表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/276

32日目 総意という名の強制

●32日目(グリウス歴863年6月4日)

昨日とは打って変わり、晴天になった。

雨のせいで多少()し暑く感じる一日となりそうだった。

朝っぱらから、またギルド長に呼び出されていた。

俺の自由はどこいったやら。

そんな思いで行くと、今日は例の会議室に案内された。

そこには、ジェス、トール、アンジェ、マリアと

何度か見たことがある冒険者パーティーの6人組がすでに待っていた。

「アルスくーん、こっちこっち」と空いている席に呼ぶ。

とりあえず呼ばれるまま、そちらに座る。

「アルスくん、元気だったかい。」

「一昨日あったばかりでしょ」と答える。

「相変わらず、クールだねぇ」と相変わらずおちゃらけている。

すると、ギルド長が入ってきた。

「諸君、忙しい所すまない。今回皆に集まってもらったのは他でもない。街の代表者会議である事が決まったのでその連絡と依頼だ。」

街の代表者会議?なんだそれ?

「この中で知らない者もいるかもしれないので説明しておく。街の代表者会議とは、ランゴバルド辺境伯をはじめ、私、商業ギルド長など街の主だった組織の長を集めた会議だ。この会議で決まったことは、ある程度強制力を持つこととなる。」

そう言って、一呼吸置いた。

「今回決まった内容は、モンスターホード後にアルス君の調査で分かった、原因のダンジョン攻略だ。これは街の総意である。」

シモンギルド長は全員を見る。

「このダンジョン攻略には、今集まってもらった皆に要請(ようせい)が出された。まず、この冒険者ギルド内で最高のBランクチーム『大地の牙』、前回街の防衛線でA評価のアンジェ、マリア、トール、ジェス。そして、アルスの5名だ。更に、街の防衛隊から選抜で15名、合計26名でダンジョン攻略をしてもらいたい。なお、バックアップとして、物資は商業ギルドほか薬師組合などが無償提供する。それと、攻略拠点設置に建築ギルドから20名、その護衛は冒険者の中から募集する20名と防衛隊の中から10名参加となる予定だ。そしてその褒賞はダンジョン内の宝だ。それと国からも何かしらの褒賞が出る事だろう。街からの褒賞金も各組織から集めているので、それなりの物は渡せると思う。」

ここまでを説明した後、更に続ける。

「今回の依頼は街の総意である為、基本受けて貰う事になる。ただし、拒否するのであれば、冒険者登録の抹消(まっしょう)となるが、罰を与えたり、自由を奪う事はしないと約束しよう。拒否を希望する者は今、申し出てくれ。」

そう言うと、それぞれのチームや相棒で相談が始まった。

「少し、質問いいか?」

声を出したのは、『大地の牙』のリーダー格らしい人だ。

「何かな。ピエール?」

「ダンジョン攻略で総勢26名との事だが、ここにいる冒険者はこの間の防衛戦で見たから別に文句はないが、街の防衛隊の15名は役に立つのか?戦闘においても正直、先の防衛戦で活躍している人間はほぼ見当たらなかったのだが。それに、ダンジョン攻略の知識は持っているのか?そこを訊きたい。」

全く正論だな。

ダンジョン攻略に限れば、他の冒険者を連れて行った方がまだましに思える。

戦闘職でないにしても、罠の解除や魔法の援護、哨戒(しょうかい)任務や索敵任務、

隠し扉の探索どれをとっても、役に立つとは思えない。

トール達やアンジェ達も同様に考えているようだ。

「皆の言いたい事は分かるつもりだ。あくまでもこれは、現状示された作戦の内容だ。しかし、私はこの作戦通りには進まないと考えている。先の偵察で、アルス君がダンジョンの付近にいた魔物を2体ほど捕獲してくれた。ヘルハウンドとゾンビベアだ。」

ざわっと騒がしくなった。

「知っての通り、魔物は個体差が大きい。なので、死骸(しがい)をそのままで持ち帰ってもらったのだが、その魔物の危険度はそれぞれA-とB+だと判断する。」

更にざわめいた。

「つまり、このレベルの魔物が外にいるのは確実なのだ。流石にダンジョン内がどうなっているのかは分からないが、そいつらが外にいるのであれば、攻略拠点の防衛は今想定されている部隊では、維持できないだろう。そうなると、攻略拠点を守るために、選抜隊が防衛しなければならない状況になると

