表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルスの異世界日記  作者: 藤の樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/276

20日目 追加依頼

●20日目(グリウス歴863年5月22日)

薄明りの中、目が覚める。

昨日は軽い食事のせいもあり、空腹を感じていた。

木の近くで簡易のキャンプファイヤーをして、肉と野菜を炒める。

パンに切れ目を入れ、スライスしたチーズと炒めた肉野菜を挟む。

調理しているとリリーが起きてきた。リリーは肉を食べないので、果物を渡す。

相変わらずの食いっぷりだ。

あんな小さな体のどこに入るんだといつも不思議に思う。

肉野菜パンを5個ほど作り、一つを食べて、他は収納しておく。


片付け終わり、ランゴバルドに向けて出発する。午後には着くだろう。

それにしても、この旅程(りょてい)で1匹もモンスターに遭遇しないのは

幸運なのか。それともこれが普通なのか。こちらの心配を余所(よそ)

街が見えてきた。街に戻ってすぐに、ギルドへ向かう。

当然面倒な仕事を片付けるためだ。

久しぶりに会うヘレンさんの挨拶もそこそこに、ギルド長へ面会を求める。

「アルスくん、戻ったかい。」ギルド長の部屋へ通されて開口一番がそれだ。

「親書を預かってきたので、渡しておいてください。これで仕事は完了ですよね。」

面倒な話はしたくないので、用件だけ言う。

「親書は依頼人に直接持って行ってくれないか?」

「は?いやこれギルド長からの依頼ですよね。だって、ギルド長に呼ばれてこの仕事を受けたんですから。」

「私は仲介しただけだから。報酬も直接貰ってね」

(とぼ)けた様に言う。(はめ)められた。

「はあああああ、じゃあ、辺境伯の場所教えて下さい。それとも辺境伯がここへ来てくれるんですか?」

少しイラッとしながらも確認する。

「辺境伯は庁舎にいるはずだね。」

「わかりました。では、失礼します。」

そして、庁舎へ向かう。

たしか、庁舎は中央広場に面した大きい建物だったと記憶している。


受付に来意を伝えると、3階の一室に案内される。

「よく戻った。」

辺境伯のゼノンは手を広げオーバーアクション気味に迎える。

面倒でも相手は貴族、丁寧に挨拶する。

「こちらがご依頼の親書の返事です。」と親書を渡す。

それを受け取り、封蠟(ふうろう)を確認する。

「ご苦労だったな。これは報酬だ。金貨500枚だ」

と言って袋をだす。

指名依頼とはいえ、Fランクの冒険者に金貨500枚は破格の報酬だ。

「随分ありますね。」

何か裏がありそうな感じがして、慎重に訊く。

「なに、前金も含んでいると思ってくれ。」

ニヤリと笑みを浮かべる。

「前金とは?」

受け取ろうと伸ばした手を瞬間止めた。

「この親書を王都まで運んでもらいたい。追加の報酬は王都で支払おう」

「え?そんなの、前回と同じ方法で送ればいいじゃないですか。わざわざ、日数掛けて持っていく必要は無いと思いますが。」

と反論する。

前回は1日もかからず、国王の親書を()り取りしたんだから、

同じ方法で行えば、早く安全に済むはずだ。

「ああそうか。君には話していなかったな。あの親書は別に国王陛下から直接出されたものではない。あれは、私が書いたものだ。」

えっ?どういう事?

