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42日目 魔核の正体

●42日目(グリウス歴863年6月14日)

朝になり、再度昨日の事を皆で話して確認した。

「そういえば、ダンジョンには、強力なアイテムがあるって言ってませんでしたか」

と皆に訊いた。

「そう言えば何もありませんでしたね。最下層は魔核の部屋だったという事は、その部屋には宝があるとは思えないですから、あるとしたらヒドラがいた部屋になるんじゃないでしょうか。」

とマリアさんが答える。

「一応鑑定で調べたけど、ヒドラの部屋とその下の階層の魔核のあった部屋だけでしたね。」

と俺も答える。

「しかし、6階層には何もない部屋が1つあるだけでしたわ。隠し部屋も無さそうな構造ですわ。」

とマリアは地図を見ながら答える。

「通路に宝箱や宝自体が置いてある可能性はあるんですか。」

と更に訊いてみる。

「無くは無いだろうが、地図を見る限り可能性は低いな。」

とアンジェが答える。

「それにしてもこのダンジョンおかしくはないか。」

とピエールは疑問を投げかける。

「まず、モンスターが思ったより少ない。異常に多かったのはゾンビだけだ。それと造りもおかしい。2階層では、普通の洞窟だった。しかも外と繋がっていた節がある。このダンジョンは少なくとも数百年前からあるはずだろ。モンスターホードが証明している。それにも関わらず、ダンジョンの造りが中途半端というか未完成というか。どうにも腑に落ちないんだよなあ。」

とピエールは続けていった。

「たしかに、王都のダンジョンと比べるとダンジョン自体が未完成というイメージがあるな。」

とアンジェも同意する。

「宝箱は3階層だけでしたわよね。5階層も砂地だけでしたし。一応モンスタールームとセーフルームはありましたが、3部屋だけで構成されているなんて聞いたことないですわ」

とマリアは言った。

「まあ、色々と不明な事は多いが、魔核は壊したんだ。俺達は一旦街に戻って報告をしよう。俺達に依頼はダンジョンの攻略であってお宝を見つける事じゃない。お宝を探したいなら、再依頼がくるだろう。それじゃあ、1時間後に出発だ。みんな準備してくれ。」

