表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルスの異世界日記  作者: 藤の樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/276

48日目 岬の教会

●48日目(グリウス歴863年6月20日)

宿屋で朝食を済ませてから、少し早いがシュラ―子爵家に向かった。

シュラ―子爵に本を返して、教会に向かう(むね)を伝えた。

教会までは、一応、道が(つな)がっているようなので出発する。

そして、リリーを召喚した。

「おはよーあるすー。」

「リリー、おはよう。今日からはリリーは姿を消したまま一緒に行くよ。この辺りも人は多いから気を付けるんだよ。」

「はーい」そういうと姿を消した。

リリーに意識を向けると確かにリリーがいる事を感じられる。

方角だけならいくら遠くても大丈夫らしい。

近くにいると見えないのに見えているような錯覚(さっかく)する。

これなら大丈夫だろう。

消えたままのリリーを鑑定する事は出来るのだろうかと疑問に思い、

鑑定してみる。

どうやら、対象がはっきりしていれば鑑定出来るようだ。

そしてリリーがレベル2になっているのに気づいた。

だが、特にスキルが増えたわけでもなく、

HPとMPが少し増えているだけだった。

それでも生存率が上がっているのは良い事だ。

だいぶ歩いてきた所で、分かれ道が来た。

左手の道は港町に向かっているようで、道も広い。

右手の道は、それよりも道幅は狭く、人の通りも少なそうだ。

たぶん、(みさき)の教会はこっちを行けばよいのだろう。


今までは周りに畑が結構(けっこう)あったが、分岐(ぶんき)で別れた後は、

畑すら見られなくなってきた。

周囲は林が点在し、野原ばかりである。

王都より南側はモンスターも駆逐(くちく)されて、出る事もない。

あるとすれば、野犬程度になる。


だいぶ昼に近づいてきたあたりで、ちょうど良い木陰(こかげ)を見つけた。

道からも外れていないので、そこで昼食にする。

リリーには定番の果物を渡し、ダンジョン攻略時に大量に作っておいた

肉はさみパンとスープを出す。

スープは熱い状態で収納しているので未だに熱いままだ。

この能力は便利すぎる。


昼食も終え、出発する前に1つ実験をしようと思っていた。

「リリー、ちょっと実験したいから来てくれる?」

「なにするのー」

そう言ってリリーは頭の上に乗る。

「そのままジッとしていてくれるかい。」

「わかったー」

これから実験したいのは光と風属性で得たテレポートの魔法だ。

最初は怖いので短距離を試すつもりだ。

ちょうど目印の木がここにあるので、この道の先まで跳んでみる事にする。

「テレポート!」

すると、一瞬にして視界が変わる。

後ろを振り返ると、先程の木はかなり後ろにあった。

リリーは頭の上に乗っているようだ。

「リリー大丈夫だった。」

リリーを確認する。

「だいじょーぶだよー。むかし、ちょーろーさまがつかったまほうみたいー。あるす、すごーい」

りりーは頭の上でバタバタしている。

「リリーの長老さまも同じ魔法を使ってたのかい?」

「いっかいだけ、みたことあるんだよー。」

つまり、ピクシーも成長によっては

テレポート的な能力を持つ事もあるというわけか。

さて、MPはどれくらい消費しているかな。

思ったより使ってないな。

今の俺は、MP自動回復で毎秒1ポイント回復する事が出来る。

リリーと話している間に、回復が終わっているのだから、

20ポイント以下といったところか。

「もう一回やるよ。リリー、しっかり(つか)まっているんだよ。」

そう言って、テレポートをする。

結果、視認できる位置にテレポートするのは、MP3の消費で可能だ。

先程の木の位置が見えなくなった所で木までテレポートしたら

MPは4しか消費していない。

もしかしたら距離に比例して消費する可能性があるな。

距離については後日要検証だな。

「リリー、今度は少し離れてくれる?」

とリリーと接触しないようにする。その状態で5mほどテレポートする。

リリーはテレポートしていない。

リリーを呼ぶ。今度はリリーを対象にテレポートさせてみる。

