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第13話 討伐部隊の部屋へと帰る

「それなら、上層部に連絡した方がいいかな」



  敵組織と繋がる誰か。もしそんな存在が影者討伐隊にいるなら、大問題だ。

  すぐに見つけ出すなら、影者討伐隊の上層部直属のスパイに頼んだ方が早いだろう。

  向こうの目的は知らないが、こっちに危害を加えるつもりなのであれば、その方がいい。



「いや、ちょっとだけ泳がせてみよう」


 

  しかし有明さんはそう言い、暁霞は驚いたように目を見開いた。彼女もきっと、伝達するものだと思ってたんだろうな。



「あまり上に借りは作らない方がいい。灯璃のためにな。もちろん、それも手だとは思う。実際、命を狙われてるわけだし。まぁつまり、言いたいのは灯璃しだいだってことだ。灯璃がしたい方に、俺はいくらでも協力する」



  なるほど。確かに上層部には頼みたくはない。

  大隊長などの上層部は、日本の国家との結びつきが強い。

  家柄、金、その他もろもろの部分において。つまりは、上層部に相談を持ちかけるというのは、かなり面倒臭いことになるということだ。


  それにしても、有明さんの提案はありがたかった。有明さんたちに頼めば、情報部隊の仕事を増やしてしまう──しかもほとんど秘匿の状態で──わけだが、それでも協力してくれると言っている。本当に、ありがたい。



「……そう、ですね。確かに俺も、上に借りは作りたくないです。だけどもし、そのせいで俺じゃない誰かが傷つくことになるのなら、それは避けたい。だから、有明さんや夜麦ちゃんには、できたら向こうの動きを探ってもらっても良いですか? 俺もなにかあったら連絡するので……。 お願いします!」



  あまり目立ったことはできないから、椅子に座ったまま頭を下げる。

 


「灯璃ってさぁ、変なとこ律儀だよなぁ。全然いいよ。提案したのは俺だし。いくらでも頼ってくれ」

 

「私も大歓迎! 灯璃くんの頼みならいくらでも聞くよ。むしろ頼られることが嬉しいし、というか頼られることが生きがいみたいなものだし、今ももう死にそう。あ、待って死んだらダメだ頼みが聞けない」



  ははは……、と若干苦笑いを残しつつ、俺はもう一度頭を下げて立ち上がった。

  とりあえず俺は自分の事務仕事を終わらせなきゃなない。それから有明さんと夜麦と協力体制を整えるのがベストだろう。



「お世話になりました。失礼します」



  討伐部隊に戻るため部屋から出て振り返ると、有明さんと夜麦は何やら難しい顔をして、パソコンと向き合っていた。






「遅くなってごめん。咲夜と天明、これからの流れとか分かった?」


「遅いよ、灯璃。暇すぎて死ぬかと思った。もちろん二人に話はしたけどね」



  赤いドアを開けると、そこにはソファでぐったりしている新人二人。それとその前で仁王立ちする朔。これはそうとう詰め込まれたな。

  見かけによらず、朔は鬼だ。仕事に関しては、とてつもない鬼だ。失念してた。新人にぶつけるべき相手ではなかった……!



「めっちゃ厳しいんだけど。見た目めっちゃ可愛いのに、めっちゃ厳しいんだけど」


「見た目で安心してたのに、見た目で安心してたのに…………」



  ぼやぼやと呟く続ける二人をしり目に、朔はニコニコと笑っている。鬼畜だ。



「ちなみに何したの?」


「まず朝ごはん食べさせて、それから事務仕事の内容教えて、灯璃の報告書──あ、前に一緒にやったやつね?──書かせてから、訓練所連れてって、体術訓練して、凛の任務に連れてってもらった」


「この短時間で!?」


「大丈夫大丈夫。たぶん全部覚えられたと思うよ」



  ちなみに俺がここを出たのは九時前。で、今は十一時すぎくらい。

  つまりこの二時間半くらいで、それだけの量を消化させられたというわけだ。

  普通の部員なら頑張ればそれなりにできるだろうが、彼らは今日初めてここに来たのだ。


  しかも、一緒に任務に行かせた相手は凛だと言う。凛はゴリ押し戦法のタイプなので、そもそも新人にぶつける相手ではない。



「凛って人熱血すぎなのよ。なんていうか……疲れた」


「ていうか、俺らほぼ何もできなかったじゃん」


「なんていうの、傍にいて戦うだけで疲れるタイプよ、あれ」


「言いたいことは分かるけど」



  ソファに倒れ込み、まだまだボヤき続けている二人に、ほら立って、ご飯食べに行こう、と促している朔はやっぱり鬼だ。


  ……それにしても、これからは咲夜と天明の任務に着いていくこともできないのか。

  今朝は何もなかったから良かったものの、これからはそうもいかないかもしれない。

  とりあえずは、二人には可哀想だけど、朔に任せた方がいいか。一応討伐部隊の中では、一番人のことを見ているのは朔だから。


  ケラケラと楽しそうに笑い、食堂へと背中を押す朔と文句を言いながらも歩いている二人の姿を見て、俺はそっと微笑んだ。


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