12日目 災難とパートナー?
即死耐性の記述を修正しました。5/14
●12日目(グリウス歴863年5月14日)
昨日は1日ゆっくり過ごしたので、今日は再度検証にあてる。
検証といっても、どちらかというとレベリングといった感じだ。
低ランクの魔物を狩っていき、どの程度で上がるかを確認する。
それと剣術の検証も必要だろう。というわけで、また妖魔の森へとやってきた。
1対1の場合は剣で、複数の場合は魔法で対処しよう。
森の中へ入り、しばらくすると、ゴブリンの小集団を発見した。
索敵距離が伸びたので、発見が随分と楽になった。距離はまだ500mある。
数は3匹だ。ゴブリンは数を減らすと逃げて行ってしまうらしいので、
2匹魔法で倒して1匹剣で倒すというのは難しいだろう。
今回は多少危険と思われるが、まず魔法で1体倒し、
2体は剣で倒すという方向でやってみよう。
ショートソードを抜いたままで近づいていく。
視認できる所まで近づき様子をうかがう。
相手は全てこん棒のような装備で、飛び道具はないようだ。
この辺りは、木が多いせいか、下映えの草は少ない。
なるべく木を遮蔽物にして近づくが、およそ100mあたりで
気づかれてしまった。すぐさま、敏捷度強化をかける。
こちらの姿を見せると、一人だからというのだろうか、
ゴブリンはこちらに向かってきた。完全に近づかれる前に、
最後方のゴブリンに向け、ライトビュレットを放つ。
ライトビュレットの方が弾速が早く、また、残りの2体にどこに魔法が
飛んでいったか分かりにくいからという理由がある。
最後方のゴブリンの胸に当たり、前後から血を吹き出しながら、
そのまま前のめりに倒れていく。残りの2体は、威嚇しているつもりだろう、
ギャアギャア騒ぎながら走ってくるものだから、
最後尾のゴブリンが倒れたことに気づいていない。
俺にとって初めての接近戦である。緊張からか手に汗が出ている。
サッと右手のひらを服に擦り、汗を拭く。大きく息を吐き、気を落ち着かせる。
先頭のゴブリンは、こん棒を大きく振りかぶった状態で走りこんでくる。
それに合わせるように、大きく一歩踏み出し、
ショートソードを顔面に突き立てるように繰り出した。
ゴブリンはこん棒を振り下ろす間もなく、顔面にショートソードが
突き刺さった状態になり、絶命した。
ゴブリンが倒れこむ瞬間にショートソードを力いっぱい引き抜き、再度、
そのまま走りこんでくるゴブリンの眼前に突き出した。
目の前の味方のゴブリンがやられたのを見たゴブリンは止まろうとしたが
勢いあまって止まり切れなかった。そして、態勢が崩れた姿勢で目の前に
繰り出された剣を避けるような能力はなかった。
剣で戦った初戦闘は思いのほか、簡単に終わった。剣術スキルを取っただけで、
ここまで自分の動きが変わるなんて想像すらできなかった。
前世で、年を重ねた時、頭の中のイメージに体の動きがついていかない
という事があったが、今回は体の動きに頭の中のイメージが
ついていけてないという経験したことがない状態だった。
咄嗟に2撃目を繰り出せたが、今後乱戦や複数戦になった時は危険かもしれない。
体とイメージを合わせる為に訓練が必要と感じた。
今まである意味、間接的に殺生してきたが、直接自身の手で殺生したけれど
何度も死を見てきた事で慣れてしまったのだろうか。
罪悪感がおかしいくらい無い。むしろ、できたという高揚感すらあるようだ。
この世界に順応してきているという事なのか。
そういえば、ゴブリン討伐依頼受けてこなかった。ミスった。
ステータスを確認すると、レベルは上がっていない。
ゴブリンの魔石を取り終えた時、9体の狼が迫っているのを感じた。
流石に9体の狼を捌く自信はないので手近な木の上に飛び移る。
どうやら狼は血の匂いに引き寄せられているのかも知れない。
