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アルスの異世界日記  作者: 藤の樹


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41日目 ダンジョン攻略

●41日目(グリウス歴863年6月13日)

早朝に補給部隊は出発していった。今後は、補給の頻度(ひんど)は上がるはずだ。

今日は第6階層の攻略に入る。

4階層までは魔物も散発的(さんぱつてき)に出てくるだけで、問題なく通過できた。

第5階層では、中央にいるサンドウォームは相手にせず、

回り込んで階段へ行った。

途中、サンドラットという(ねずみ)のモンスターが出たが、

数も多くなくレベルも低かったので難なく排除(はいじょ)できた。

そして、第6階層への階段前に来た。

少し早いが、ここで、昼食を済ませてしまう。


いつものように下へ降りていく。6階層の扉には罠は無かった。

その扉を開けると、第1階層と同じような石造りの通路となっている。

索敵でマップを確認する。

この階層はどうやら、迷宮と呼ぶに相応しい迷路状になっていた。

間違いがないように羊皮紙に索敵で分かる範囲で書き込んでいく。

階段を降りたところがT字になっており、まず右に進んでいくことにした。

右側のルートは索敵範囲外に一番早く着きそうだったからだ。

そうは言っても罠を警戒しながら進むので、その進みは遅い。

ちなみに鑑定でも罠の発見はできるが、索敵や迷路の構造の方に

意識を向けていたいので、2人のシーフに任せている。

勿論(もちろん)、2人が悩むような場合とか何かありそうな所は鑑定している。

少し進んでいくと、この迷路の(はし)が索敵で判明した。

だいたい横幅が1kmくらいだろう。

何箇所(なんかしょ)も分かれ道があるが、ほとんど行き止まりになっている。

部屋らしい構造は無かった。

1本だけマップで言うと上の方角にまだ続いている道があるので、

そちらに向かうことにした。

今の所、罠はないようだ。

ただ行き止まりになっている道には行っていないので、そちらは分からない。

この道は最終的に1つの部屋に行きついた。

部屋の先は行き止まりになってる。

部屋の中を探索したが特に何も見つけることは出来なかった。

仕方なく、階段の場所まで戻る。

そして、今度は階段から左の通路を進んでいく。

索敵で確認できたのは、だいたい1kmの正方形に

近いエリアである事だった。

そして、一番最後に少し大きめの部屋がある。

その先に、階段がある事も分かった。

この(あた)りで一旦休憩を取る。

だいぶ歩き詰めだし、シーフの2人も神経を使っているせいか、

疲労が見てとれる。

「たぶん、この迷宮はトラップだらけのようだ。」

とクロムが言った。

「ああ、正規のルート上にはトラップは無さそうだが、ハズレの道にはいくつかトラップがあるのが分かった。」

とジェスも同意した。

「これだけトラップが多いとモンスターは出ないんじゃないか」

とクロムが感想を言った。

「気を付けるに越したことは無いだろうがな。」

と付け加える。

休憩を終え、扉の前まで来た。予想どおりここまで罠は無かった。

この扉の先は横300m縦400mと部屋としてはかなり大きい。

索敵で中に魔物が1体いるのがわかる。ヒドラだ。

「中にヒドラが1体います。他にはいません。」

と皆に伝える。

「ヒドラだと。」

ピエールが言ったが、他の者も驚きを隠せない。

「ここにきてヒドラとは、参りましたわね。」

とマリアは考え込む様に言う。

「ヒドラはな。A+以上のモンスターなんだ。最大の攻撃は毒のブレス。広範囲に毒をまき散らすから、このような狭い場所では最悪だ。普通、外とかなら風上で戦闘してなるべく被害が出ないよう、遠距離で戦う必要がある。しかも後方にキュアポイズンの魔法を使える者を配置して、いつでも回復できるようにする。あとは、ヒドラの頭の数次第だ。ヒドラは6~8本の頭がある。それを全部やらないと倒せない。」

