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136日目  夜警

その2


主だった面々が集まっていた。

ギームやダリスといった各部隊の隊長とその副官、副隊長や分隊長など

各部隊から3~4名が参加している。

さて、ここで本来俺が主導して話をするのが普通なのだが、

実はまだ引継ぎを行なっていないので

状況をほとんど理解していないのが実情だ。

その為、ユミコが実質進行役となる。

「全員揃ったようなので始めます。」

そう切り出して話始めた。

どうやら2つの問題が発生しているようだ。

一つ目はこちらに援軍で向かっている冒険者を主力とした部隊が

峡谷で足止めを食っているという。

峡谷を抜けるルートが一番近いらしいのだが、

崩落で道が塞がれて立往生している状況との事だ。

今も土砂の除去を行なっているが、

冒険者は体力があってもこういった作業の知識や経験も少ないため

作業は難航しているらしい。

本来、この部隊は前回の遭遇戦の日あたりで合流する予定だったのだが、

そこからずっと立往生しているのだ。

「このままでは、合流が難しいという事で一時撤退する可能性が出てきました。そこでこちらからも工兵を増援に向かわせようと思います。こちらはダリス隊長に一任します。」

「了解した。」

既に事前に話し合ったのだろう。特に内容に触れることなく次の話に移る。

もう一つの問題と言うのは毒に侵された兵士が

何人か出始めているというのだ。

この街に入ってから、体調を崩す兵士が出始めたという。

はじめは疲労からくる風邪等と思われていたが、

偶然、毒に侵されているのだと判明した。

体調を崩している者を診断した結果、

程度こそ違えど全員が毒に侵されていた。

そこで、食糧や水など調べたりしたのだが、

今の所、食糧や水は汚染されていない事も分かった。

また、毒に侵された者たちの共通点を探したが

それも不明で原因が全く判らないという事だ。

「モンスターも入ってきていないですし、現状何も判らない状況です。皆さんにはどんな小さなことでも何か異変があった場合、すぐに報告するように通達を出してください。毒については早期発見できればキュアポイズンの魔法や毒消しポーションで治せるの体調の悪い方はすぐに治療班に診てもらうようにして下さい。」


一旦、会議も終わり、全員が持ち場に戻っていった。

その中で、部隊長クラスだけが残った。

「状況は判って頂いたと思います。」

「俺も体調が悪くなった兵がいる事の報告は聞いていたが、そこまでひどいのか?」

ダリス隊長が面倒そうな顔をして訊ねた。

「今はまだ魔法の治療で何とかしてますが、このままだとどんどん患者が増えてポーションを頼ることになります。ご存じだと思いますが、毒消しのポーションが効くのは3割がいいところです。毒の種類によって特効薬自体は様々です。ここにあるのは汎用的な毒の効果を和らげる程度の物ですので、期待はしないで下さい。数もそれ程用意されてませんしね。」

「まあ、そうだろうな。」

「そんなに毒に侵された者がいるのですか?」

ヒュリアは不思議そうに訊いてきた。

「儂らドワーフやエルフの中では、まだそういった者は出ておらんからな。」

「まあ、俺達と違って昔からエルフやドワーフは毒や病気に強いからな。」

騎士団の隊長に新しくなったギルバートが腕を組みながら言った。

「食い物や水ではないとするとモンスターくらいしか思いつかないわね。」

アンジェも考え込みながら言った。

「ですが、あの戦闘以来、モンスターとは一度も接触してませんからね。偵察に出た者も接近する前に弓で追い払ったとしか報告もありませんし、本当に原因が判らないんです。」

「何にしてもこっちの事は任せるぞ。俺は工兵と護衛を引き連れて、峡谷まで迎えに行ってくるからな。」

ダリス隊長はそう言って手をひらひらさせた。

彼は彼でこの後の仕事をどうするか考えるだけで忙しいのだろう。

「そうですね。ダリス隊長も予定より護衛を少し増やして警戒してください。」

ユミコは心配するように言った。

「ああ、そうさせてもらうよ。俺は準備もあるからここで戻らせてもらう。後はよろしくな。」

そう言って、ダリス隊長は部屋を出ていった。

結局、何も決まらないままそれぞれの部隊で

警戒するという事でお開きとなった。


部屋に戻り、アンジェとマリアとで先程の話をした。

「もし、なにかあるのなら夜だよね。」

「そうよね。昼まであれば誰かしらに見つかっているか異変に気付いていると思う。」

「何の毒か分かれば原因を掴めるかもしれないけど、ここでは調べられる人もいないし、調べられる環境もないしね。」

それから何だかんだ話したが結局判らないし、情報も少ない。

とりあえず、昼間はアンジェとマリアで気をつけてもらって、

俺は夜、調べることになった。


そんな訳で、俺は夜まで仮眠を取ることにした。

リリーも俺と一緒に夜行動すると言って隣で眠っていた。

っていうか、リリーはいつも寝てばかりいると思ってるのは

俺の勘違いだろうか。


「アーくん、起きて。」

軽く揺さぶられて目を覚ます。

いつの間にか眠ってしまっていたようだ。

「私達はそろそろ寝るから。あとはお願いね。」

アンジェは俺が目を覚ましたのを確認すると部屋に戻っていった。

着替え終えて、リリーを起こす。

「見回りに行くよ。」

寝ぼけ眼のリリーを頭にのせて外に出た。

大きく伸びをして、気合を入れる。

外は気持ちよい風が吹いていて、気温も寒くない過ごしやすい夜に感じた。

「よし。やるか。・・・何しようか・・・」

何も考えてなかったことに今更気付いたのだった。


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