考えている。それに拠点防衛に冒険者20名が集まるかの方が不安だ。その為、攻略は実質君たちだけが頼りになってくる。」

「この中で他に誰か()しくは連れていきたいチームはあるかね?」

「A-とB+ランクの魔物を相手できるチームなんてねーよ。俺達だって複数一度に出て来られたら対処できないかもしれない。」

「王都の東に踏破(とうは)済みのダンジョンがあるのは知っていると思う。王都近くのダンジョンでは常にモンスターを狩っている。その為、ホードは起きていない。つまり、今後ホードを引き起こさないようにするためには、ダンジョン内のモンスターを狩っていかなければならない。よって今後、定期的にモンスターを狩るための拠点とその流通ルートの確保が第一目標。そしてダンジョンを踏破出来るかできないかは君たち次第だと私は考えている。」

「俺たちに、死んで来いってか。」

大地の牙の一人が言う。

「そこまでは言ってない。無理だと思ったら引いてくれて構わない。その場合は別の方策を考える必要があるが。」

「ならば、埋めてしまうのはどうだろう。そうすれば魔物も出て来られなくなるんじゃないのか」

とトールが訊く。

「昔、王都のダンジョンでも同じことを考えて実行した記録がある。結果、無意味に終わったそうだ。」

シモンギルド長はそう言って否定した。

「他に質問がなければ、具体的な日程等を説明する。作戦開始は6月6日、倒木(とうぼく)を撤去し、馬車が通れるよう補強しつつ進んでいく。それと同時進行で森の入り口に簡易な補給所を建築する。これは今回の部隊とは別の人間が行うので、気にしなくて(かま)わない。これを15kmに渡り作っていく。道路はあくまでも簡易な物なので、時間をそれほどかける予定はない。この間、我々は護衛に着く。目的地まで補強完了させる目標は2日間の予定だ。その後、ダンジョン近くに攻略拠点を作成しつつ、内部の調査に入る。当面の計画は以上だ。明後日の集合は、朝の二の(かね)に正門前とする。以上、今日はご苦労だった。」

ギルド長は部屋を出て行った。

一同静まり返っていた。

「なんだよ。結局強制じゃないか。」

そう言ったのは大地の牙の内の一人だった。

「まあ、でもお宝を見つければ、俺たちの物なんだろ。それに敵が強すぎた場合は逃げ帰ってきても大丈夫って言ってるし。」

「お前はいつもお気楽なんだな。強い敵が出てきたら、逃げるのも一苦労なんだぜ。」

などとやり取りを始める。

トールとジェスは何か話し合っているようだ。

アンジェとマリアは部屋から出ていこうとしている。

「すみません。」

俺はアンジェとマリアに声を掛ける。

「何か用?」アンジェが答える。

「えーと、アンジェさんとマリアさんで良かったですか。一つお聞きしたいのですが、お二人は、どこかのダンジョンに入ったことはありますか?」

と質問を投げかける。

「ああ、私達は以前王都東のダンジョンに行っていた。それが、どうかしたか?」

とアンジェさんはぶっきらぼうに答える。

「もし良ければですが、明日ダンジョンの事を教えて頂けないでしょうか。ダンジョンに入った事が無いので出来れば事前にどんな感じなのか知っておきたいんです。本とか資料とかあるとは思いますが、実際に(もぐ)った事のある人の話の方が当てにできると思いまして、なるべく全員で無事帰還したいじゃないですか。」