とテトリアが教えてくれた。

「なら、引き付けて・・・、ああ、それもダメか。」

「そうだ、引き付けても今度は通路に毒が蔓延(まんえん)するだけだ。今度は近づくのも一苦労って訳さ。」

と答えてくれる。

「仮に押し込んで戦うにしても、相手の頭数だけ前衛が必要だ。1人一体の頭を抑えて、後ろからダメージを与えるのが一番いいのだが、11人全員が毒のブレスに巻き込まれたら、マリアとバリントンの魔力はすぐに底をつくだろう。かといって人数を減らしてというのも難しい。」

とピエールも状況を説明してくれた。

「それに、毒が何とかなっても俺たちだけで倒せるかもわからん。普通こんな相手にはバリスタとか使うレベルだしな。」

とザナッシュも言う。

ここで言っているバリスタとは、攻城兵器の一つで大型の石弓の事だ。

「俺とジェスは足手まといにしかならないかもしれない」

とトールはお手上げのポーズをしている。

「正直Dランクの俺達が手を出すレベルじゃないしな。」

とジェスも同意する。

「それを言ったら私達でも厳しいな。」

とアンジェも追随する。

「ここは撤退しかないのじゃないか。」

とザナッシュはピエールに訊いた。

「そうかもしれないな。」

とピエールも答える。

正直な所、俺はそれ程脅威(きょうい)に感じていないのだ。

これは、恐怖耐性をMAXまで上げた弊害(へいがい)だろうか。

それとも、毒が無効であることでそれ程脅威に感じていないのか。

一人ならいくらでもやりようがあると思っている。

ただ、ここで一人で倒してもこの先、もっと強い魔物が出る可能性がある。

そうなった時、結局はここで帰っても変わらないかもしれない。

うーん、どうしたものか。

よし、決めたっ。

「もし良ければ、僕一人で倒しましょうか。」

と皆に訊いてみる。

「はー?」

と全員が合唱した。何も全員で言わなくても。

「何言ってるんだ。一人でどうにかなる話じゃないだろ。」

といつもはちゃらんぽらんな感じのジェスが真顔(まがお)で言う。

「一応、作戦はあるんですよ。ただ、この作戦は僕だけでしか有効じゃないので。」

と答える。

「その作戦とは?」

とアンジェも訊いてくる。

「あまり詳しい事は言えないのですが、僕だけなら毒を無効に出来るんです。なので、この扉を利用して戦えば、複数の頭に襲われる心配もないですし、距離を置いて戦えますし。いけると思うんです。ただ一度戦闘が始まったら、この辺りは毒が充満(じゅうまん)するかもしれないので、皆さんは少なくとも今日はこの先に進めなくなっちゃいます。毒がどれだけの間、残るか分かりませんが一応倒せると思うんです。」

と皆に答える。

「確かに毒が効かないなら、アルスの魔法なら倒せるかもしれないな。いくら小型のヒドラであっても、流石にこの通路を進めるほど小さくは無いだろうしな。」

とアンジェは自問しているようだ。

「分かった。俺はアルスを信じる。ただ、駄目だった時は、すぐに逃げてこい。もともと無理な話なんだからな。無茶はするなよ。」

とピエールは了承(りょうしょう)した。

他の者も渋々(しぶしぶ)ではあったが、一応了承してくれた。

「では、皆さんは、念の為、階段の前まで退避していてもらえますか。毒がどこまで充満するか分かりませんので。それで、皆さんが行ってから、この砂時計の砂が落ちてから攻撃します。ジェスさん、砂時計貸してもらえますか。」

