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アルスの異世界日記  作者: 藤の樹


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21/276

21日目 王都へ出発

●21日目(グリウス歴863年5月23日)

まだ時間は少し早いが、早々に宿を引き払い、集合場所へ向かう。

集合場所には1台の馬車が止まって荷の積み込みを行っていた。

「カーターさんはいらっしゃいますか。」

荷を積んでいる人にそう声を掛ける。奥にいるよと声だけ返ってきた。

忙しそうである。奥へ向かって、すみませんと呼んでみる。

奥から以前見たことのある人物がでてきた。

「おや?」「あれ?」と同時に声をだす。

その男は以前馬車が襲われていた時に助けた商人だ。

そういえば、カーターと名乗っていたか。

「依頼できました。」とにこやかに言う。

「あなたでしたか。アルスさん」と名前を憶えていてくれたらしい。

「もしかしたらと思ってたんですが、安心しました。」

と知っていたと言わんばかりに言う。

「でもさっき、『あれ?』って言ってませんでした?」とクスリと笑う。

「さっきのは、やっぱりという意味です。」と誤魔化す。

「あなたなら、大歓迎です。そうだ、もう一人の冒険者ですが、」

と言ったところで後ろから

「こんにちはー」と元気な声が聞こえた。

振り向くと、ミーナさんがいた。

「おやー、アルスくんじゃないですか。もしかして今日の護衛はアルスくんと一緒ですか?」

そう言って小走りに近づいてくる。

「ええ。ミーナさんもお元気そうで。」

「もしかして。ランクが上がった?」

「はい、昨日。」

「じゃあ、最速ペースじゃない。記録更新したんじゃない?」

興味津々(きょうみしんしん)で訊いてくる。

「どうでしょうね。そんな話は出なかったので、違うんじゃないですか。」

と笑って誤魔化(ごまか)す。あれっ、もしかしてまたやっちゃった?

そんな話をしている間に積荷も載せ終わったようで、

「問題なければ、出発しましょうか。」

とカーターさんは馬車に乗り込んだ。


街中では馬車に乗って行く。街を出てからは護衛は歩いていくのが普通らしい。

ランゴバルドから王都に向かうルートで想定されるのは

盗賊と夜に野犬などの獣という事だ。魔物はほとんどお目にかかれないという。

つまり、気を付けるのは人間という事だ。

街を出て、石畳で舗装(ほそう)された街道を行く。

まだ街から近いので何か出てくる危険は少ないという事で、

護衛二人も馬車に乗ったままである。

道すがら、最近の王国内の情勢をカーターさんから訊いておく。

今はカーターさんが御者をして、その隣に俺、

荷台の後方警戒はミーナさんにしてもらっている。

しかし、実際の所索敵で半径500mは索敵できているので問題ない。

「カーターさん、どういった旅程になるんですか。」

「そうですね。途中宿場町が2か所ありますので、そこで宿を取りながら、王都へ向かう事になります。途中何度か、休憩も挿みます。王都には数回行っているので道に迷う事もありません。」

「ところで、最近の王都は景気とか治安はどんな感じですか。」

「特に変わった所は無いと思いますよ。先月行った時も至って普通ですね。」

「そうですか。」

そんな感じで、馬車は王都に向けて進んでいく。


途中、馬を休ませている間に昼食を済ます。

わざわざ火をおこしたりする時間もないので、

パンと冷めたスープと干菓を食べる。

そして、再度出発したあと、およそ30分後、索敵に掛かる集団がいた。

数は、12人程だ。

「カーターさん。一旦止めてもらえますか。」

そう言うとカーターさんは(いぶか)しげではあるが、止めてくれた。

ミーナさんは後ろから前に駆けてきた。

「この先、約500m先に、12人くらいの集団が進行方向にいます。道を取り囲んでいる感じでバラけていますので、もしかしたら盗賊の類ではないかと思います。この周りには今、他に索敵に掛かるようなものはいないので、まず、私が先行して偵察してきます。ミーナさんは馬車を直衛していて下さい。」