最初に魔法で倒したゴブリンの周りに一旦とまったが、他に獲物があるとみて、
もう2体のゴブリンの死骸に7匹ほど向かってきた。
その内のリーダーらしき狼はこちらを見つけたのか、
こちらを見ながら低く唸り声をあげた。
こちらを威圧しているのだろうか、グルルルと唸っていたが、
他の狼がゴブリンの死骸を咥えて走り出すと、
そのまま、最後尾について走っていった。
魔法で木の上から殲滅しても良かったが、狼を倒しても魔石は取れないだろうし、
こちらを襲うそぶりはなかったので、見逃した。
死骸を片付けてくれるならそれに越したことはないだろう。
そういえばこの間の誘拐事件の襲撃した場所はどうなっているのだろうか。
ふと頭をよぎったが、君子危うきに近寄らずというし、近寄る事もないだろう。
そしてすぐに記憶の彼方へ追いやった。
それよりもレベリングだ。ここから更に北の方へ向かった。
先の方で少し明るい場所が見えてきた。
森を抜けたのかとも思ったが、この森がそんな浅いとは聞いてない。
不思議に思い、近づいていく。
そこは400㎡くらいありそうな開けた場所だった。
そこだけ青々と草が生い茂り、色々な低木や草花が生えていた。
その一画に大きな岩が突き出していた。高さ的には2~3mくらいだろう。
登るのもそれほど苦ではなさそうだ。見渡す為に、そちらに向かい岩に登る。
薄暗い森の中とは違い、ここだけ別世界のようだ。
草原にはない植物も生えており。
なかなか綺麗な所と思わずにはいられない場所だ。どんな植物なのだろう。
ふと感じて、物品鑑定を発動させた。
ここにある植物は全てそれなりに珍しいもののようだ。土ですら価値がある。
ただ、こんなきれいな場所は壊したくないという思いが、
沸々と湧いてきて採取するつもりはなかった。
しかし先程から気になっていることがある。それはチラチラと索敵に
かかっては消え、かかっては消えを繰り返している事だ。
「何かいる!」思わず一人呟いた。何かいるような影も形もない。
敵意は出ていないから今のところ害はなさそうだが、気になって仕方ない。
しばらく、索敵に意識を集中させる。場所はバラバラ、近かったり遠かったり
索敵反応はほんの一瞬。何か動くものの気配はない。
一向に変わらない索敵反応と景色。だんだんと警戒心が薄れていく。
もう昼か。持っていた保存用のパンをかじる。
パンというよりクラッカーに近い感じだ。味は、まあ不味くはないが、
決して美味しいものでもない。
水筒の水で流し込む。口直しというわけでもないが、干し果物をかじる。
こちらは甘い。この世界では甘味は少ない。主に果物だけである。
干し果物をかじりながらも、相変わらずおかしい索敵が気になっていた。
ふと、右斜め後ろのすぐ近くに消えない気配があるのに気づいた。
思わずそちらに振り返ると、目に前に20cmくらいの羽の生えた人間が、
肩の近くに浮いていた。
「うわっ!」いきなり現れたので思わず離れようと左手を岩にあて、
そのまま岩から飛び降りようとしたが、左手は空を切り、
そのまま左側につんのめって、岩から転げ落ちた。
ドスン!下が柔らかい土でなければ間違いなく骨が折れていただろう。
「いったぁーーーっ」・・・HPが1減っていた。
手に持っていた干し果物は一応無事である。土もついていない。
さっきのは?と上を見上げる。岩の上でひらひらと浮きながら、
ケラケラ笑っている。よく見るといわゆる妖精というやつか、
いや、厳密にいえばエルフもドワーフも確か妖精族、
これは、フェアリー?ではなく確かピクシーと呼ばれるものではないか。
と冒険者ギルドでみた資料を思い出す。
「なに笑ってるんだい!」とピクシーに問いかけてみる。
「今の。ずってーーーんって。キャハハハ。おっかしーー。」
まだ、笑っている。
ピクシーは余程の事がないと人前には姿を現さない。