しかし、魔法は発動しない。今度はリリーに触れてテレポートさせてみる。

今度は俺と一緒にテレポートしてしまった。

つまり、テレポートは、発動させるために接触している事が必要。

そして接触しているものは、一緒にテレポートしてしまう

という事が分かった。

「リリー、実験につきあってくれてありがとう。そろそろ出発しようか」

「うん。しゅっぱーつ」

途中、リリーには、あまり離れないよう注意して、あとは自由にさせていた。

リリーは(ちょう)を追いかけたり、花の(みつ)を飲んだりして

楽しみながらついて来ている。

俺は、定期的に周囲の索敵を怠らないようにしている。

基本的に逃げるだけなら、テレポートが使えるようになったから、

余裕だとは思う。

そして、距離を稼ぐのと仮に追手がいる事を警戒して、

テレポートを何度か使用した。

夕方になる前に、教会が見えてきた。

まだ先だが、1、2時間くらいで着くだろう。

教会が近づくにつれ、全容が見えてきた。

建物の大きさは、これまでの街の教会と大して変わらなかった。

確かに古い建物だが、手入れもそれなりに行き届いているようで、

ボロというわけでもないみたいだ。

街と違うのは、教会にくっ付いて平屋(ひらや)がいくつかある事と、

奇妙(きみょう)なドーム型の建物がある。今まで見たことない建物だ。

教会の敷地は街では壁に囲まれているが、こちらは、木の(さく)だけだった。

そのため、簡単に教会の扉の前まで来ることができた。

教会の扉をノックして待つ。ふと、横を見るとベルが設置されている。

ああ、これを鳴らすのか。

そして、ベルを鳴らして待つ。

すると、扉が開き、中から見習いのシスターのような人が出てきた。

「なにか御用でしょうか。」そう()いてくる。

あっ、そう言えばなんて答えよう。何も考えていなかったよ。

神様からのお告げで何て言っても信じてくれないだろうと悩んでいると

相手は不審な者でも見ているような眼を向けてくる。

このままじゃあ、不審者だよな。

「えーと、旅をしてきた者です。教会が見えたので、寄らせてもらいました。」

「お祈りをされたいのですか。」

「えー、はい。そうです。お祈りしたいと思ってます。」

相手は明らかに不審がっているが、一応中に通してくれた。

中は礼拝(れいはい)できるスペースになっているが、

建物に比して少し小さい印象を受ける。

「お祈りはこちらでできます。どうぞ。」

と歩き始める。

歩いている途中で脇の通路から神官着を着た年輩の女性が現れた。

「お客様ですか」

「はい、神官長様。お祈りをされたいとご希望の方です。」

そういって深々とお辞儀(じぎ)をする。

「それはわざわざご苦労様です。」

と神官長と呼ばれた人はこちらをじっと見てくる。

「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいですか。」

静かだが、威厳(いげん)があり、ハリのある声で訊いてきた。

「私は、アルスという者です。」

と答える。

「なるほど、小さいお友達はご一緒ですか。」

と奇妙なことを言ってきた。

小さい友達?何を言っているんだ。得体のしれない質問に鳥肌が立つ。

俺を知っている?敵?

意表を突く質問に、表情がこわばったのを見て

「安心して下さい。私はあなたの敵ではありませんよ。フフッ」

と顔を(ほころ)ばせた。

「あなたは、何故自分の事を知っているのか疑問に思っていますね。そしてもしかしたら自分の敵かもと。」

そう、その通りだ。

「しかし、もし私があなたの敵なら、あなたに小さいお友達がいる事を果たして知っているのでしょうか。」

そう、知っているはずはない。

それどころか街中や人目に付く場所では極力見つからないようにしてきた。

唯一、エルフの王国内で知っている者がいるだけのはず。

ただ、敵ではない事は確かなようだ。索敵にも反応は無い。

「なぜ、知っているのですか。」と訊ねる。

天啓(てんけい)がありました。ここに小さな友達を連れた小さい人が訪ねてくる。その者に()しみなく協力するように。そう、神の啓示(けいじ)がございました。あなたに、小さいお友達がいらっしゃるのでしたら、その啓示に従って、あなたに協力しましょう。」

