35日目 危険な道のり
●35日目(グリウス歴863年6月7日)
今日は早朝より行動を開始する。
それというのも現在5km程まで撤去してあるが、
目的地まであと10kmある。
今日到着する可能性があるので、
向こうで必要な部材などは全て持っていくことにする。
今日はアンジェさんとマリアさんと大地の牙で先行することになった。
トールさんとジェスさんは兵士と一緒に護衛についた。
護衛側に何かあったら笛を吹く手筈になっている。
その代わり、先行者の俺達は、索敵範囲のモンスターを徹底的に
排除する事になっている。
索敵で指示を出しながら、倒木を収納をしていく。
だいぶ奥に来たことにより、モンスターの強さが上がっているようだ。
はじめのうちは、数が少なかったり、弱い魔物だったのだが、
昼を超えたあたりから、かなり忙しくなった。
「すみません。アンジェさん達がジャイアントスパイダー5匹の対処に向かったので、大地の牙の皆さんは、オークの群れ10匹の対処をお願いできますか。」
「おう、任せときな。」
そう言って大地の牙の面々はオークに向かって行った。
しかし、その後、正面から飛んでくるモンスターが1匹、
グリフォンがやって来る。2チームともまだ戦闘中のようだ。
ジャイアントスパイダーの方は、どうやら巣のようで、
蜘蛛の糸に苦戦しているのかもしれない。
オークの方も数ではオークの方が上だ。こちらも時間がかかるだろう。
グリフォンは飛んでいるとはいえ、後ろの部隊を襲わせる訳にはいかない。
一旦、収納は止めて、戦闘準備をする。
「フライ!」「能力強化-魔力」「プロテクションシールド!」
「ミラーイメージ!」
プロテクションシールドは物理攻撃に対しての防御魔法だ。
ミラーイメージは自分の分身を3体生み出す魔法だ。
ただし、あくまで幻影なので、攻撃が当たれば消えてしまう。
ここまで唱えて、上空にあがる。
すでに上昇中にグリフォンはこちらを視認したようで向かってくる。
森の中や森付近では火魔法は厳禁である。
火災により自分の身が危険になるからだ。
「ウインドスラッシュ!」
翼を狙ったが、グリフォンは身を捻り、回避した。
しかし、完全に避け切れなかったために、手傷は負わせられた。
そのままグリフォンは大きく旋回し、再度こちらに向かってくる。
再度「ウインドスラッシュ!」を発動させる。今度も翼を狙った。
グリフォンは避け切れないと判断したのか、翼を庇った。
その結果、胴体を切り裂かれる結果となった。
しかし、魔法抵抗が高いのか致命の一撃とはならなかった。
勝てないと判断したグリフォンは、そのまま、反転して逃げていった。
あの傷なら、暫くこちらを襲ってくる事もないだろう。
元の作業に戻る事にした。
戻って来た時に、ちょうどアンジェさん達も戻ってきた。
大地の牙は、戦闘自体は終わっているようだ。こちらに移動し始めている。
休む間もなく、収納作業に取り掛かる事となった。
現在時間にしてだいたい午後3時くらいだろうか。
伐採した道幅もすでに10m程度に狭まっている。
多分、残り3km前後で目的地と思われる。
そんな時、後方から行員の部隊が追い付いてきた。
少し前から地面の起伏が徐々に大きくなってきているので、
歩きに慣れていない工員たちは疲労の色が出始めていた。
「残り3kmくらいだとは思うんですが、起伏も多くなりますし、夜間の行軍は難しいでしょう。このまま進むか、このあたりで野営をするかの2択なのですが、皆さんどう思われますか。」
とみんなに訊いてみる。
「俺達だけならなあ。後ろの皆さんにはきついと思うぜ。」
とジェスさんは言った。
兵士の方達も山道に慣れていないせいか、疲労している者も見受けられた。
「しかし、山の中で野営は大丈夫なのか。段々敵も強くなっているし。」
とピエールさんはどうするかといった表情で答える。
「無理に現地に行っても工員が動けなければ、拠点無しで護衛する事になる。だったら、まだ、このあたりの方がマシかも知れない。」
とアンジェさん。
この意見には賛成が多いようだ。
「では無理してもしょうがないので、ここで野営の準備しましょうか。」
