45日目 謎の依頼者
●45日目(グリウス歴863年6月17日)
朝食を済ませた後、リリーには戻ってもらった。
乗合馬車の集合場所に行く。集合場所には御者を含め10人いた。
御者は、これで全員揃ったので出発しますと伝える。
どうやら途中下車した人がいるらしい。一般人っぽい2人がいないようだ。
1つ目の宿場町を過ぎると、人通りが少しずつ増えていく。
そして周りに畑も徐々に増えていく。
特に何もないまま、次の宿場町に着いた。
宿屋を探したが、素泊まりの宿だけしか空いていなかった。
夕食は外で食べないといけないので、食事処を探す。
見つけたうちの1つが普通っぽいので、入ってみた。
味については、まあ普通といった感じだが、量は多く、値段は少し安めだ。
パンとスープと肉が気持ち入っている野菜炒めといったものだ。
食事を済ませ、外に出る。
ちょっと食べすぎたようなので、少しぶらつく事にした。
ただ、もう日も暮れており、店じまいをし始めている所も多い。
ちょっと遅かったようだ。
諦めて戻るかと思った時、前から走ってくる男がいた。
更にその後ろを追いかけている者もいる。
よく見ると、前を走っているのは、馬車で一緒だったシーフの男だ。
その後ろを追いかけているのは、フードを被った黒マントを着た者。
盗みでも働いたか?と思ったが、後ろの者は格好も胡散臭かった。
そして止まれとも言わずに無言で追いかけている。
すれ違った瞬間、シーフの男と目が合ったような気がしたが、
立ち止まることなく、走り去っていく。
その後ろを走っている者もすれ違った。ただマントに隠れてはいたが、
ちらりと短剣を握っているのが見えた。
かなり物騒な状況と感じたので、周囲を索敵スキルで確認する。
すると今走って行った2人以外にも追っている者がいるようだ。
多分、あと2人ほど。別の通りだが同じ方向へ走っている。
俺も怪しまれないように、追跡してみる事にした。
最初の2人は街の外に出た人目の付きにくい場所で動いていない。
対峙しているのかもしれない。他の追手達もすぐに合流しそうだ。
取り敢えず、暗いのでナイトビジョンだけは、かけておく。
「そこで何している。」とまだ離れている内に、あえて声をかける。
すると、追っていた3人の内、2人が無言でこちらに走りこんでくる。
はぁ?問答無用ってやつですか?走ってくる2人は大きな短剣を持っている。
この時点で、悪いのは黒づくめの方で確定っぽいな。
そう思ったので、ショートソードを抜きつつ、
走ってくる者と俺の間にファイヤーウォールを発動させる。
相手は全力で走ってきたので、完全に止まれず、炎の壁に触れてしまった。
見た目はただの炎の壁だが、触れれば当然のように魔法的ダメージを負う。
うわーっと相手は思わず悲鳴を上げる。
その後ろにいた者は何とか止まれたようだ。
その炎の壁をみて、街の中にいた者達が、外の異変に気付き始めた。
その様子を見ていた最初に追いかけていた者が、
ピュイっと口笛を吹いたと思ったら、3人とも街の外周に沿って
暗闇の中へ消えていった。
追われていたシーフの男は足と肩に負傷しており、
ポーションを飲んでいる所だった。
「大丈夫ですか。」と声を掛ける。
追って来た者達は、すでに索敵外にいっている。
「ああ、助かったよ。ああ君か。」
「歩けますか。」
「君に頼みがある。やはり君は強そうだ。報酬は出す。この包みを王城まで届けてくれないだろうか。」
「でも、見知らぬ人間にそんな重要そうなこと頼んでいいんですか。」
と訊く。
はっきり言って、初対面の人間に頼むようなことではないと思うが。
「はは。実は私は君を知っている。だから、頼むんだ。私は、奴らに顔がバレてしまった。たぶん、この先に行けば任務を全うできない。どうか頼む。」
「俺を知っている?どこかで会いましたか?」
と訊いてみる。
「その答えは、またいずれ。奴らが戻ってくる前に頼む。」
んー。このまま放っておけないしな。
「わかりました。届けるだけでいいんですね。」
「ああ、この包みとこのメダルを一緒に渡してくれ。そうすれば大丈夫だ。それと包みは決して開けないでくれ。」
「では、頼んだぞ。」
と言って、足を擦りながら、王都とは逆方向へ歩いて行く。
炎の壁もそろそろ効果が切れる頃だ。
街の人間に見られる前にそっと離れた方が良さそうだ。
念の為、インビジビリティで姿を消して戻る事にした。
結局、何だったんだと疑問は残るが、王城へ届けるのだから、
悪い事ではなさそうだ。
預かった物は異空間収納の中に入れて、宿に戻る事にした。
安全のため、宿の近くまで姿を消したままにした。




