29日目 ギルドからの調査依頼
●29日目(グリウス歴863年6月1日)
昨日の疲れを癒やす為、早々に眠ったので、MPは全快している。
街は城門の復興を最優先で行うみたいだ。
それと警戒の為、余力のある冒険者は周辺の警戒の為に警備している。
簡単に食べられそうな例の肉挟みパンを3つほど購入して街の外へ向かう。
モンスターホードの傷跡を辿って、大元に何があるかを調べないといけない。
今の俺の能力値は、魔力以外は全て20前後になっている。
ギルドに所属している能力値が10~25が普通で
30を超えているのは極稀なのは確認済みだ。
つまり、今はどの能力値をとっても、冒険者の平均以上という事だ。
だからと言って、歩いて行くほど間抜けではない。
今回風魔法がレベル7になっている。この中にフライの魔法がある。
このフライという魔法はただ飛ぶだけではない。
敏捷度に応じて速さが変わる優れものだ。
今俺の敏捷値は21普通の大人が全力疾走したくらいのスピードが出せる。
そして、能力強化で敏捷を底上げする。
そうすれば短距離走のプロと同じくらいの速さは出るはずだ。
フライの効果時間は10分。魔力消費は10である。
ただし、MP自動回復で今15秒に1ポイント回復するので、
飛んでいるうちに余裕で回復する。
つまり、フライによるMP消費は、考慮する必要がないという事になる。
当然飛行していれば、魔物の多くをスルーできる。
気を付けるべきは飛行する魔物と遠距離攻撃だけだ。
それも、ミサイルプロテクションをかければ更に安全度があがるはず。
これが、昨日の夜考えた作戦だ。
目立つのは良くないので、森の入り口までは、普通に歩いて行く。
そこから、最初は低空で、距離が離れたら上空へ上がる。
まずは、「能力強化敏捷!」続いて「フライ!」
更に「ミサイルプロテクション!」出発だ。
木々が倒されているのは幅50mくらいはある。
それがずっと直線で続いている。索敵にはこの付近に魔物はいないようだ。
そろそろ10分で魔法の効果が切れそうなので、一回降りる。
森の入り口からだいたい3~4kmくらい奥に来ただろうか。
索敵にかかるような魔物はいないようだ。多分このルートから離れた所に
魔物はいるのではないだろうか。
もう一度、能力強化敏捷とフライ、ミサイルプロテクションをかけて、
奥へ行ってみる。
少しずつだが、木の倒れている幅が狭くなってきている。
更に10分後、大体7km付近に着いたと思われる。
このあたりに来ると、木の倒れている幅は、半分くらいになっている。
索敵には、辛うじて何匹か捉えているが、距離は遠い。
ここから400m以上離れている。
更に奥へ行く事にする。
この辺りは凡そ、10km以上離れた場所になる。
倒木の幅は10mもない。だが、まだ先まで続いている。
7km超えたあたりから起伏が徐々に大きくなり始めていた。
索敵にも所々に反応がある。だが、周囲200mの範囲内にはいない。
着地前に少し見えたのだが、この先に低いながらも山があった。
次のフライで届くか届かないかくらいの距離と思われる。
また、先に進むとしよう。このあたりの倒木は幅5mくらいしかない。
という事はあの山に何かあると予想される。
ただ今回のフライでは届かないだろう。とにかく、飛び続ける。
着地した地点は、森の入り口から15km付近と予想される。
再度フライで山の麓を目指す。すると、5分もしない内に到着した。
山の麓には、大きな地割れの跡があり、緩やかに下へ続いている。
地割れの深さは分からないが、かなり深そうだ。
この周辺の倒木が少ない事から、この地割れの下から魔物が
出てきたと予想される。
この地割れの跡を調べてみると、かなり古いモノのようだ。
壁は風化していて、崩れそうな状態ではなく、
地面は比較的なだらかである。
もしかしたら、魔物が何度も通過する事によって、
道のようになったのかもしれない。
しかも、地割れの中に草は1本も生えていないのだ。
索敵には地割れの中だろうが、反応がある。
今は中に入るのは止めておこう。
とりあえず、周囲の魔物がどんなものか調べるのが先だ。
索敵反応から一番近いやつをまず狙おう。ちょうど1匹だ。
ここから森に100m行ったあたりか。
あれは、熊?いや何か変だ。
「鑑定!」・・・ゾンビ・ベア レベル10 HP300 弱点 火、光
ならば、「フライ!」4~5m上昇して、
「ライトビュレット!」2連発。光の弾丸が頭と背中を貫く。
ゾンビ・ベアは何もできずに倒れた。とりあえず、そのまま収納。
次、また、1匹の奴がいる。
そのままそちらへ飛んでいく。今度は何だ?
また、見たことのない生き物だ。
「鑑定!」・・・ヘルハウンド Lv5 HP100 弱点 氷
だったら!「アイスジャベリン!」氷の槍が弧を描いて飛んでいく。
狙い違わずヘルハウンドに突き刺さる。
しかし、ヘルハウンドは上空に向けて炎を吐く。
咄嗟に、離れるように飛翔する。辛うじて炎の射程外へ逃れることができた。
だが、まだこちらの魔法の射程内だ。もう一発!
