31日目 雨の日の過ごし方
●31日目(グリウス歴863年6月3日)
今日は、珍しく雨が降っている。
昨日の夜から降り出したが、まだ止む気配はない。
こんな日は、冒険に行く事もない。
外を見ても、ほとんど人通りもない。
そう、こんな日を実は待っていたのだ!
俺は、この雨の中、出かけることにした。
俺の目的はここ、以前、ラザニアを食べた店だ。
中に入ると、客は一人もいない。
「いらっしゃい」とこの店の主人っぽい人が出てきた。
「すまないね。今日は、もう店じまいだよ。雨が降るとお客さんがほとんど来ないからね。」
とすまなそうに言った。
「いえ、食事に来たわけではないのです。じつはお願いがありまして。」
そう言って、前回食べたラザニアもといラザーニャの事を話した。
「この小麦を練ったやつかい?」
「ええ、それを細く切って売ってもらえないでしょうか。」
「まあ、客もいないし構わないけど。どのくらい細くだね?」
1mmと言っても分からないと思ったので、手で示す。
「そんなに細くかい?いったい何に使うんだか。まあこっち来なさい。」
そう言って厨房に入らせてもらう。
ご主人の名前はママルドさんというらしい。
小麦の生地を出して、包丁で切る。
「こんな感じかい?」
さすが、料理人。綺麗に切られている。
「はい。その太さで全部切って下さい。」
取り敢えず、生地2枚分を切ってもらった。
これで1玉分の麺になった。
「これをどうするんだい。もし、可能なら教えてくれるかい。」
よし。キタ!
「教えても構いませんが、厨房をお借りできますか。」
「ああいいよ。」
ママルドさんも興味がでてきたらしい。
厨房に火を入れ、調理できる準備をした。
まず、麺を鍋に入れてゆでる。
フライパンにバターを入れ溶かしたら、ひき肉を入れる炒める。
あらかじめ叩いて潰したトマトを加え、火が通ったら、
塩、ハーブなどで味を整えていく。
ゆであがった麺をフライパンにいれ、ソースと絡めてできあがり。
試食なので、2つの皿に分けて、試食する。
「ん~~。麺だー。少し改良が必要だけど、十分美味い。」
何せ、久しぶりの麺だ。
強いて言えば、若干麺の改良も必要かもしれない。
ママルドさんも試食する。
というか、この人俺が食べるまで手を付けなかったな。
変なものなど入れてないのに。
・・・モグモグ・・・
「!!!」
ガツガツガツ・・・
「美味い。こんな使い方があったなんて。芳醇なバターの香りに加えトマトの酸味が食欲をそそる。しかもひき肉で物足りなさをカバーされて物足りなさもない。」
どこぞのグルメ評論家かい!
「アルスくんと言ったか。この料理を店で出させてもらえないだろうか。」
と手を握られる。
「はいはい、いいですから、手を放してください。」
ハッとした様にママルドさんは手を放す。
「もう少し麺の改良や味の調整は必要だとは思いますが、どうぞ店で出して下さって構いませんよ。その代わり、麺とかソースをたまに買わせてもらえれば結構です。」
「ありがとう!」
そう言ってママルドさんは喜んでいた。
その後、レシピや名前など詳しく教えた。
今回教えたのはミートソースとペペロンチーノ、カルボナーラの3種類だ。
帰り際、ママルドさんはお土産にと言って、
先程、練習で切った麺を10玉分ほどくれた。ありがたい。
その後、この店は、ママルドパスタ店として一躍有名になったのでした。
一方、そのころ。
ランゴバルド庁舎の一角で街の有力者総勢10名が一堂に会していた。
その中には、ランゴバルド辺境伯、冒険者ギルド長もいた。
「それでは、全会一致で決定とする。」