ジェスとクロムは、砂時計をそれぞれ持っていた。

シーフ、レンジャーでよく使われる道具だそうだ。

「ああ、必ず返せよ。」と渡してくれる。

「もし、毒がそちらまで流れるようなら、上の階に退避して下さいね」

とも言っておく。


全員が退避し、砂時計の時間も経ったので、戦闘準備に入る。

「ダークビジョン!」「プロテクションシールド!」「能力強化-全」

装備はワンドを持つことにした。そして、扉を開ける。

部屋の中央にヒドラがいる。すぐに気づき、こちらに向かってくる。

意外と動きは速い。見た所、頭は8本ある。

「ファイアーボール!」

ヒドラのど真ん中に炸裂(さくれつ)する。一瞬、速度が落ちたが、再び迫ってくる。

ストーム系の魔法を唱えるつもりだったが、

思ったより天井が高くないので止めにした。

天井が壊れて落石でもしたら、この先進めなくなるかもしれないからだ。

「ファイアーボール!」

2発目をぶち当てる。この攻撃で8つの頭の内、

3つの頭が後ろに倒れている。

この段階で、ヒドラはすぐ近くまで迫ってきていた。

こちらは、通路内に入り、後退する。

それを見たヒドラは、毒のブレスを吐き出した。

しかし、こちらまではほとんど届かなかった。

ヒドラの首の1つが通路内をのぞき込む。

そしてこちらを見るや、毒のブレスを吐こうとした。

それと同時に、こちらも魔法を放つ。

「ライトニング!」

ヒドラの首は毒を吐こうと口を開けたのだが、そこに電撃が突き刺さる。

ヒドラの頭に貫通してそのまま倒れこむ。

毒のブレスは、吐ききれずに、途中で止まる事となった。

ヒドラの頭は残り4本。

だが、ヒドラも正面に立つことの危険を理解したようで、

通路からは見えない位置にいる。隠れているつもりだろうか。

出てきたところを食いつく算段(さんだん)なのかもしれない。

だが、こちらは索敵で魔法の範囲内と確認した後、

そこへファイヤーボールを撃ち込んだ。

完全に当たらないまでも爆発範囲内にいればダメージは与えられる。

すると、ヒドラは、壁際(かべぎわ)を少し離れた位置に移動した。

これでは、どちらも攻撃できない。

ヒドラも毒のブレスを吐いたが、通路内には少ししか届かない。

もう少し頭が悪ければ簡単だったが、仕方ない。

「フライ!」

飛翔(ひしょう)の呪文で高速で飛びながら、呪文を撃ち込んでいくことにした。

一気に部屋の中へ飛んでいく。

出た瞬間にヒドラは毒のブレスを吐いたが、こちらには(かす)りもしなかった。

そしてブレスを吐いた事により、こちらを追ってくるタイミングも

遅れる事になった。

ヒドラがこちらに向かう頃には、十分な距離を稼げた。

そこへファイヤーボールを更に撃ち込んだ。

その1発のファイヤーボールで2つの首が倒れた。残りは2つ。

それでもヒドラはこちらに向かってくる。

残り2つなら個別に倒した方が良いと思い、

「ライトニング!」と唱えた。

こちらが空中を飛んでいた事、ヒドラも多数の頭を失っている事で

ふらつきながら進んでいた為に掠りはしたが外れてしまった。

すかさず、先程、魔法が掠った頭にウインドスラッシュを撃ち込む。

1つの頭はそれで倒れる事になった。

ヒドラも残り頭1つ、しかもかなりダメージを負っている。

まだ距離もあるが毒のブレスを吐き出した。

案の定、こちらには届かない。

そして追撃のウインドスラッシュをまともに食らってヒドラは倒れた。

ヒドラの魔石はひときわ大きかった。

地面に降り立ち、それを拾い上げてから、周囲を鑑定する。

部屋のあちこちに毒が充満しているみたいだ。


「・・・た・・・」

ん?何か聞こえたような気がした。

「・・・た・・・て・・・」

声というより、頭に直接入ってきたような、違和感のある感じだ。

「・・・け・・・て・・・」

・・・たすけて?・・・と言っているようにも感じる。

周りを見渡しても鑑定しても生物らしいものは一切いない。

もしかして、誰か助けに来て毒を食らったのか。

そう思い、入り口まで走る。

入り口の周辺には索敵で見ても誰もいない。

逆か?引き返して、階段の方へ向かう。