しかもいたずら好きと専らな噂があると書かれているのを思い出した。
結構えげつない悪戯も多いらしい。
ここは、ピクシーの住処だったようだ。
さっきからの索敵はピクシーなのかもしれない。
こんな所にいたら何されるか分からない。
「ここは、君たちの住処かい。もしそうなら、お邪魔しちゃったね。すぐ出ていくから。」
と立ち上がる。
「ねーねー。何食べてるの?ねーねー。」
そう言いながら、俺の周りをくるくる回りだす。
「これかい?これは干し果物。果物を干したものだよ。食べてみるかい?」
干し果物を少し手でむしり、手のひらに載せて差し出す。
「いいのーーー。ありがとーーー」
そういうや否やピクシーは俺がかじった大きい方をかっさらっていった。
「キャハハハ」「キャハハハ」いつの間にかもう一匹増えている。
そしてむしった方も無くなっている。
「それはあげるよ。それじゃあね。」
そう言いながらこの広場から出ようと試みる。
「次はなにして遊ぶーーー」俺の周りを飛び始める。
ヤバい。ドツボにはまりそうだ。
「もう遊ばないよ。今日は終わり。また次来た時ね。」
「えーーー」「あそぼ」「あそぼ」「あそぼ」また、増えてる。
盗まれたり、消されたりするとまずいので、剣や短剣など身に着けている物は
全て異空間収納にしまってしまう。これで、身に着けているのは服だけである。
「今のなにーーー」「なにー」「なにー」「なにー」「なにー」
更に増えた。目の前をひらひら飛んでいる。
あー、どうすんだこれ?すでに20体くらいは居るようだ。
「よし、こうしよう。今日はもう帰るから遊べないんだ。その代わりさっき食べた干し果物があと2つある。それあげるから今日はそれでおしまい。それでいいかい?」
「いいよーーー。」「さっきの甘いやつ―。たべたーい」「いいよーーー。」
誰が何言ってるか分からない。
「約束したからね。」
約束なんて通じるか分からないが念をおす。「約束したからね」
そう言って異空間収納から干し果物を2個出す。
そして、手のひらに載せて差し出す。
「ナニコレ―」そう言って、1体のピクシーが異空間収納の中へ飛び込んだ。
「わーっ」慌てて異空間収納を閉じる。
他のピクシーは干し果物を持って飛び回っている。あれっ、さっきのピクシーは?
それよりも今がチャンス。
ピクシーが干し果物に興味がいっている隙にここを出よう。
何とか森を出た。ピクシーはあそこから出てこないようだ。
安心して、装備を取り出して身に着けていく。
「あれ?そう言えば。」異空間収納に手を入れる。違和感を感じた。
意識を集中させる。アイテムはいつもと変わらずある。
「??」異空間収納にピクシーと頭に浮かぶ。
えっ?もしかして中に入ったのか?てか入れるのか?生きてるのか?
急いで取り出そうとするが取り出せない。おかしい。確かに中には存在する。
何度も試すが、取り出せない。
はっ!もしかして、異空間収納のランクアップで次回の効果付与は
『召喚』となっていた。ランクアップさせないと自力で出せないのか?
まあ、俺の手が入るってことは、生き物も入れるんだろう。
中は今時間停止機能が働いているから、
入った生き物は時間が停止して自力で出てこれない。そんなところか。
しかし、困った。このままって訳にはいかないが、
ただ、次のランクアップまで、SP700必要なのだ。
今現在の残SPは977。これから700消費すると残り277。
次に取得する最優先のスキルは属性魔法全種だが
最低のランク1でも120は必要になる。
闇と光は、物理無効に対応するために最低3までランクを上げたい。
光が100必要で闇が190必要。光闇をランク3、
他属性はランク1としても、380必要だ。
今、700も使っては対応できない事案が起きる可能性がある。
ただ、ピクシーはこのままで大丈夫なのか?