「アイスジャベリン!」
今度こそヘルハウンドは動かなくなった。ヘルハウンドも収納しておく。
索敵には、これらの戦闘でも近づいてくる魔物はいないようだ。
いくつかの反応はこちらから離れるように動いている。
魔物の調査はこのくらいにして、山頂の方を少し確認しておこう。
発動中のフライで一気に上空へ飛ぶ。
見る限り、山頂にはなにも無さそうだ。
山の裏側も特に変わった所は見当たらない。
再度、地割れの所に降り立つ。多少危険だが、
地割れの中に少しだけ入ってみる。
ただし、深く潜る気は毛頭ない。索敵に十分注意しながら進んでいく。
中に入っていくと急に薄暗くなる。ショートソードを引き抜き、
ショートソードの先端に「ライト」の呪文をかける。
周囲を照らすように、慎重に進んでいく。
100mくらい進むと、地上から20mくらい降りただろうか。
岩肌に大きな門が見つかった。
他に進む道は無さそうだ。地面を見ると最近開いた形跡があるのが分かる。
扉越しの索敵ははっきりとしないが、かなり多くの魔物がいる感じだ。
ここまで分かれば上等だろう。すぐにそのまま引き返した。
地上に出て、来た時と同じように帰る事にする。
ただし、1か所寄り道をする予定だ。
倒木地点から少し離れた場所にあるリリーがいた場所に来た。
中に入るとまた大変なので、あまり近づかず見てみる。
モンスターホードによる影響は無さそうだ。
索敵で見ても他のピクシー達はいるようだ。
ここでリリーを召喚してみる。
「あるすー、おはよー」
「おはよう、リリー。リリーはみんなの所に帰りたいかい」
と広場を指をさして訊く。
「んー。りりーはねー。まだあるすといるー。」
「じゃあ、街に帰るか」
「うん!」
「リリー、空を飛んで帰るから、しっかり掴まっていなさい。・・・フライ!」
少しゆっくり目に飛んでいく。
「うゎー、あるす、はねないのにとんでるー、はやーい」
とリリーはキャッキャッと騒いでいる。
森を抜けたあたりで着地する。ここからは歩いて帰ることにする。
まだ日は高い。ギルドに戻ったのは、2時から3時の間ぐらいだろう。
そのままギルド長の部屋へ行く。
「もう帰って来たのかい。」とシモンは訊いてきた。
「大体分かったからね。報告をしてもいい?」
「ああ、報告を頼む。」
「まず、森の入り口から15km以上離れた所に、低い山があった。倒木はその山まで続いていた。そして、その山の麓には地割れの跡があり、その地割れの中に、大きな扉があった。多分そこがモンスターホードの発生源と思われる。その周辺には他に倒木や異常は見られなかった。あと、近くにいた魔物を2匹狩ってきた。そのままの状態で持ってきたけど、どうしますか。」
「そうか。魔物はそのままで買取ろう。あとでヘレン君に言ってくれ。それとその扉の大きさだがどのくらいかね。」
「高さは10mくらいで幅は5~6mくらいかな」
「かなり大きいな。開けたのか。」
「いや、開けて変なものが出てきたら嫌だし、一人でダンジョンに潜るなんて自殺行為でしょ。ただ、最近開いた形跡はしっかりとあったよ。」
「そうか。ご苦労だったな。ダンジョンの攻略は可能だと思うかい。」
「そうだなぁ。ギルドのメンバーがどのくらいの強さか分からないから何ともいえないけど、ヘルハウンドやゾンビ・ベアを倒せるレベルなら20人くらいで挑めば、もしかしたらいけるかもしれないね。」
「・・・・」
シモンは両肘を机に立て、組んだ手を額に当てて考えているようだ。
「取り敢えず、この依頼は完了ってことでいいよね。」
「ああ。」短くそう答えると、「ごくろうさま」と言って帰るよう促された。
俺はそのままヘレンさんの所に向かった。
「ヘルハウンドだと?、ゾンビ・ベアだと?モンスターランクA-とB+じゃないか。」
「こんにちはヘレンさん。」
「こんにちはアルスくん。今日はどうしたの?」
「ギルド長から受けた依頼で倒した魔物を調査の為、そのまま買い取るって話になったから、持ってきました。」
「そう、なら、倉庫までいい?」
「ここに出してもらえるかしら。」
ヘルハウンドとゾンビベアを出した。
「えっ?この魔物は何?」
ヘレンさんは今まで見たことない魔物を見て驚いている。
「たしかヘルハウンドとゾンビベアですね。」
「・・・ちょっと待っててもらえるかしら?」ニコッと笑うと
脱兎のごとく走って行った。なんか顔が怖かったけど。
「コホン。お待たせしました。査定に少々お時間を頂きたいので、後日お支払いいたします。」
なぜ、ヘレンさんは怒ってるのだろう。
「それと今回の調査の報酬ってどうなってますか?」
「その件でしたら、ギルド長に訊いてください。」
「あっ、はい」
再び、ギルド長の部屋に向かった。
「シモンさん、さっき忘れてたんだけど・・・」
中に入ると、ギルド長は机の上に突っ伏していた。
「何してるんですか」思わず、訊ねてしまった。
「いや、何でもない。それで何かね」
「さっき話忘れたんだけど、今回の報酬なんだけど、いつ貰えるの?」
「ああ、そうだったね。報酬は今回モンスターホードで倒した功績と合わせて今計算中なんだ。明日には確定できると思うので、それまで待っててくれ。それと、君のランクを昇格させるから、ヘレン君の所にこれと一緒にカードを渡してくれ。」
そう言って、1枚の封書を渡された。
「わかった。」
ギルド長室から、またヘレンさんの所に戻った。
「はい、昇格ですね。少々お待ちください。」
「お待たせしました。Dランクに昇格おめでとうございます。」
そう言ってカードを渡された。
今日は帰ったら、久しぶりにリリーと豪華な食事でもしよう。