「私はエルフ王国とドワーフ王国との国交正常化に向けて動くよう、国王陛下から全権を委任されている。」

「でも、あの封蠟は王家の物だと・・・・」

「そうだ。私も王家の血に連なるものだ。国王陛下は、私の伯父にあたる。まあ私に継承権はないがね。」

そうか。そういう事なのか。

てっきり、魔法的な方法で、遣り取りしたのだと思っていた。

一番考えられたのは遠話みたいな方法とテレポート的な魔法で出来ると

勘ぐってしまった。

遠話についてはヒュリアが使っていたし、テレポーテーションなんか

一番使いたい魔法の一つだから、そう思い込んでいた。

実際、テレポートのような魔法の存在があるか知らない。

そういえば、書物にも出てきていないな。

「しかし、私のようなランクの低い人間に任せるよりも、軍の人間や、もっとランクの高い人間に任せた方が、安全なんじゃないですか?」

とやんわりと断れる方向で言ってみる。

「軍は動かせぬ。最近、街中や領内で怪しい人間がうろつき回っていると報告が上がっている。その為に警備や治安維持にほとんど人数が割かれてしまっている状態だ。それとギルドで話を聞けば分かると思うが、最近森の中が物騒な状態でホードの前触れではと警戒している。よって高ランク冒険者はギルドから遠方に行かないよう要請がでているはずだ。つまり、信用に値する人間で自由に動ける者が限られているという事だ。」

もしかしたら、どこかの国の間者(かんじゃ)(まぎ)れている?誘拐事件の関連で?

森の中が物騒?これも誘拐事件の関連か?それとも別の要因?他国との戦争?

森が物騒?たしか、モンスターホードと言われていたか?

モンスターホードがあったのは、グリウス歴700年代中盤だから、

100年くらい前、その時の原因は不明。

逸話や伝承によれば、100年周期で起きていると予想されている。

つまり、ちょうど時期という事か?

「それに、直接エルフの国王と話をしたのであれば、意見を求められるかもしれない。そういった場合、別の者では話ができないであろう。しかも、Fランクの場合、何かあった時に例え腕に自信があっても、戦闘には参加させられない。精々(せいぜい)、使い走りがいいところだろう。特に非常時にはな。それと、もし、受けてくれるというのなら、ランクアップの推薦を出しておこう。私の推薦があれば、試験も試験費用も無しで上がれるぞ。」

とダメ押ししてくる。

さて、ここはきっと運命の分かれ道だ。ここで受ければ、

貴族との(から)みが一層深くなり、面倒事が多くなる可能性が大きい。

しかし、冒険者としてランクアップは早まるだろう。

そうなれば、生きていくための資金、のんびりと生活するのは、

えーと寿命が80歳と仮定して、残り70年、年収800万円あれば、

悠悠自適な生活が送れる。何人か扶養しても問題ないレベルだ。

つまり、約5億6千万円あれば良いという事だ。金貨にすると5万6千枚、

白金貨で5500枚必要という事だ。

逆に、断れば貴族からは距離を置けるが、

様々な嫌がらせや邪魔が入るかもしれない。

下手をするとこの国から出ていく必要がありそうだ。

そうなったら、どこへ行く?

法国は冒険者では、やっていけないから論外だ。

しかも個人的にこの世界の宗教は胡散(うさん)臭い。本当に神は存在するのか。

それは本当に神なのか疑問だ。十三連合国も微妙だ。

あそこは政治がうまくいっていない。

いつ内乱、下手したら連合崩壊で戦争になる事も考慮すべきだ。

帝国は情報が少なく分からないが、

現状事件の絡みが濃厚である事を考えると印象は悪い。

しかも帝国では冒険者は使い捨ての駒として扱われるという噂もある。

それ以外の国については全く知識がない。

という事で結局は現状、この国が最も安全かもしれない。

ただし、貴族に振り回されなければという条件付きだが。

結局の所、俺に選択肢は無いに等しいじゃないか。

「わかりました。ご依頼承ります。」

と内心溜息(ためいき)がでていた。


ギルドに戻り、王都までの道順を確認する為、ヘレンさんの所へ向かう。

辺境伯の推薦状を渡す。

「王都に行かれるのですね。その前にランクアップの処理をしますので、ギルドカードを預からせてもらいます。」

と言って後ろにいた別の係に渡す。

「まず、王都への行程ですが、もっとも一般的なのは、乗合馬車で行く方法です。この馬車は4日に1便出ています。金額は金貨1枚ですね。途中、宿場町で2泊これは別料金です。3日目に到着の予定です。もう一つは、これはタイミング次第ですが、商人の護衛を兼ねて行く方法もあります。冒険者としてはこちらの方がメジャーですね。ただし、全ての都合は商人次第なので、日数や行程は様々です。当然日数もそれにより変わります。最後は、自力で歩いていくなり、馬に乗っていくなどする方法です。こちらは時間はかかりますが、金銭的に一番安く済みます。こんな所でしょうか。」

