18日目 友
●18日目(グリウス歴863年5月20日)
朝食後、エルフのメイドさんが、「パーティー用の衣装です。」
と衣服をドレッサーに入れて行った。サイズなんか測ってないんですけど?
とりあえず、袖だけ通してみる。うん。ぴったりだ。
どんな仕掛けだよ、怖いんですけど。
今日はたっぷりとこの世界の情報を手に入れられるかもしれない。
その為に昨日は、早くに眠っておいた。
エルフの城の本なら、魔法的な物や妖精族に関する物、歴史、
このあたりを重点的に読んでおきたい。
それとエルフ王国の西方について。
巨人族が支配しているエリアらしいが、あまり想像できない。
このあたりも知りたい部類だろう。すると、部屋に迎えがやってきた。
「ふー。そろそろ時間かな。」隠れて果物を内緒で食べたが、昼飯も断り、
情報収集をばっちり行った。
エルフの王国より西方は巨人族の領域となっている。その領域はかなり
大きいらしい。そしてエルフ王国の南西、巨人族の領域の南方には
獣人族の領域がある。獣人族は国家を持たずに部族ごとに
暮しているようだ。獣人族への陸路は完全に山岳に阻まれており
陸路で行くのはほぼ無理のようだ。そして獣人族の領域の更に南方に
海洋国家群があり、その構成は大小様々な島嶼で構成されている。
またその海洋国家群は全て同盟関係にあり、海洋貿易が盛んとなっている。
また、ドワーフ王国の北西には大きな湖がありその東側、ドワーフ王国の
北側は湿地帯が広がり、リザードマンの領域となっている。
リザードマンの領域の更に北にはドラゴンが多く生息していると
考えられている。この辺ははっきりとしていない。
この図書室には植物の本が非常に多く、多岐に渡って記されていた。
結構読んでは見たが、専門的過ぎるのと種類が多いので
途中で読むのをあきらめてしまった。
それと最後に興味深い書物があった。
異界人と呼ばれる人間の存在について記されていた。
人間種の中には、時折、異界からくる人間がいるらしい。
異界人達の性格は初めは基本臆病な人間だが、人間にしては奇妙な
能力を持っている者が多いという。中には非常に好戦的な者もいるが
得てしてその異界人は早々に死んでしまっている。大半は魔物に
殺されてしまうのだった。この世界にある伝説級の魔法のアイテムの
大半はそういった者達からもたらされた物である事が多い。
その異界人が消えた後、そのアイテムがダンジョンから見つかる例も
あるらしい。そういった異界人が最終的にどこへ行ったのかは謎と
なっている。という事らしい。
多分、俺と同じような境遇の人達なんだろう。
ただこの書物からは得られるものは何もなかった。
「アルス様、そろそろ準備をなさるお時間ですので、部屋にお戻りください。」
そう言ったのは、司書の係の人だ。
部屋の入り口では、ここまで案内してくれた方が待っていた。
部屋に戻ったら、メイドさんが、着替えをお手伝いさせて頂きます。
と2人ほど入ってきた。断ろうかとも考えたが、
アクセサリー類の付け方も知らないので素直にお願いする事にした。
そして会場に案内される。
会場はかなり広く、一番奥に雛壇があり、椅子が4つ並べられている。
これは王族用だろうと分かる。そして入り口近くの脇には
十数人の演奏者が様々な楽器の調整と準備を行っていた。
その反対側には、メイド達が飲み物や料理の前で整列していた。
また、壁際のあちこちに休憩用の椅子が並べられ、その内側には
円テーブルが所々に置かれている。
円テーブルには、見事な生け花が挿してあり、華やかさを演出していた。
室内には、エルフやドワーフが二、三百人ほどいるだろうか、
ずいぶん多くいると感じた。
ほどなく、室内が急に静かになったと思ったら、前触れの声が聞こえた。
「バライド・デュード王陛下並びにエリアルド・カナン王陛下、ご入来ー!」
全員が正面を見て頭を下げる。
「続きまして、デュード王妃殿下並びにカナン王妃殿下、ご入来ー!」
と続けざまに前触れが行われた。
全員そのまま、頭を下げた状態だったので、それに倣って頭を下げていた。
「皆の者、楽にせよ。」カナン王が言うと、全員が頭を上げた。
「此度起こった事件は無事解決された。そして、ドワーフとエルフの両国はこれまで以上の友誼を深め、改めて強力な友好国として未来に向かって行くだろう。」
そう宣言すると、「ワー」と歓声が起き、
「カナン王ばんざい」「デュード王ばんざい」と喧騒極まりない歓声となった。
少し間を置き、カナン王は手を上げる。
すると、歓声がピタリと止み。次の声を待つ。
「ここで一人皆に紹介したい。アルス殿、前へ」
ヒュリアから事前に聞いていたように前へ進んでいく。
両王陛下の雛壇の前で礼をして待つ。
「ここにいるアルス殿は、今回の事件解決に当たって多大な協力を頂いた人物である。それに感謝する為ドワーフ王と我エルフ王から、『妖精族の友』の称号と共に褒美を授けることを宣言する。」
すると、盛大な拍手と共に
「妖精族の友アルス殿、バンザーイ」と歓声が沸き起こる。
「本日は、その記念である。皆共々、楽しむが良い」
とパーティーが始まった。
メイド達が一斉に飲み物を配って回り、食を満たしたいものは、
皿に装って食べ始めた。
更に、楽師たちがメロディーを奏で始める。
俺はというと、エルフやドワーフの中でも興味津々な者たちに取り囲まれ、
あれやこれやと質問攻めにあっていた。
しばらくして、ようやく解放されたので、一旦バルコニーへと逃げて行った。
そこで一息つく。
「大変だったのー」
と他人事のようにギームとヒュリアがやってきた。
「見てたなら、助けてくれても・・・」
と後ろを振り向く。
「ほれっ。」
と言ってギームはグラスを渡す。
「さっき言われた称号の事なんだけど、どういう意味?」
と二人に問いかける。
二人は顔を見合わせて、笑いだした。
「なんで笑うのさ」と軽く怒った風に問いただす。
「ごめんなさい。別に悪気があって笑ったんじゃないから。」
とヒュリアが謝る。
「まあ、大したことないじゃろ、別に。気にせんでいいぞ。」
とギームはとぼけて言う。
「いやいや、俺の事だよね。気になるよね?」
と思わずつっこむ。
「簡単に言えば、妖精族、主にエルフとドワーフの間になるが、アルスの存在が周知されるってことかな。」
とヒュリアは説明した。
「明日以降はどうされます?しばらく滞在していても良いと許可は取ってありますよ。」
とヒュリアは訊ねる。
「ギームは明日以降の予定は?」
とギームに話を振る。
「我々は、明日には自領に戻ることになる。それに長期間陛下が不在では問題だからな。」
とギームは答える。
「なら、俺も親書の件もあるし、明日ジュノー王国へ出発するかな。」
と答える。
「なら、今日でまた、しばらくお互いに会えなくなりますね」
と少し寂しそうにヒュリアは言った。
「ならば、こんな所にいないで最後に楽しむとしよう」
とギームは戻るよう促す。
「そうだね。」
そう言って、ヒュリアと頷くとパーティー会場に戻って、飲んで、
食べで、踊って過ごした。
ちなみに、とあるエルフに催促され、リリーを召喚した。
リリーはあっちフラフラこっちフラフラと好奇心を満たして回っていた。