時間がたって取り出したら干からびてたとか餓死していたとか、
いくら事故だからと言って・・・・。
急いで自身のレベルを上げてSPを獲得するしかない。
頼むぞ、それまで無事でいてくれ。
決めたが最後、早速索敵を行った。
あれから、ゴブリン10体、ジャイアントスパイダーを1体、
コボルド10体でようやく、レベルが上がった。レベル5である。
しかし、時間はかなりかかってしまった。こんな場所で野営はできない。
そもそも野営道具はない。索敵で余計な戦闘を避けつつ、南へ急ぐ。
なんとか森を抜けた。
そして街まで戻り、宿屋に到着した。
まだ宿内の食事場所は開いていたので助かった。
食事後、自分の部屋へ戻り、早速SPを割り振る。
これで異空間収納はLv7、機能に召喚が使用できるようになった。
召喚の詳しい説明をみると『テイムした魔物を収納したり召喚したりできる。
また、召喚魔法にて召喚した生物も収納及び召喚できる。』となっていた。
「ん?」テイムした?召喚した?勝手に入ったのは?まあ、とにかく試そう。
「召喚!ピクシー!」
「・・・・・・」
な、なんだと!!こうなったら手で引っ張り出してやる。
手を入れながら召喚ピクシーと念じる。駄目かぁ。
ということは、テイムする必要があるのか。
たしか、スキルにテイムってあったな。
まだまだ金がないからテイムはアウトオブ眼中だったんだけどな。
テイムLv有りか。どれくらいでピクシーテイムできるんだ。
その前に必要な全属性の魔法スキルを取ってしまおう。
よし、Lv1から試そう。異空間収納の中にいるピクシーを意識して
「テイム!」これでいいのか?
「召喚。ピクシー!」すると中からピクシーが現れた。
「あれー。ここ、どこー。」ひらひら飛んでる。
とりあえず、これで安心だ。
自身とピクシーにそれぞれステータス鑑定をした。
自身のステータス画面にテイムという項目が増えて、
そこにピクシーと表記されていた。
次にピクシーを見てみる。
名前: ピクシー 女 Lv1 HP10 MP50
・・・ピクシー 弱くね。
名前が空欄になっている。これは名前を付けろってか。
ピクシーもテイムされていることは理解しているようだ。
というかピクシーと意識が細い糸のように繋がった感覚がある。
名前かあ。
「なあ、君は今まで何て呼ばれていたんだい?」
「わたし?わたしはわたしだよ。」はい、そうですか。
「そうだな。君を見て鈴蘭が頭に浮かんだんだ。確か英語でリリーオブバレーだったかな。だからリリーにするよ。君は今日からリリーだ」
「わたしは今日からリリー。えへへ。」
「僕の名はアルス、これからよろしくね。」
属性魔法の闇と光をLv3まで上げたら、即死耐性、病気耐性が出現した。
即死は怖いので全振りで取得した。
他の耐性スキルをMAXまで上げれるように
優先順位を上げておこう。
それと今回のレベルアップでHPが+10、力が+2上がった。
前はHPが+5、力は+1だったのに。
もしかするとレベルを上げるまでに使用した内容により変わるのか、
それともスキルを取得した内容で変化するのか。
このあたりの検証は難しそうだな。
--取得スキルーー
異空間収納Lv6→7、属性魔法 土・水・火 Lv1、
属性魔法 光 Lv2→3、属性魔法 闇 Lv3、テイムLv1
即死耐性Lv5、病気耐性Lv3、他耐性Lv2→3、
ステータス鑑定4→8
その後、リリーに果物をあげながら、ピクシーについて色々訊いた。
ただ、言ってる意味が良く判らなかったり、リリー自身分からない事が多く
大して情報は手に入らなかった。
それとテイムについて、テイムのレベルが大きくないと大きな強制力は
働かないようである。リリーも一緒にいたいという気持ちが強いだけで
何か興味のある事があるとそちらが優先されるようだ。
今のままでは、街中を一緒に出歩くのは厳しそうだ。
しかしこのテイムは良くわからん。ピクシーがテイムできるのなら
エルフやドワーフもテイムできるのだろうか。まさか人間も?
そんなことあり得るのか?
リリーはすでにベッドで眠っている。俺も今日は寝よう。




