国との友好の橋渡しとなり、我が兵士からの貴重な情報を持ち帰り、そして今回の働きだ。そなたは、すでに我が国にとって英雄と呼ばれるに相応しい働きをした。よってアルスに褒賞と合わせ英雄の称号を与える事とする。」
そして、謁見の間にいた人たちは「ジュノー王国ばんざい」
「新しき英雄アルスばんざい」等と歓声をあげた。
いや、ナニコレ?一体どうなってるの?
訳も分からず、とりあえず下がる事を許可されたので、
一旦下がる事になった。
別室に通され、賞金を持ってまいりますと言って案内の人が出ていった。
なんか、どんどん深みに嵌っているような気がする。
筆頭?英雄?そんな大それたことしてないよね?
そんな事を頭の中でグルグルと考えていると、
部屋に、先程謁見の間にいた人が2人来た。
「アルス殿、まずは自己紹介させてください。私は、ジュノー王国内務大臣のケーヘンと申します。そしてこちらは宮廷魔術師のロルフェスです。」
とケーヘンが挨拶する。ロルフェスはジッとこちらを見ている。
「まずは、こちらをお受け取り下さい。」
とケーヘンは袋と手紙を出した。
袋の中身は賞金で、白金貨30枚入っているそうだ。
そしてもう一つは手紙だ。
「これは?」ケーヘンに訊ねる。
「こちらも褒賞ですが、アルス殿はランゴバルド所属の冒険者なので、これを一度ランゴバルド辺境伯に渡して頂きたい。渡せば問題ありません。」
「アルス殿・・・」
突然、ロルフェスが話しかけてきた。
「なんでしょう。」
少し警戒しつつ、答える。
「わしは、宮廷魔術師を務めており、今まで色々な人間を見てきたが、その中でステータスが一切見えない人間には終ぞ会う事は無かった。しかし、お主のステータスは一切見る事がかなわぬ。わしはステータス鑑定のスキルをLv4まで持っているのじゃ。そのわしが見えないとなるとお主のステータス隠蔽はLv5以上という事になる。どうなのじゃ。」
と俺をジッと見ながら訊いてきた。
「ええ、ご推察のとおりです。」
とだけ答える。
「なるほど。ホッホッホッ。ならば良い。」
突然笑みをこぼし笑い出した。
俺も、ステータス鑑定で見てみる。
すると、言ったとおり、ステータス鑑定のレベルは4、地属性と闇属性の魔法がレベル3、光属性がLv1、他の属性Lv2だった。
流石宮廷魔術師だけあって一応全属性が使えるようだ。
しかしレベルは28、思ったほど高くない。
「ホッホッホ、わしのステータスを見なさったか。感想はどうじゃな。」
そういって、目を細める。
「流石は宮廷魔術師殿、全属性を使用なさるとは感服致しました。」
失礼のない様に、丁寧に言う。
「ふーむ、まあ良いじゃろう。」
一瞥した後、何か言いたそうだが、
そう言って部屋を出ていった。
「アルス殿、失礼した。決して悪気がある訳ではないんですが・・・」
「いいえ大丈夫ですよ。宮廷魔術師として人物を鑑定するのは当然の仕事と思いますので。」
「そう言っていただけると助かります。」
「先程の続きですが、この手紙をランゴバルド辺境伯に渡してください。褒賞が出ると思います。それではだいぶお時間を頂戴したので、入り口までお送り致します。」
そう言って、城門まで送ってもらった。
城を出て少し離れた所で、一度足を止めた。
何あの爺さん、ちょっと怖いんですけど。
俺の変なステータスがバレないでよかったかもしれない。
取り敢えず、ステータス隠蔽のスキルを最大まで上げる事にした。
さて、今度はランゴバルドまで行かなければならない。
乗合馬車の確認や依頼の確認のため、冒険者ギルドへ顔を出す事にした。
冒険者ギルドの掲示板にはランゴバルド行きの護衛依頼はなかった。
ほとんどが農村行きの護衛だけだ。
受付で、ランゴバルド行きの護衛依頼について聞いてみた。
「先日、ランゴバルドから物資の緊急手配の依頼が出まして、多くの物資がランゴバルドへ向けて出発しております。物資の量がかなり多いので、追加の輸送が検討されています。」
「何かあったのですか。」
「詳しい情報は無いのですが、量から察すると、籠城の為か、支援物資が考えられますね。まだ6月なので干ばつの被害でもなさそうですし、今ギルドでも
情報の確認をしている所です。」
まさか、モンスターホードが再発生ってことは無いだろうか。
でもダンジョン核は持ち帰ったから、ダンジョンの機能は無くなったはず。
それに王城では、そんな変な話は一切出て来なかった。
一体何が起こっているんだろう。
今考えてもしょうがないので、乗合馬車について訊いてみる。
「乗合馬車は2日前に出ていますので、次の出発は明後日ですね。」
そうなると、歩いて行った方が早い。
テレポートや能力強化を使えば、
今から出れば、2つ目の宿場町まで行ける可能性がある。
王都に特に何も用事もないしという事で、すぐに出立する事にした。
最初の方は、王都に近いせいもあって、あまりテレポートを使えないので
能力強化で速度を上げた。
昼休憩をした後は、人の往来も一気に減ってきたので
今度はテレポートで移動する。
そしてようやく1つ目の宿場町に到着した。
ここを素通りして、2つ目の宿場町を目指す。
この先はテレポートで移動できるチャンスは多いはずだ。
ここで少し実験をしながら進むことにした。
まずは、フライで上空に上がる。
そして飛んでいる状態でテレポートをしてみる。
勿論テレポートができるのは分かっているが、
上空で目標地点にしっかり跳べるかが問題だった。
空中では目標物がない。つまり跳んで行く場所の指定があやふやなのだ。
案の定、思っていた場所と少しズレていると感じた。
戦闘中で相手も飛んでいる場合は目標設定しやすいので問題ないだろうが、
例えば逃げる時などは目標物が無いせいで、
思ったより跳んでいないとかでは困るのだ。
何度か試している内にだいぶ目標地点へのテレポートができるようになった。
この方法で行けば視界が広い分、短距離テレポートでも地上に比べて
遠くへ進めるようになった。
勿論、道から離れた場所で行う必要はあるのだが、
それでも早く移動できるだろう。
そして、実にあっという間に2つ目の宿場町に到着した。
あと少しで夕暮れになる。今日はここに滞在して休むことにした。
宿屋でリリーが
「あるすは、すごーい、リリーも、やるー」
と言って、姿を消して別の場所で姿を見せるという事をやっていた。
それって、ただ姿消して動いてるだけじゃないの?とリリーを見ていたが、
おやっ?と思い、リリーのステータスを見る。
スキルの中に「テレポートLv1」と表示されていた。
ちなみに、レベルはLv2のまま変わっていない。
「どういう事?」
混乱しそうなので、考えるのは止めた。




