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Lofty Fang  作者: 吉森 蒼夢
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§1 その牙、未来を喰らう

初投稿のうえ、短編で終わらせようとは思うので、短い上にぎっちぎちです。御愛嬌下さい。

 西暦2046年、人類はついに技術特異点に到達。自律型アンドロイド技術を筆頭としたさまざまなAI技術の進歩により、人間文化は最高潮を迎える。しかし技術がもたらしたのは富や幸福だけでは無かった。西暦2054年、日本が宇宙特殊人工衛星「ADAM」の開発に成功。ADAMは、宇宙空間に疑似的な人口惑星及び植物系を生み出す最新テクノロジーが搭載されたものだった。しかし、世界各国は日本の宇宙への関与を認めるわけにはいかなかった。地球温暖化を含めた数々の環境問題に限界を感じた日本政府は、日本全域に対し「新惑星日本」を名とする人口惑星に移り住む法令発議を決意。2056年、ついにADAMによって人口惑星「新惑星日本」が完成。しかし、その惑星の所有権を奪うべく、世界各国において大戦がはじまる。戦火に包まれる日本、各国の核に太刀打ちできる兵器技術もなく、使える資産全てを、アンドロイドを含めない日本人生存者全1億人を収容できる巨大宇宙船「OBIT」の作成に投資。当時の科学技術では、最高ペースでの開発、および完成までに一カ月を要さなかった。のち、日本人全員の人口惑星移住が1ヶ月以内に敢行される。その後世界大戦はアンドロイド技術を多用した人工知能戦に移り変わる。5年に渡る戦争の末、戦場に駆り出されたアンドロイドは1つの結論を見出す。

 「地球上の人間の全抹殺」

 それは、人類が最も恐れた、技術特異点の最終局面である。人間の消滅こそが終戦の近道と計算を割り出した各国所有のアンドロイドが謀反を起こし、次々と大国が滅ぼされていく。日本人はそれをはるか空から俯瞰することしかできなかった。戦争は、思いがけない終焉、「地球上人類滅亡」を導いた。

 日本人はその後「新惑星日本」にて文化を再構築することに成功。しかしそこから飢餓問題、感染症問題などが並列して起こり、人口は1200万人となる。地球上人類滅亡から5年後。 

 これは、過去の愚者が残した罪を、無垢な少年たちが自らの命を投げ捨て、贖う物語である。


 「我々は気高き牙でなくてはならない。それは果てなき葛藤を経て研ぐことが可能な人類最後の凶器であり希望だ。」

 父が残したその言葉は、僕を戦場に駆り出させるのに十分な理由だった。

西暦2062年、日本は、ADAMが作成した「新惑星日本」の限界を察知した。度重なる飢饉、感染症。それは、日本人がもう一度地球に帰還することを望むに妥当な災禍であった。

「我々人類は、我々が産み落とした賢者を失望させた。地球に我々の居場所は無い。一度自らの惑星を放棄した我々が、再度新たな居場所を放棄し、帰ってくるとするならば、あの賢者たちは我々が立ち入ることを許さないだろう。賢者たちはもう、我々の故郷で人間を越える文化を作り出した。」

 僕は地球で生まれた。物心もつかない頃に地球から逃げ去り、新惑星日本で10年以上の月日を過ごした。そして、眼前に迫る作戦、「地球奪還作戦」の戦士として、闘う決意をした者でもある。

「柊!招集だ。至急、訓練室Aに来い。」

 自室で電子科学を学習している中、声がかかる。僕は地球奪還部隊、通称「Lofty Fang」の一員として来るべき作戦の為に訓練兵として、新惑星日本中心都市、新東京にある「新東京ドーム兼訓練施設」にて日々鍛錬をこなしている。我々は12歳になると、この新東京ドームにて3年間の訓練合宿を行う。Lofty Fangに所属している人々は約1万人。その誰もが16~18歳の少年少女だ。それには理由があるが、またのち話すことにしよう。

「柊悠馬、入ります。」

訓練室では、主に対アンドロイド戦における訓練を行う。僕が所属している、牙3軍の軍長、石森健吾からの招集。それは、今年16になる僕への最終試験である。現に目の前には2体の動力オフのアンドロイドがいた。

「お前を呼んだのは言うまでもなく、今までの訓練成果を見せてもらうためだ。お前が3年ここでやってきたことが。我々の未来に必要なものか、無駄なものか、見極めさせてもらう。」

