同居人の誘拐犯の様子が何故かおかしい
今日のハーネスはムーミンです
・・・・・あれ、あたし、寝てたの?
ソファから起き上がって部屋を見回すと、部屋がかなり綺麗になっていた。
「どういう風の吹き回しよ。これは」
「別に」
ポケットに手を突っ込んで足で雑巾をかけているハーネスに話しかけると、ハーネスはあたしに背中を向けたままぶっきらぼうに答えた。
「あれ、そういえば、あたし」
あたしは、今日のことが走馬灯のように襲い掛かってきた。
「あれ・・・あたしどうやって帰ってきたの?」
「さあ」
ハーネスは、つっけんどんに答えた。
「ハーネスはどうやって帰ってきたの?」
「てきとーに」
「ハーネス、どうしてそんなに不愛想なのよ」
「べつに」
ハーネスは、バケツをわざわざ壁際に持ってきて、あたしに背を向けて雑巾を絞っている。
なに!?なんなのよ!?言いたいことあるなら言いなさいよ!っていつもなら怒鳴っているところだけど、今はそんな元気がない。
「どうしたのハーネス、どうしてそんな感じなのよ」
「いつもこうだろ」
・・・そもそもどうしてハーネスが不機嫌なの?ねえ、どうしてなのよ。
普通ここはあたしがハーネスに対して不機嫌ならわかるわよ。
でも、なんでここでハーネスが不機嫌なのよ。
「ハーネス、あたしハーネスになにかした!?」
「・・・・・・・・・・」
無視だった。とうとう無視だった。
なんなのこの男は。どうしてこの男はいつもこうなわけ?
どうしてあたしがハーネスに気を使って話をしないといけないわけ?
『だあれ、あなた。あなたみたいな汚い子供は知らないわ。アリス?どうしてその名前を知っているの?』
『あたしがアリス本人だからよ!お母さま!』
『おい、なんだこの子供は。2人に近寄るな』
『いや!お母さま!』
『ちょっと、あんまり乱暴しないで』
おかあさ・・・・。
『人の目があるじゃない』
「・・・っぐっ・・・ぐすっ・・・どうしてあんたまであたしに冷たくすんのよぉ・・・」
「・・・・・・・」
あたしはとうとう耐えられなくなって涙があふれてきた。
この生活を始めてから辛いことばっかり。
・・・いいえ、そうでもないわね。前の生活でも辛いことは多かったわ。
泣き顔を見られたくなくてあたしは俯いた。
前方に気配を感じ、前を見るとハーネスが立っていた。
顔を見上げると、苦虫を踏み潰したような顔をしているハーネスがあたしを見下ろしていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・悪かった」
「え?」
ハーネスは、あたしの頭にぽんと手を置いて押しつぶすように力をかけてくる。
「な、なにすんのよハーネス!!」
「・・・・・・・・・」
ハーネスは、気まずそうにくるりとあたしに背を向けてバケツを片付け始めた。
あたしは、ソファから飛ぶように降りて、丸まったハーネスの背中をぱしっと叩いた。
「なんだよ・・・謝っただろ」
ハーネスは、すねた口調でそういった。
「雑巾絞った手であたしの頭に触らないでくれる!?」
「そうか!!!!悪かったな!!!!!!!!」
「それにそもそも掃除を足でやるってどういうことよ!」
あたしが床を指さしていうと、ハーネスはいつものように怒鳴った。
「肩が痛いんだわ!仕方ないだろ!」
猫ババから借りたものを全部ひとりで持とうとするハーネスから強引にほうきやはたき類を奪うと、あたしはハーネスと喧嘩しながら猫ババのところに掃除道具を返しにいった。
本日も読んでくださりありがとうございます。
今日はかなりゆるい話でしたが、こういうのもいいなとおもいます。
寒がりなので家では常にブランケットを体に巻き付けてサリーみたいにして生活しているのですが、今日知らないうちにお風呂にそのブランケットがあって、しかもそれで体を拭こうとしてしまっていたことに気付いてはっとしました。




