27日目 追手
●27日目(グリウス歴863年5月29日)
予定通り、カーターさんと一緒に出発する。
街を抜けてしばらく馬車を進める。
予想通り、後方に3人の騎馬が後をつけてきている。
間違いなくこの馬車に目を付けている。
人の目が少なくなった時に仕掛けてくるのだろう。
という事は、そろそろ来るかもしれない。
索敵で近づいてくるのを確認した。
あらかじめ打ち合わせた様に、後ろの荷台に移る。薄いかけ布を出し準備し、
予定していた魔法をかけて、そして寝たふりをする。
「そこの馬車止まれ!」と馬上の3人が声を上げる。
カーターさんは素直に馬車を止める。
「どうしたのですか」と人が良さそうなのんびりとした口調で答える。
「王都から重罪人がこちらの方に逃走したとの連絡だ。馬車の中を検める。」
一人が馬から降り、荷台に乗ってきた。
「この小僧はどうした。」と詰問する。
「私の息子でさぁ。昨日はしゃぎすぎて眠いというので、後ろで寝かせてますだ。」
と答える。
その間も積荷を確認していく。
人が隠れられそうなものは、樽が一つくらいしかない。
「この樽は何だ。」
「へい。ただ飲み水ですだ。この後は水の補給が厳しいもんで。多めに積んでますだ。」
と答える。
「開けろ!」と命じてくる。
「ヘイヘイ。ただいま。」
そう言って、樽の蓋を専用の道具を使って開ける。
中には、なみなみと水が入っている。
それ見て、この馬車の中で人が隠れられそうな場所がないと確信すると、
その男は馬車から降り、仲間に首を横に振った。
「協力ご苦労。」
そう言って3人の騎馬は、街の方へ戻っていった。
遠くまで行くのと索敵で怪しいものがいないのを確認して、
「あいつら馬鹿か」と思わず口走る。
怪しいのを追ってきて何故引き返す。
明らかにこの馬車だけ調べたかったと言わんばかりじゃないか。
「カーターさん、行きましょう。それにしてもカーターさんのあの演技、どうなんですか?」
と笑う。
「えー、迫真の演技だったでしょう?」と真面目に言う。
「思わず噴出すところだったんですよ。勘弁して下さい。」
と苦笑いした。
「そうだ、ミーナさん、とりあえず、もう大丈夫ですよ。ただ念の為、荷台で目立たないようにしていて下さいね。」
そういうと、後ろから、「ありがとう」と聞こえてきた。
「しかし、どんな魔法を使ったんですか?」
カーターさんは訊ねてきた。
「あれはですね。幻術の魔法と姿隠しの魔法なんです。樽の中に幻術で水が入っているように見せたんです。ミーナさんを姿隠しで消していたんです。ただ姿隠しだけだと、荷台の場合狭いから、ぶつかってしまう可能性がありましたし。御者席で姿隠しを使った場合、カーターさんを無理やり引きづり出そうとするかもしれません。その場合、下手したらぶつかってバレる可能性もありました。樽の中に水が入っていたら、見て分かるのにわざわざ手を突っ込んで確認はしませんよね。そういう意味では一番リスクが低いと判断しました。」
「へー。よくそこまで考えられるね。」
カーターさんは感心している。
「今回は運が良かったんです。相手に魔力鑑定持ちがいたら、100%バレてましたから。」
「100%?」カーターさんは首を傾げる。
「あーえーっと、完全にバレてたということです。」
「うーん、アルスくんは難しい言葉を知っているんだね。ところでバレていたらどうしていたんだい?」
と聞かれたがフフッと笑っておいた。
ここの世界は識字率が低く、百分率なんて普通の人には分からないんだな。
いけないいけない気を付けよう。
次の宿場町に近づいたので、念の為に先程と同じようにする。
ただし、幻影魔法ファンタズマル・フォースだけ使用しておく。
何かあればすぐに魔法を発動できるように後ろの荷台に乗っている。
予想に反して、特に何もなく宿場町に入った。
索敵で周囲を確認して、今度は姿隠しでミーナさんを宿の部屋に連れていく。
今夜も申し訳ないが、俺の部屋で我慢してもらう。
ミーナさんは昨日から温かいものを食べられない。
少し可哀そうに思い、エルフ王国で貰った珍しい果実を1つあげた。
ミーナさんは、こんなの今まで一度も食べた事がないと喜んでいた。
多少、気休めにはなっただろう。
昨日と今日で不思議に思っている事がある。
それはミーナさんは決して魅力がないわけではない。
逆にどちらかと言えば、美人だしスタイルも良いと思う。
女性としての魅力は高い方であろう。貴族に攫われるくらいだし。
なのに、なぜ?性欲が湧かないのだろう。
昨日も今日も同じベッドで寝ているのにだ。
年齢的に?いや前世で12歳と言えばそういった事に興味津々だったと思う。
前世の年齢が50超えていたからか?
男は50超えても欲はある、はず。
女に興味がない?イヤイヤ男の方が興味ないです。
ならばどういう事だろう。まさか、役立たずなのか?そうなのか?
今はいいや、もう寝ておこう。