つまり、ここが目的地という事で間違いなさそうだ。

「リリー、姿を見せてくれ。」

リリーは姿隠しをやめて、姿を現した。

ただ現したのは俺の頭の上なのだが。

「おやおや、小さいお友達はこんな所にいらっしゃったんですね。お名前は何ていうのかしら。」

「リリーはねー。リリーっていうんだよー。あるすがつけてくれたのー」

相変わらず、可笑(おか)しな自己紹介になっている。

「そうですか。りりーさんね。よろしくね。」

「リリーサンじゃないよー。リリーだよー」と頭の上で()ねている。

「そうですか。リリーですね。よろしくね。」

「うん。よろしくー」

さすが大人な対応だ。

「では、アルスさん。立ち話も何ですから、どうぞ、こちらに。」

そういって、奥に案内される。

その言葉を聞いて、近くで話の意味が分からず、

素っ頓狂(すっとんきょう)な顔をしていた見習いシスターはすぐに後を追ってくる。

部屋へ案内される。

そこは質素な部屋で中には簡素な椅子とテーブルが置かれていた。

おかけくださいと座るよう勧められた。

そして、見習いのシスターにお茶を持ってくるよう指示を出す。

「では、改めて。私はこの教会の責任者でポーリンと言います。先程いた子は、見習いシスターです。」

やはり、見習いシスターか。格好からしてそんな感じだった。

お茶は思いのほか早く出てきた。

もしかしたら、夕食の準備中だったのかもしれない。

見習いシスターはお茶を出すとすぐに部屋を出ていった。

「この教会にどのようなご用件でいらっしゃったのですか。」

とりあえず、悪い人間ではないと思うが、

「すみません。ちょっと失礼させてもらいます。『ディテクトエビル!』」

悪意を発見する魔法だ。特に反応は無い。

「失礼しました。」

「いえ、納得して頂けたなら問題ないです。」

「私がここへ来たのは、このためです。」

と言って、魂封じの水晶を出した。

「なるほど。触れても良いですか。」

(うなづ)く。

すると、神官長は目を閉じて(しばら)く触れたまま動かない。そして手を放した。

「なるほど、分かりました。では、明日の日の出と共に儀式を行いましょう。それでよろしいでしょうか。」

よろしいでしょうかと言われても、俺が決める事じゃない。

「少しお待ちください。」

と言って、俺も水晶に触れる。

水晶から言葉が伝わってくる。ユミコは、この神官長に任せると言ってきた。

「本当に良いんだな。」と確認するが、意思は固いようだ。

「では、神官長にお任せします。」と伝える。

「それでは、今日は遅いので、一緒に食事をして、お部屋でお休みください。こちらへ。」

そう言って食堂のような場所に案内される。

そこでは先程案内してくれた見習いシスターと

もう一人別の見習いシスターがいて、上等な神官服を着た者が2人、

そして、コックのような格好をしたものが1人と

使用人風の人が1人の6人が席に座っていた。

神官長が席に座り、俺も席へ(うなが)される。

コックの格好をしたものが、鍋からスープを各自に注いでいく。

全員に行き渡り、手を組んで、お祈りが始まった。

そして最後に神官長が「いただきましょう。」と言うと全員が食事を始めた。

なるほど、教会ではこうやって食事をするのか。

「ここでは、全員で一緒に食事をとるのが決まりとなっています。他とは違うので少し驚かれたのではないですか?」

と神官長は俺に訊いてくる。

「いえ、教会で食事をするのは初めてなので。」と答える。

それ以外は特に全員黙々(もくもく)と食事をしている。

俺も与えられたスープを飲む。

今まで飲んできたスープと違って、懐かしい味だ。

どうやら、魚介で出汁(だし)を取っているのかもしれない。

リリーにもスープは出されたが、リリーは飲まなかった。

代わりに果物を出してそれを食べさせた。


部屋へ案内されて今日はここに泊る事になった。

明日は日の出と共に儀式を始めると言っていたので、

起きるのは日の出前になるはずだ。

リリーにそのことを話して、とっとと就寝した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