「・・・はい。」

僕は体を動かすのは特別好きなわけではない。子供のころは家に籠って本ばかり読んでたらしいし、今も勉強の方が楽しいくらいだ。しかし・・・

「・・・お前の場合は、結果が分かっているようなものだがな。」

「そうですか。」

最終試験のカリキュラムは、単なる疑似戦闘用アンドロイド2体との戦闘。補足だが、兵力としてアンドロイドを取用しないのは、シンギュラリティの到達及び謀反の再発を未然に防ぐためである。疑似戦闘用アンドロイドは意志を持たず、「目の前の人間を最善の行動で無力化する」ことだけを目的に動く。つまり、この機械たちに電気が通れば、即座に戦いは始まる。

「では始める。通電完了、合格条件はアンドロイド2体の無力化、および破壊。・・・開始。」

アンドロイドが目の前で顔をあげ、僕を視認。超高速で僕に走りかかる。

「・・・雷切丸、起動。」

ヴゥン!!という音が鳴り響く。対アンドロイド戦闘用兵器、通称「牙」。それには大まかに分けて4つの種類がある。

電撃の力で自身を強化し、素早い攻撃で無力化する、「電属」。

磁力の力で戦闘をコントロールし、力強い一撃で対象を粉砕する「磁属」。

光の力で対象の動きを抑制し、トリッキーな遊撃を得意とする「光属」。

熱力の力で鉄鋼で出来たアンドロイドの身体を焼き切り、前衛的な立ち回りが得意な「熱属」。

 この電磁光熱の4属性に加え、前衛武器、後衛武器の2種類、総じて8種の牙を使い分けて戦う。それが我々Lofty Fangの戦法である。14歳にして属性の適正を把握し、それにあった牙を使うのが定石だが、僕の場合は、「電磁光熱全てに知識が精通しているうえ、自身で新たな技術を追加することが可能。よって柊には電属基本武器、『雷刀』を与え、そこから発展を促すこととする」という特別処置を受けた。今の僕の牙は雷刀に磁力の力を付け足した2属性武器、雷切丸である。電子レーザーで出来た刃には、多量の磁力が含まれており、特殊な力を発揮することが出来る。

 高速で懐に潜り込み、僕の足を取ろうとするアンドロイド。そしてカバーするように追撃を行う体制でいる片方。僕は雷切丸を大きく横凪ぎしてから大きく後ろに下がる。軍長の隣にいる試験官の一人が僕に向かって叫ぶ。

「何を下がっている!!機械風情に後れを取るな!!」

 はぁ、これだから無能な大人は。まあ僕の雷切丸の“本当の力”は明かしていないもんな。ここで見せてやるよ。僕は横目に軍長を見る。彼は何かを期待しているような、そんな不敵な笑みを浮かべている。・・・ばれてるか、さすが軍長。

 アンドロイドが態勢を立て直し、僕の方向に向かってきた瞬間、2体それぞれの上半身と下半身が分裂し、そのまま動かなくなった。傍にいた試験官は何が起こったか分からず唖然としていた。

 「試験終了。合格だ。さすがだな。」

 「ありがとうございます。

 「・・・何が起こった!?この私には・・・何も見えなかった!何も!」

 無能くんが阿鼻叫喚。その声に軍長も呆れながら説明するように視線を送って来たので重々しく口を開く。

 「・・・攻撃のストック、僕はそう呼んでいます。自分が斬撃の動作を放った場所に、斬撃を“残す”。空中の粒子を電磁で刺激し、鋭利な刃物のような電磁波をそこにストックすることが出来ます。あとは、僕の思考とリンクして斬撃が発動、簡単な電属と磁属のかけ合わせです。」

僕の雷切丸でしかできない芸当だ。そしてそれを扱うのにも、相当の頭脳がいる。

「さすがだな、IQ300、かのアインシュタインと並ぶ頭脳の持ち主。柊悠馬。」

「・・・!ならば、こやつの武器を量産すれば、同じような兵力を用意することが!」

「お前はまだわからんのか。柊がやったことは、柊自身にしかできない牙の扱い方だ。確かに、“あれ”があればまだ可能かもしれないが、それでも彼の頭脳には追い付くことは出来ない。」

おほめに預かり光栄だが、「あれ」・・・とは。まあ合格したし、いつかわかるだろ。自室でまた勉強してよっと。


こうして僕はその日、正式なLofty Fangの一員として構成員に配属され、ゆくゆくは地球奪還作戦において、重要なアクターを務めることとなる。

 

次回はまた気が向いたら作ります。

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