転生したら猫になっていた。
変更点などがあったので書き直しました。
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人間って不便だよな。
正確に言うと『人間の体』だ。
俺は会社の帰路で、レンガの壁に佇む黒猫を見てふと考えた。
猫は体が身軽だ。
耳は周囲の音を周波数単位で拾うことが可能、万能な耳を持っている。
なにより優れているのは猫に生えている毛である。
その毛は体をぶつけたりしても毛がクッションの変わりとなり致命傷を防ぐ事が可能だ。
また防菌や、防水作用もあり、皮脂腺からの分泌物によって、皮膚や毛の乾燥を防いで、水を弾く、細菌感染から体を守ることがてき、紫外線によるダメージを受けないようにする効果だってあるんだ。
そして断熱機能や、保温機能も備わっている。
何故、俺がここまで猫たいして熱弁したかというとだ。
…俺は生まれ変われるなら猫になりたい。
その瞬間だった。
俺の目の前に居る黒猫がレンガの壁から飛び降りた。 それだけならまだ良かった。
俺の後方よりトラックが走ってきている。
その放物線上に黒猫がいた。
「えっ?」
黒猫は車道から離れる事はない、いや、…離れることが出来なかった。
飛び降りたレンガの高さは俺の身長を170cmとする、恐らく190cmぐらいあるだろう。
あろう事かこの高さから飛び降りた結果、この黒猫は足をくじいたのだ。
トラックは徐々に迫っている。このままだ轢かれて死んでしまうだろう。
考えるより先に俺は全神経を足に集中させ助けに行った。
すぐ側の黒猫を俺は体で覆い腕で猫の体を持ち上げる。
ーーーー早く離れなきゃ。
しかし、遇然なのか、運命なのかそれとも神のいたずらか、あろう事か俺も足をくじいてしまうのだ。
「くそっ!!」
それでも助けたいと、俺は黒猫を抱きしめて、……。
その瞬間。
体がトラックに引きちぎられた。
俺は何の抵抗もなく、車に轢かれ死んでしまうのだ。
手に抱きしめていた猫は、大丈夫だ。まだ暖かい、良かった。コイツが一緒に死んでしまったら俺が助けた意味ない…ないじゃないか。
ヒューヒューと、真っ二つにへし折れ穴の空いた胴体から空気をが漏れる。
【猫又 遥斗の死亡を確認しました……】
なんだよこの声は…。
体中が痛いと悲鳴を上げて、いつしか俺の意識は途絶えた。
ーーーーーーーーー。
1章異世界へ
俺は死んでしまった。
あれだな。死ぬ時って、何秒かは意識があるものなんだな。
お陰様でかなり痛い感覚が襲った。
即死だったらどんなに楽だったか。
………。
てっ、何で俺、意識があるんだ。
あれか、死んだ後の走馬灯みたいな物を俺は見ているとか?、いや、感じているんだろうか?
そんなことを、思っていると
暗かった意識が覚醒した。
薄暗い空間に目が慣れてきたのだ。
森?当たりは木々が生い茂っている。
「何が起きてるんだ」
と声を出そうとする。
すると「ミャーミャー」と鳴るだけ。
あれ?そう言えばなんか視線が低い。
…俺はスグそこにある水溜りで自分の姿を確認する。
「ミャー?」
俺は、猫の姿をしていた。
「ミャーーーーー!?!?」
どういうことだ!確かに死ぬ前に猫になりたいと思ったが……何がどうなってるんだ。
考えても思考は追いつかず、とりあえず…今のこの状況を認めることにした。
にしても、なんか変な感覚。
肉球はプニプニして気持ちいのかと思ったら結構硬いというか猫目線ではそれほど柔らかくはない。ダンボールの硬さくらいだろうか。結構ゴツゴツして歩きにくい。
それに耳も周波数単位で拾う訳なのでなんか雑音が絶えないのだ。
なるほど、人間側からしたら便利なのも猫からしたら結構不便なんだな。
その時だ。
遥か遠方に人の気配がした。
ここにいても拉致が空かないと思い俺はその人に会うべく、歩くことにした。
ーーーーーーーーー。
古ぼかしい家があった。
木造で今に崩れそう、蔓草が纏っていて、どうにも人が住めるような家ではないが、確かに人の気配がする。
「ミャーミャー」
とりあえず声を出してこちらに気づいてもらおう。
その時だった。
家の中からコツコツとこちらに歩いて来る音がした。
「ここになんのよう?」
と半開きのドア開ける住人。
その姿は黒かった。
黒い帽子に黒いワンピース
容姿は20代後半くらいかな?
そして黒い長髪と黒い瞳が月明かりに照らされる。
「ミャー?(魔女?)」
女は珍しいものを見るような目でこちらを見つめる。
「見たことない魔物だわ。ここは魔力が充満していて普通の魔物ならばこの魔力を取り入れ過ぎて消滅するはずなのに」
は?消滅?魔物?
ちょっと良くわからない。
これは逃げた方がいいのか…そうしよう。
「ミャー!(逃げよう)」
その時だ。
光のようなものに体を抑えられる。
「ミ、ミャー?(な、なんだ)」
面白そうにこちらを見る女はまさに『魔女』だった。「『ミャー』しか喋れないのは可哀想ね。
『言語学習』」
俺の体を光のようなものが包み込んだ。
もしかして俺、消される?と思い、慌てふためく。
その光は俺の体に染み込んでいく。
ー何も起きない。
「今なにをやったんだ!」ってあれ?喋れる。
「あれ?俺喋れる?」
「そうしてやったんだから当たり前でしょ?」
コイツめちゃくちゃイイヤツなのか?