有無を言わさず、サッと走り出す。途中すぐに道を外れ、目立たないよう近づく。

残り100mくらいまで近づいたが、地の利は向こうにあると思われるので

これ以上気づかれずに近づくのは困難に思えた。

「インビジビリティ!」光魔法を発動させる。

そしてゆっくりと歩いて近づいていく。

このインビジビリティは姿を消せる魔法だが、集中している間だけ有効なのだ。

つまり消えたまま攻撃したり、走ったりはできず、歩く程度の事しかできない。

そして効果時間は1時間である。

それでもこのような時には有効な魔法だ。消えたまま、様子を確認する。

明らかに待ち伏せしている盗賊だ。偵察役が前方後方に一人ずつ。

リーダーと思しき者も見つけた。

弓を持っているのは、3人、残りは剣や斧といった感じだ。

配置は、弓持ちが街道の両脇にいるが一番離れている。

道の岩と茂みの陰に7人固まって身を隠している。

というのも、それ以外身を隠す場所は、道まで距離もあるし、

そこには弓持ちが身を潜めているためだ。

「なんて配置だ。」

まあ、他に身を隠す場所もないので仕方ないが、格好の的だろう。

そのまま、魔法の有効射程内で尚且つ弓からも離れた場所で、戦闘準備をする。

「ミサイルプロテクション!」

「アースシールド!」

「マジックプロテクション!」立て続けに発動する。まだ気づかれていない。

まずは、集団に向けて

「スリープ!」

スリープの魔法は、10m四方の範囲内にいる者を眠らせる魔法だ。

抵抗されると効果は無いが、レベルの低い者達には非常に有効な魔法だ。

この魔法は闇属性で、闇属性にはこういった精神に作用する魔法が

多いのが特徴だ。

すると、岩場に隠れていた7人全員が眠りに落ち、バタバタと倒れこんだ。

更に、一番近い弓持ちにもスリープを飛ばす。あっけなくそれも眠りに落ちた。

反対側に隠れていた弓持ち2人は何が起きているか分からず、

動揺して何か言いあっている。

その間にまた、その2人に対してスリープを放つ。当然、その2人も眠った。

残り2人のうち、一番馬車から離れている見張りにもスリープを放ち、

後ろで何が起こっているかも知らずに眠りに落ちる。

残り一人。隠れているようだが、こちらからは丸見えだ。

有効範囲に急いで移動し、すかさず、スリープで眠らせる。

これで索敵内の全員が眠りに落ちた。

その後、急ぎ馬車まで戻り、2人に手伝ってもらいながら、

眠っている盗賊たちを縛り上げていく。

当然、武器や持ち物は全て取り上げ、馬車に積んでおく。

眠っていた盗賊を引っぱたいて全員起こす。

ギャアギャア騒ぐものもいれば、観念した者もいる。

騒ぐ奴らには、ミーナに思いっきり殴り飛ばしてもらった。

そいつらを縛ったロープを馬車に括り付け、1列になって歩くよう指示した。

ミーナに監視をしてもらいながら宿場町に向かった。


宿場町に到着して、すぐに街の衛兵に引き渡す。

いくつか聴取と連絡先のギルドを伝える。結果はギルドを通してくるらしい。

「いやあ、アルスさんのおかげで、襲われずに済みました。ありがとうございます。どんどん召し上がってくださいね。」

と色々と注文を入れる。

「さすが、アルスくんだね」とミーナも嬉しそうだ。

食事をしながら、

「野営をしないで済むのは助かるね。」ミーナに話しかける。

「野営が必要なのは、国外への護衛だけだからね。国内は比較的楽だよ。安いけど。」

アハハと笑う。

「国内は流通ルートが大体決まってますからね。それに応じてこうした宿場町ができるんです。」

とカーターさんが教えてくれる。

「それにしても魔法って凄いですよね。一人全員捕まえちゃうなんて。」

とカーターさんは続ける。

「冒険者にも魔法使える人は結構いるじゃないですか。そんなに凄くないですよ」

と答える。

「そんなことないですよ。今まで見てきた魔法職の人達は、他の仲間から離れて戦うのを凄く嫌いますからね。ましてや一人で率先して別行動なんてそんな人いませんよ。」

と結構真顔で答える。

「そうそう。」とミーナも相槌を打っている。

「今日の宿代はこちらで持ちますよ。ボーナスと思って下さい。」

カーターさんはご機嫌だった。

部屋に戻り、リリーを召喚する。最近寝る前にリリーと遊ぶのが

日課になりつつある。

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― 新着の感想 ―
馬車と同じスピードで歩ける冒険者凄い
こんな大人数の盗賊が当たり前のように待ち構えてるとなると護衛2人だけって少なすぎないか?最低でも5人パーティは欲しいだろ。
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