扉を鑑定して罠が無い事を確認する。そして思い切って扉を開ける。

そこには、階段が下へ伸びていた。

「・・・たす・・・け・・・て・・・」

やはり、誰かが助けてといっているようだ。

扉を開けた後、先程よりはっきり聞き取れるような感じであることから、

この先に間違いないだろう。

ただ、一人で行って大丈夫だろうか。何かの罠かも知れない。

普通に考えれば、この中に人がいるはずはない。

未踏破(みとうは)な上、妖魔の森の奥だ。ありえない。

しかし、助けてという意思は弱々(よわよわ)しく聞こえる。

ええーい、ままよ。

索敵と鑑定を繰り返し注意しながら下りていく。

降りた先は、扉が1枚、その奥に部屋が1つ。その先に通路は無い。

行き止まりだ。扉は罠が無かったが、押しても引いても開かない。

鍵穴も見当たらない。

だったら、魔法で開けるしかない。

「ノック!」

扉を開ける呪文を唱える。

この魔法なら、魔法で閉められた扉も開けられるはずだ。

ゴゴゴゴゴ。扉がゆっくりと開く。

中には、石でできた祭壇(さいだん)のような物があり、

その上に黒くて丸い水晶のような物が台座に載っていた。

その(たま)(うっす)らと光を放っていた。

「これがダンジョンの魔核か?」鑑定をしてみるが、何か分からない。

何かの阻害(そがい)隠蔽(いんぺい)魔法とかがかけられているのかもしれない。

たしか、魔核を壊せば、ダンジョンのモンスターの()きが(おさ)えられると

言っていたっけ。だったらこれを壊せばいいのだろう。

「おねがい、助けて・・・」

今度ははっきりと聞こえた。

「誰だ」思わず訊いてしまう。

「呪い・・・助けて・・・お願い・・・」

呪い?この珠に呪いが掛かっているのか?

つまり、呪いを解いて欲しいということか?

メニュー画面を開く。自身の全ての魔力適正に鑑定をかける。

光と闇魔法のLv6を取るとリムーブカースを取得出来るようだ。

それと光と闇と水属性でグレートディスペルマジックを憶えるみたいだ。

どちらも同じ効果は期待できそうだ。

リムーブカースは光と闇両方ともLv6が必要。

グレートディスペルマジックは光と闇と水が全てLv6が必要。

何が違うか検証は必要だろう。

ヒドラを倒したことでレベルが2つ上がっている。

一旦闇と水属性をLv6まで上げる。

まずは、グレートディスペルマジックで試そう。

「能力強化-魔力」

「ハイテンスペル・グレートディスペルマジック!」

すると、真っ黒だった珠は、真っ白く光りだした。

あまりの眩しさに腕で目を(かば)う。

次第に光は弱まり、ほんのりと光った状態に落ち着いた。

一体何なんだ?その珠を鑑定していた。

最近何だと思った物には鑑定をする(くせ)がついてしまっているようだ。

鑑定の結果は、『魂封じの水晶』とある。

それよりも、全力で魔法をかけたせいで、MPがごっそり持っていかれた。

まあ、すぐ回復するから問題ないと思うが、気を付けよう。

その水晶を手に持つ。

「ありがとう」と聞こえたような気がした。

水晶をよく見ると、水晶の中で炎が燃えているのが見える。

炎は赤や白、青などいろいろな色を見せている。

あまりに綺麗なのでしばらく見入ってしまった。

そろそろ戻らないと皆が心配するだろう。

水晶を異空間収納しようとしたが、入らなかった。

あれ?満タンなのか。とワンドを収納しようとしたら問題なく収納できた。

仕方ないので、背負いバッグに入れておく。

そして、急いで、みんなの下へ戻る事にした。


階段の前では、皆が心配そうに待っていた。

俺の姿を見ると皆が駆け寄ってきた。

色々と訊かれたので、皆にヒドラを倒した後、

その下の階層にあった魔核を壊したと説明した。

皆からは、何で一人でそんな危ない真似をしたんだと(しか)られたが、

無事であったことの方が嬉しかったようで

それほど、責められることはなかった。


その後、砦に戻ると、日も落ちていた。

砦内の皆にダンジョンは攻略された事を報告すると、皆は喜んだ。

その日は、皆で宴会騒ぎとなった。

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