と皆さんに伝えた。
念の為、動けそうな工員の方にバリケードを設置してもらった。
とはいっても、朝には回収予定なので置くだけなのだが。
工員の方達が寝床の準備や食事の準備をしている間に、
夜警の順番を決めることにした。
基本3交代で、冒険者だけですることになった。
実際の所、兵士の方はこういった仕事に向いていない。
危険察知や違和感の見極め、直感などは冒険者でないと培われない。
それに慣れない任務で体力的にも精神的にも余力のない兵士の方では
安心できないといったところだ。
そんな中、大地の牙が一番危険な時間帯の2番目の見張りに
立ってくれることになった。
最初は俺とジェスさんとトールさんで行い、
最後はアンジェさんとマリアさんで決まった。
食事をしてすぐに大地の牙は眠りに入った。さすが、慣れているようだ。
アンジェさんとマリアさんは武器の手入れを行って、
そろそろ寝ようとしていた。
現在索敵には特に反応は無い。自分のステータスを見てみる。
レベルは上がってはいないが、もう少しで上がりそうな感じだ。
ちょっと思いついたことがある。
トールさんとジェスさんにここの護衛を任せて、
索敵ギリギリ500mの外周に沿って、周囲の偵察と
危険排除をしてしまおうという作戦だ。
近くにもし強敵がいるようなら、あらかじめ知っておけば、
対抗策も取りやすい。
トールさんとジェスさんにお願いしたので行く事にする。
トールさんは心配していたが無理をしないという事で納得してもらった。
少し離れた場所に行き、
「ナイトビジョン!」「ディテクト・エビル!」
「能力強化-全」「フライ!」「プロテクション・シールド!」
「マジックシールド!」「ディテクト・インビジブル!」
と魔法をかけていく。
そして低空のまま飛んで半径500mのラインで索敵していく。
全部相手にしている時間は無いので、そこそこ強そうなものに絞っていく。
初めに見つけたのは、トロール3体。
一旦着地して、2体が直線上に並ぶ位置で「ライトニング!」を唱える。
閃光が走り、トロール2体を貫く。
初めの1体はそのまま絶命した。
もう1体は苦しんでおり再生は出来ていないようだ。
もう1体がこちらに気づき、向かってくる。
頭はよくないようで、向かってくるのに
わざわざ後ろのトロールの直線状に入ってくれた。
後ろを巻き込む形で「ライトニング!」を放つ。
トロール3体は倒れた。解体している余裕は無いので、そのまま収納する。
ライトニングが当たってしまった木の幹が焦げていた。
雷系もマズかったか。延焼しないよう一応水をかけておく。
偵察を再開する。
フライとナイトビジョン以外は効果時間が短い。
その為、効果が切れるごとにかけ直しながら進んだ。
だいたい半周したあたりで少し離れているが、ハーピーの群れを確認した。
数は18体いる。離れているので、大丈夫かもしれないが、
飛行モンスターの為に行動範囲は広い。
特に倒木のある所は上空からは発見しやすいエリアになる。
ここは、殲滅するのが妥当と考えた。
近くまで行くと、ハーピーは大きな2本の木を寝床にしているようだ。
今は、ほとんどが眠っているように見える。
能力強化-全をかけ直して、なるべく多くを巻き込む形で魔法を発動させる。
「ウインドストーム!」
ハーピーはそれほどタフな生き物ではない。バタバタと落ちてくる。
生き残ったのは3匹ほどだった。そのうち1体はこちらへ飛んでくる。
それはウインドスラッシュでとどめを刺した。
残りの2体は野営地と離れる方向へ飛んでいった。
ハーピーもとりあえず回収しておく。
その後、特に危険そうなものは見当たらなかったので帰還した。
すでに、大地の牙の内2人が起きてきていた。
その2人に事情を話す。仕留めなかった魔物の生息場所も伝えておく。
そうしている内に全員が起きてきた。
引継も終わっているので、交代して寝ることにした。
寝る前にステータスを確認するとレベルが11に上がっていた。
SPは索敵をMAXに、属性魔法の水、火、闇をLv5に引き上げた。
これで、属性魔法はLv7の風を除いて全てLv5になった。