とピエールは言った。

一度解散になり、預かっている食材を全て返した。

といっても、もう大した量ではないが。

工員と兵士達はここの防衛と建築が残っているので、

このまま残る事になっている。

皆と別れを告げて、冒険者チームは街に戻る為に出発した。


道と行っても、起伏(きふく)のある個所に板や石が埋め込まれただけであったり、

穴の開いた箇所を埋められたりしているだけだった。

この長い道のりでは、それだけでも大変な作業だったのだろう。

その道を索敵しながら歩いて行く。

ふと気がつくと、所々に植物が植えられているのに気づいた。

訊くと、この植物で獣を遠ざけているらしい。

効果はそう強くはないが、全く効き目がない訳でもなかった。

行きとは違い、帰りは順調に進み、午後の早い時間帯で街が見えてきた。

街に入り、全員でギルドへ向かう。一室に通され、ギルド長が入ってきた。

「随分と早い帰りだな。」

とギルド長は話しかけた。

「一応、攻略は完了した。アルス、魔石を全て出してくれ。」

ピエールが言った。

魔石を全て出す。ヒドラの魔石は一際(ひときわ)大きい。

「これは何の魔石だ。」

とギルド長は訊ねた。

「ヒドラだ」とピエールは答える。

「ヒドラも倒したのか。この人数で。」

と驚きを隠せないようだ。

「まあ、皆も疲れているだろう。報酬の件もある。明日、集まってもらってまとめて報告をしてくれ。多分、辺境伯も呼ぶ事になるだろうからな。」

そう言って、解散となった。


早速、銀の鹿亭へ行く。部屋は開いているとの事だ。

そのまま宿を取り、部屋に入る。

「リリーと会うのも久しぶりだ。」

リリーを呼び出す。

「あるすー。あそぼー。」

久々にリリーと(たわむ)れる。

「そうだ、リリーに面白いの見せてあげるよ。」

そう言って、ベッドの上で背負いバッグから、魂封じの水晶を取り出す。

「わー、なにこれー、なかでひがもえてるー。でもきれー。」

そう言って、水晶の周りをクルクル回ったり、指で突いたりしている。

あー、なんか癒されるなー。そう思いながらぼーっと(なが)めている。

「あるすー、このこ、なんかいってるよー」

この子?はっとして周りをキョロキョロ確認する。

「あるすー、このこだってー」

と水晶をツンツンと指で突いている。

「リリー、何だって。」

リリーに訊く。

「このこがー、あるすにーなんか、しゃべってるよー」

リリーは水晶を差している。

この子?水晶が?そう思いながら、水晶を手に取る。

「あなたはアルスっていうのね。聞こえているかしら。」

と頭の中に言葉が伝わってくる。

「君は誰?」恐る恐る訊いた。

「私?私は、私は誰だっけ?」

記憶喪失というやつか?

「そうね、私は長い間、何者かによってこの中に閉じ込められていました。私はこの世界に来る前は、・・・そう、ユミコという名前だった。」

ユミコ?日本人?

「ああ、そうですね。だんだん記憶が甦ってきました。私はこの世界ではないところで一度死にました。そして神様に転生させると言われて、この世界で生まれ変わる予定でした。でも何故か、意識を取り戻したらこの中に閉じ込められていました。何かの儀式(ぎしき)のようなものが行われていたのですが、どんどん意識が薄れていって、その後は、たぶん私は眠りについたのだと思う。そして、意識が戻ったのですが、起きてはすぐに眠くなりを繰り返して・・・。起きている時は誰かに助けを求めていました。そしたら、あなたが来た。その後もすぐに眠くなって、あなたがあの時、私にかけられた呪いを解いてくれたのでしょう。でも、また眠くなって眠ってしまいました。でも、今はもう眠くならない。あなたが助けてくれたおかげです。」

んー。助けたのかなあ。まだ石の中だけど。

「つまり、簡単に言うとあなたは異世界人で、こっちに転生する前に何かがあってその石に入れられた。そしてその何かの儀式でダンジョンの魔核としてあそこにいた。で、合ってる?」

「ダンジョン?魔核?良く分からないですけど、儀式の途中で何者かが私に呪いをかけるみたいな事を言っていて、私は周りを見る事が出来なくて、今も見る事は出来ないけれど、感じ取る事はできます。今は意識もはっきりしてますし。」

「なるほど。じゃあ、君を元の姿に戻すにはどうしたらいい?」

「わからない。神様は私に生まれ変わって、この世界で自由に生きなさいと言われていた。その時いくつか能力も授けてくれた。でも、気づいた時には、私は、この中だった。一体どうなっているのか、私にも分からない。」

そういうと、悲しみに似た感情が伝わってくる。

「もう少し確認させて。君は、・・・日本人?」

そう、俺の記憶は全部は思い出せないけど、要所要所は思い出せる。そして、ユミコという名前は俺の記憶では日本人の名前だ。

違う世界でもその名前はあるのかもしれないが、同郷(どうきょう)なら嬉しい。

「・・・そうよ、私は日本人だった。高校生の時に事故で死んでしまった。もしかして、あなたも日本人なの?」

「ああ、そうだよ。君はいつこっちの世界に来たの。状況的には数百年前から存在しているらしいけど。」

「わからない。私はほとんど眠った状態だったから、感覚的にはまだ1週間くらい?」

そうか、意識が無い上にこの中で封じられた状態なら時間の感覚もない訳か。

「じゃあ、君は前の世界ではいつの時代に生きていたの?」

「私の誕生日?昭和45年8月25日生まれだよ。16歳の時に死んじゃったけど。」

同年代!でも、そうすると、時間的に約30数年前といったところだぞ。

それだと話が合わない。

モンスターホードは数百年前から起きていると言っていた。

時間軸がずれているという事か。よく分からない。

明日、ギルド長に確認してみるか。

「私、どうなっちゃうのかなぁ。」

「とりあえず、この事はしばらく秘密にしておいた方がいいかもしれない。僕も色々と調べてみるから、しばらく我慢(がまん)してくれ。」

「うん。ありがとう。」

その後、色々と鑑定や魔法で調べたが、

魂封じの水晶というのと魂が封じられているという事しか分からなかった。


その夜は、リリーと遊び、ユミコと昔話で少し盛り上がり、

今日は就寝する事にした。

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