とヘレンさんは教えてくれた。

「ちなみに、今商人の護衛ですと・・・。」と資料を確認する。

「2つありますね。1つは商人ウイリアムさんからで、人数は3人。2人がすでに受けてますので、あと一人です。報酬は1日金貨1枚。いくつか村を回り、王都までの行程は6日となっています。もう一つは商人カーターさんからで、人数は3人。一人がすでに受けています。こちらはあと二人ですね。

報酬は銀貨8枚。食事つき。行程は直接王都へ向かうので3日となっています。どちらも明日出発となっています。現状どちらも最低人数は確保できているので延長募集はないと思われます。あと、行程はあくまで目安です。予定外の事もありますので、日数は余裕を見てください。それと、乗合馬車ですが、本日の朝、出発したようなので、次は4日後の朝となっています。」

歩いていくのは論外として、乗合馬車は4日後。

であれば、どちらの依頼を受けても依頼の方が早く着く。

俺の依頼は日数の制限は特に言われていない。

なるべく早くという事なので、どちらを受けても問題ないようだ。

報酬を見れば、ウイリアム氏の方で、日数を見ればカーター氏の方か。

「依頼を受けた冒険者のランクって教えてもらえるのですか。」

とヘレンさんに訊く。

「んー。ランクくらいなら大丈夫でしょう。どちらもEランクの方ですね。」

どちらも変わらんか。

金額は少ないが、面倒事はさっさと片付けるのが昔からの性分だ。

「では、こちらを受けたいと思います。」「では、出発は明日、朝の2度目の鐘が鳴り次第、出発との事ですので、それまでに集合場所へ行って下さい。」

話が終わり、一応掲示板を確認する。

農村から、魔物の討伐依頼や獣被害の警備依頼が前よりも多く貼りだされている。

冒険者も前回の法国の事件の時のように、少ない印象だ。

かなり、周辺に出払っているとみるべきだ。


さて、王都へ向かうとなれば、その準備だが、食料に関しては全く問題ない。

武器もショートソードが2本、内ミスリル製が1本。短剣1本、アイテムも

MP回復ポーションが10本ある。ヒーリングライトが使えるから、

HP回復ポーションは念の為1、2本くらい買っておくか。

正装用の服もエルフ王から貰っているので問題ない。

あとは、物を取り出すときに誤魔化(ごまか)せるようにバッグも必要だろう。

ベルトポーチでは、誤魔化しにくいようだ。

小さめの邪魔にならない背負い袋が銀貨4枚、

ポーションが1本金貨3枚で計6枚の出費だ。

宿を確保するために久しぶりに銀の鹿亭へ向かう。

だが、なんと一杯で埋まっているという。

最近南部の街や王都から冒険者が集まってきているという。

魔物が増えているという事で、ギルドが他の街のギルドに要請を出した為らしい。

仕方ないので、日暮亭へと行ってみる。辛うじて一部屋空いていた。

すぐに、部屋を抑えて食事をする為に一度出てくると伝え、適当な食事処に入る。

そこで少し、噂話を耳にした。最近夜中になると街中に獣が出るという。

その獣は、影から影へものすごい距離をジャンプしていたり

屋根を飛び移っているのを見たという。

他にも、最近幽霊を見たという話も多いらしい。

辺境伯が言っていたのは、こういった事なんだろう。

今のところ、実害は報告されていないようだが、気を付けるに越したことはない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