そう頼み込んだ。

アンジェさんはどうするというような顔をマリアさんに向けた。

「いいんじゃないかしら。仲間が強ければ私達の生存率も上がるんだし。今日、用事を済ませれば明日は特に問題ないわよ。」

とマリアさんはアンジェに答える。

「分かった。いいだろう。では、明日の午前中でいいか?」

とアンジェさんは訊いてくる。そこへ

「ちょっといいかい。」

とジェスさんが割り込んでくる。

「その話、俺達にも聞かせてくれよ。俺達も初めてなんだ。何も知らないと準備なんかできないからな。」

と言ってくる。

「すまないが、俺達もいいか?」

と今度は大地の牙のリーダーピエールさんが声を掛けてきた。

「1人に聞かせるのも10人に聞かせるのも同じだからな。構わないぞ。」

アンジェさんは答える。

「ありがとな。なら、場所はここでいいか?ギルド長に言ってここを確保しておくから。」

とピエールさんが言った。

「ああ、では明日な。」

アンジェさんとマリアさんは出て行った。

「ナイスだ、アルス君」

とジェスさんは頭を乱暴に撫でる。

あんた、その喜びようは目的違うんじゃね。

そのまま一同解散となった。

俺はその足でギルド長の部屋へ突撃した。

コンコンコン「アルスです。」

「どうぞ、入りたまえ。」返事が返ってきた。

「何かね。まさか、やらないとかいうんじゃないよな。」

「いいえ、この状況でそれは無いですよ。それより、攻略前のダンジョンの情報を洗いざらい吐いて下さい。知ってる限りで構わないので。」

「そうだな。話しておくべきだろうな。特に君は冒険者になりたてだしな。」

とソファーの席に座る様に(うな)した。

「私も聞いた話で実体験ではないので、そこは勘弁(かんべん)してもらおう。ダンジョンは、最下層にダンジョンの魔核(まかく)と呼ばれる石のようなものがある。その魔核は、常に魔障(ましょう)というものを出していて、それが魔物を生み出す素になっているそうだ。」

「話の腰を折って申し訳ないのですが、以前から魔物とかモンスターとか呼び方が変わりますよね。これって何ですか?」

「ああ、それは、あまりはっきりとした区別ではなくて、モンスターは魔物や大きくなった動物とか普通の獣とかを総称(そうしょう)して言っている。逆に魔物と言ってるときは、ある意味化け物的なモノを指して言ってる。ただ、最近はあまり区別されないようになってきているだけだ。」

「ごめんなさい。続きをお願いします。」

「それで、その魔核の近くには必ずと言っていいほど、強力な魔物がいる。我々は、ボスとか番人とか呼んでるな。ダンジョンが古ければ古いほど、大きければ大きいほど、そのボスは強力と言われている。それで、魔核によって生まれた魔物は倒すと消える。そして消えた後には魔石が残される。つまり、魔石が魔障に(さら)される事によって、生まれていると考えられているんだな。それでその魔石は魔物の素だから、必ず回収してこい。それを数十年単位で繰り返すことによって、ダンジョンが弱体化したという記録もある。だから、必ずしも魔核を壊さなければならないという訳でもない。それと、ダンジョンには罠がある。一度罠を壊したり発動させたままにできれば、当面その罠が復活する事はないが、少しずつ修復はされるらしい。可能であれば徹底的に壊して欲しい所だ。だが、壊すのが難しい時には、目印なり、マップを作るなりして避けられるようにするのでも構わない。それとこれは不思議な話なのだが、各階層に1か所モンスタールームとセーフルームが存在していると言われている。逆にセーフルームがない階層にはモンスタールームも存在しないと言われている。何かの理由でこの二つの部屋は対になっていると考えられている。セーフルームはその中にモンスターは入ってこられないと言われている。逆にモンスタールームはその部屋の中では突然魔物が出現する。後ろに突然モンスターが現れるというのもあるらしい。つまり、部屋の中入ったら、気を付けないといけない。それで、その部屋の区別だが、基本魔障が通常より濃いか、全くないかの違いだけだ。どちらでもない部屋にも魔障はある。そして魔障は、若干の魔力を有しているようだ。つまりセーフルームには魔力が無いのでスキルの魔力鑑定や魔法のディテクトマジックなどで判別できるらしい。それとセーフルームは、隠し扉などで巧妙(こうみょう)に隠されている事がほとんどらしい。それとセーフルームには出口に一瞬で帰還できる機能もあるのがほとんどだ。これもモンスタールームの対の機能と言われている。それと極稀(ごくまれ)にセーフルームに侵入してくる魔物もいるらしいが、魔物にとって有害であるらしく、かなり弱体化されることと毒のようなダメージを継続的に受けると言われている。なので、侵入されたからと言って、その場合(あわ)てる必要はないという事だ。私が知っている事はこれで全てだ。」

「ありがとう、参考になったよ。」

そう言って部屋を後にした。

あとは、明日アンジェさん達の話を聞いて、準備をするだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