33日目 攻略の仲間たち
●33日目(グリウス歴863年6月5日)
朝、誰も遅れてくることもなく集合した。
「早速ですがアンジェさん、ダンジョンについて知っている事を教えて下さい。」
とピエールさんは促した。
「ああ、ダンジョンは・・・」
とアンジェさんは昨日ギルド長から聞いた内容とほぼ同じ内容を説明した。
2人の認識が同じなら、そうなんだろう。
ただ、昨日出なかった話もあった。
「ダンジョンの魔物は階層を降りれば降りるほど強くなる。それだけならばまだ対処できるが問題は、その強さを引き出す階層の作りが問題だ。例えば火属性の魔物が多い階層は、温度が高い。その場合、氷の魔法の威力は減衰してしまうのだ。魔物の弱点を補うかのようにな。つまり、ダンジョンの地形によっては、魔物の弱点が弱点でなくなる場合がある。先程の例で言えば、氷で攻撃するのではなく土属性であったり風属性だったりの方が効率が良い場合があるという事だ。それと、闇属性は効きにくい。常に闇の中で活動しているせいかもしれない。その代わり光属性に弱い魔物は多い。だから、ダンジョンに潜るものは光属性の魔法を扱えるものが重宝される。また、探索では、部屋や扉を見つけた場合、必ず開けることを推奨する。扉を調べなかったことにより、挟み撃ちにあい、壊滅したというのは良く聞く話だ。分かれ道も気を付けるといいだろう。その場合、こちらが罠を仕掛けるのも一つの手だ。来るのが分かれば、挟み撃ちにあっても対処のしようがあるというものだ。それと部屋に魔法陣が書かれている部屋がある。一見では分からないが、よく観察できれば見える事も多い。ただ、今回は未踏のダンジョンだ。埃や土砂などで隠されている場合があるから気を付けてくれ。それでその魔法陣が書かれている部屋は、魔法的トラップかモンスタールームかセーフルームの可能性が大きい。ただそれが隠し扉の中など隠されている場合はセーフルームかトラップ部屋のどちらかだ。モンスタールームは魔物が生み出される性質上、隠し扉の中では魔物が徘徊する事ができない。つまり、その階層に1匹も魔物がいない場合を除いて、ありえないのだ。私達の知っている事はこんな感じだ。」
とアンジェさんは説明した。
「マリアは何か付け加えることはあるか。」
とアンジェさんはマリアさんに訊ねた。
「新しい階層に来たらまずは、セーフルームを見つけることが第一です。最悪の場合でもセーフルームまで逃げられれば助かる可能性は大きいです。稀にセーフルームまで追いかけてくる魔物もいますのでそれを倒さなければ地上までの転移は出来ないようになっていますから気を付けてください。」
とマリアさんは付け加えてから
「それでは、皆さんから質問があればお答えします。」と訊ねた。
その後は、色々な質問や疑問を受けて、
それに答えるといった時間が過ぎ、昼頃には話もひと段落した。
気を利かせたのかギルド長からという事で、
サンドウィッチみたいな軽食が運ばれてきた。
それを食べながら、改めて自己紹介をすることになった。
まずは、大地の牙から、リーダーのピエール。
メインは弓、剣で前衛にも立つ。
ザナッシュ、戦士で武装は大盾と剣。
マーク、戦士で武装は戦鎚。
クロム、レンジャーシーフで武装は短剣、投擲用の短剣も所持。
バリントン、魔法使い、属性は土と光。
テトリア、魔法使い 火属性。
という構成だ。珍しく魔法使いが2人もいる。
そのおかげでランクが高いのかもしれない。
続いてトール、戦士で武装は中型の盾と剣。
ジェス、レンジャーシーフで武装は弓。剣も一応所持。
そして、アンジェ、魔法剣士、属性は火、武装は剣。
マリア、魔法戦士、属性は光と水、武装はメイスと小型盾のバックラー。
ちなみに剣士は軽装で戦う。戦士は比較的重武装である。
最後に俺アルス。魔法使いとしておく。
属性は全部。武装は自衛用のショートソード。
「はあ?」全員に驚かれる。
なんでも使える属性が多いほど成長できないと言われているらしい。
2属性でも単属性に比べると成長が遅いらしい。
ただ、それでも鍛錬を続けたり、厳しい経験を積むことで、
3種の人間は強いと言われる。
3種とは、剣+光+火とか剣+槍+風といったものを指すらしい。
4種以上鍛えるのはどうしても限界があるらしい。
単属性はそれ自体は強いが、応用が利きにくく
特に魔法では役に立たない場面もあるらしい。
アンジェさんが説明をしている間に全員の鑑定を行った。
大地の牙の面々はレベル13~16だった。
アンジェさんとマリアさんは2人ともレベル20で断トツに高い。
トールさんとジェスさんは俺と同じレベル10だった。
今日はこれで解散となった。それぞれ準備をする必要があるためだ。
俺も今回ばかりは防具を買うつもりだ。
今までは動きが阻害されるのを嫌ってただの服だったが、
ダンジョンのような狭い場所だと不意打ちの可能性が高くなる。
特に索敵に掛からないような魔物がいた場合は致命傷になりかねない。
そして防具屋にきた。
しかし、俺のサイズの防具がない。そりゃそうだ。
12歳の体に合う防具なんて誰も買わないだろう。
俺の場合、オーダーメイドしかないとの事。
仮に今から作ると2週間はかかるらしい。
全く駄目である。
防具屋ですぐに防具が入用なら、魔道具はどうだと勧められた。
魔道具屋の場所を聞き、行ってみることにした。
魔道具屋は、扱っている物がモノだけに立派な建物の中に店がある。
まるでブランドショップのようなイメージだ。
中に入るとすぐに執事のような格好をした店員が付いた。
一人一人につくパターンか。
どんなものがあるか訊いてみる。
まずはスクロール、それから付与魔術による付与された指輪。
実際には石に魔力を付与されてそれを指輪にしているだけである。
同じようにブレスレットやアンクレットまである。
ただ残念なのは効果を発動させるには魔力を流す必要があるということ。
常時発動するものもあるが、所謂伝説級のアイテムとして
存在しているのであって、店にはおいていないとの事。
全属性使える俺にとっては意味のないアイテムだ。
それ以外だと容量の小さいマジックバッグや
コンティニュアルライトがかかったランプだとか、
腐蝕を遅らせるプリザーベイションがかかったバッグなど、
どれも必要のない物だ。
ふと店の片隅に置かれた木の棒というか枝みたいなものがあった。
「これは何ですか。」と訊くと
「これは召喚魔術の中のクリエイトパペットゴーレムという魔法が付与されています。ただし、効果時間は10分程度で力も人並みですし、動きも歩く程度の早さであまり人気のない商品です。」
「いくらですか。」
「金貨2枚です。」
10分で2万円かぁ。確かにこれでは買う人はほとんどいないだろうな。
でも面白いから1個だけ買ってみよう。
「では、これ1つ下さい。」
明日から、ダンジョン攻略に出発だ。
しばらく、リリーを呼び出すことができないだろう。
今日は宿に戻り、リリーと遊んで過ごそう。




