15日目 親書
●15日目(グリウス歴863年5月17日)
ドンドンドン!扉をたたく音がする。ドンドンドン!
「なに、朝っぱらから・・・はいはい、今開けますよー」
「なんですか。こんな朝っぱらから・・・」
扉を開けるとヘレンさんが立っていた。
「申し訳ありませんが、至急、ギルドに来て頂けますか。ギルド長からの命令です。」
またもや、ギルド長の部屋に連れてこられた。
中には、ギルド長ともう一人、明らかに貴族といった格好をした
40歳前後の男が座っていた。
「アルスくん、こちらに来て座りなさい。」と促される。
部屋に入り、座る前に、
「シモンギルド長、こちらの方は?」と先に訊く。
その男はギルド長によいといった感じで手で制し、
「はじめまして、アルスくん。私はこのランゴバルドの領主でゼノンという。まあ、掛けたまえ。」座るよう促される。
「それでは、失礼いたします。」
と言ってソファーに腰を下ろす。
「朝早くから済まなかったね。早速だが君には領主として指名依頼を受けて貰おうと呼び出させてもらった。」
チラッとギルド長を見るが、ギルド長は腰掛けて目を瞑っている。
「今日、エルフ王国へ出発すると聞いておるが、準備は整っているのかね」
「はい、昨日のうちに。」
「そうか。では時間も惜しいので、本題に入らせてもらおう。君に頼みたい事は、エルフの王国との関係改善の橋渡しになってもらいたいのだ。」
「お待ち下さい。領主様。私は御覧の通り、12歳の若輩もの。しかもFランクの冒険者です。こんな一介の12歳のFランク冒険者にそんな大それたことは出来ないと思うのですが。」
と12歳とFランクを強調して言った。
「その一介の冒険者がエルフ王家からパーティーの招待状を受け取っていると報告を受けているのだが、最近の一介の冒険者は王族のパーティーに誘われるのかな。」
というなり、ニヤリと笑った。
手持ちのカードにおいては相手の方が上である事は間違いなさそうだ。
「ふー。わかりました。私は何をすれば良いのですか。」
と降参という素振りで訊き返す。
「なに、簡単なことだ。ジュノー王国には、エルフ王国と事を構える思惑は一切ない事、可能ならば国交の正常化を望んでいる事を伝えてくれればよい。国王陛下からの親書も用意した。それを渡すだけでも良い。」
「ちょっと待って下さい。昨日の今日でなんで国王陛下の親書がここにあるんですか?おかしくないですか?」
ビックリした様に訊いた。
ニヤッと笑って
「大丈夫だ。本物だ。何故、ここにあるかは機密事項だ。許せ。親書の内容は、国交正常化についてだ。できれば返事も貰って帰ってきて欲しい。」
「まあ、手紙の遣り取りだけなら、構いませんよ。」
と半ば諦めの境地で答える。
「助かる。報酬は、無事返事を貰ってきたら渡そう。失望はさせんよ。」
と言って親書を渡される。
「確かにお預かりしました。」
「では、私はこれで戻らせてもらう。ではな。」
領主は部屋から出て行った。
じろっとギルド長を見る。
「まあなんだ。報酬が貰えてラッキーじゃないかね」
とすっとぼけたことを言う。
「ギルド長!ちょっと、手際が良すぎやしませんか。」と詰め寄る。
「なんて事はない。渡りに船だったという事だよ。そんな事より、のんびりしていていいのかい?」
「そんな事なら馬車の一つでも用意してくれてもバチは当たらないと思うんですけどね。」
「そんな大事にしたら襲って下さいと言ってるようなものじゃないかい。」
「いやいや、Fランクの冒険者がこんな頻繁にギルド長に呼ばれれば同じことですよ。」
笑ってごまかすギルド長であった。
ギルド内で出立の準備を整えてから出発した。
街の門を出て、人目につかなくなったところでリリーを召喚する。
「やっほー、あるすくん」相変わらず、ひらひら飛んでいる。
「どこいくのー」と頭の上に寝そべる。
「エルフの国だよ。それよりもリリー?お腹空いているかい?」
「リリーはねぇ。甘いの好きー。お肉は食べないー。きらーい。」
「主食は果物とかなの?」
「そだよー、おなかすいたー。あまいのちょーだい」
「あげるけど、人の頭の上で食べないでくれるかい。せめて肩の上で食べてくれ。」
異空間収納から果物を一つ取り出して渡す。
「それとリリーのその服なんだけど、予備は持ってるのかい?」
「ふくはー、ないよ。やぶれてもーなおるから。よごれてもーまほうでエイッってやっちゃうの。」
なるほど。
リリーは食べ終わると、満足した様に頭の上で眠っている。
俺は歩きながら、落ちている小枝や野営時に使えそうな小石を収納していく。
5m範囲くらいなら触らずにそのまま収納できるので随分楽だ。
のんびり歩きながら、エルフ王都まで歩いて2日半。
なんだけど、大人の足でだよな。
俺の足だともっとかかるんじゃないのかとふと思った。
あれっ?マズいか?
敏捷強化、体力強化を使えば少し早くなるかもしれない。
そう判断し、使用する。リリーが落ちないように気を付けながら歩く。
確かに先程よりも全然早く進める。
進めるのだが、のんびり行く予定だったのに・・・。
特にモンスターに襲われることもなく夕方近くになり、
野営できそうな大きな木のある所を見つけ、そこで野営する事にした。
石を組んで簡易キャンプファイヤーを作り、持ってきた野菜と肉で炒め物を作った。
それをパンと一緒に食べる。リリーは昼間とは違う果物を渡した。
食べ終わり、水属性魔法で調理器具や皿を洗い、乾燥させて収納する。
すでに周りは暗くなっているので火の後始末をしたら、木の上へと登る。
木の幹にロープで体を固定して、眠るためだ。
寒さはマントで凌ぐしかなさそうだが、この時期は温暖なのでそれ程苦ではない。
歩き詰めだったからかいつも間にか寝てしまっていた。