ーーーーーー。
俺は家に入り、ここはどこなのか。そして魔法という存在。
はたまたモンスターの存在を教えてもらった。
まず俺がいるここは
キャンドゥ・サークル(魔力領域)と呼ばれる
場所。高濃度の魔力が充満していて普通のモンスター、魔物や人間などは立ち入ることすら出来ない領域らしい。
俺が入れることが出来るのは魔女曰く、「私にも良くわからない、多分、あなたの体の持つ特性だと思う。」だ。
良くわからないらしい。
この魔女の名は「シャル・クリウムス」といって、ここの魔力の流れを管理する人、つまりここの番人のような人だ。
尋ね人が一切来ない場所なのでかなり暇だったそうだ。
あと、モンスターという存在。
ここの世界に存在するモンスターは様々、
ゴブリンや、オーク、ドラゴン、エルフなどモンスター、そしてまだ発見されていない種類のモンスターもいるらしい。
最後に魔法という存在だ。
魔法はおよそ400年前に存在を知り、
魔法を使用するためには、体内の魔力とそして詠唱方式を連動させ、それを実体化させるために魔法陣を作成する必要がある。
しかし、シャル・クリウムスはその1連の動作を術式として体に刻んでいるためそのまま詠唱無し、魔法陣無しで魔法を使うことができる。
そして幾多の魔法方式はシャル・クリウムス自信が発明しているらしかった。
コイツ何歳なんだよ。
「私の話相手になってくれてありがとう。これは感謝の印よ」
そう言って俺に渡してくれたのは金色の金剛石に埋め込まれた蒼空に輝く石。
首掛けがあるのでネックレスだろう。
「あ、ありがとう」
そう俺が言うとニッコリと微笑むシャル・クリウムスだった。
結局アイツはなんだったのだろう。
そしてこの蒼空の石はなんなんだ。
俺は考えたが結局答えは出てこずに、シャル・クリウムスの家を後にしたのだった。
第2章変身
俺が今いるのは魔法領域『キャンドゥ・サークル』を抜け待っていたのは広大な湖だった。
青い空に浮かぶ雲を映し出す程にその湖は澄み切っている。
湖に顔を見せるとそこには魚のような…しかし魚ではない生物が群をなして泳いでいる。
まぁー俺がいいたいのは、そのくらい湖は綺麗に見えたということだ。
猫の好物は魚だというが数日間なにも食べていないこの体でもまったく食欲が湧いてこない。というよりも腹が空かない。
どうやらこの体は何も食べなくてもいい体なのかもしれない。
その時であった。
俺の猫耳にノイズが走る。
何者かが俺に気づいて接近している。なぜならそのノイズを良く聞いてみると、地面に強く叩きつけるような足音が聞こえたから。
この足音から推測すると推定3m程の明らかに俺の体よりも図体がデカイ。
そしてその足音は俺に急接近しておりやがて湖の反対側の森から姿を現した。
これは
「DRAGON!!」
推定3m?馬鹿を言え!
明らか数十m、俺の予想を遥かに超えていた生物がそこにいた。
黒光りする鋼鉄より硬そうな鱗。そして殺されそうな漆黒のように怪しく灯る瞳。
「俺は死んだかもしれない。」
俺はその姿を見るとその龍は翼を強く広げ、そのまま翼を羽ばたくと俺の四方に高い渦ができる。
その時だった。
俺の首元に掛けられている蒼空のように輝く石が光出す。
「な、なんだ?!」
その時だった。
時間が止まったのか分からないが龍の動きが静止した。
そして
『うむ、絶対絶命だな。』
石が喋り始めた。
俺は目の前で起きている事態を把握するまでそう時間はかからなかった。
「石が…え?」
『そう不思議がるではない。』
そう石が言うがそう思いはいられなかった。
コイツは一体なんだ?
俺は幻でも見ているのか?
『お前今、力が欲しいんだろ?私の力を使え。』
力?
『私の力である魔力増加《 エネルギー・ブレイク》があればこんな奴なんて、余裕だ』
コイツが力を俺に貸してくれると言うのか?確かにこの状況を打破するためには…
かけてみてもいいかもしれない。
「分かった。お前の事は後で教えてもらう。」
するとこの石は更に輝きを纏った。
そして一言。
「あと特典だ、お前に人の体を渡す。
その体の特性も引き継ぐからなんの問題もない」
俺の体の特性?
そう言えばシャル・クリウムスも同じような事を言ってたな。
だが人の体にまた戻れるなら…
「分かった頼む」
そういうと俺の体が輝き出す。
青白い光は次第におれの体に浸透していき意識が止まる。
意識が再覚醒されたのはほんの数秒程で俺の体は『黒猫』の体ではなく。人間の体になっていた。
手足が生えている。
胸が若干だが膨らみがあり、俺の股間にあったものがない。
また、お尻のところ当たりから長細い尻尾のようなものが生えており、俺が意識するとその尻尾が動くのだ。
頭部には柔らかい正三角形の『猫のような』耳が2つ付いていて頬の当たりには数センチ程の長い髭が両側に3本生えている。
これは猫だ。
美少年というよりは美少女と言うべき顔で整われていて。
黒く艶のある肩まで伸びたロングヘア、黒く膝までの短いスカートが風でヒラヒラと踊り、上着も黒のレースのような服である。
全身が黒で埋め尽くされており人間の体というか猫人間の体になったようだ。
もちろん肌は人間の肌のようで濃い毛は生えていない。
先のシャル・クリウムの体型を小柄にしたような感じだ。
『衣服は特別だ。あと猫の特性。環境適正と衝撃緩和と聴力強化、視力強化、脚力強化、嗅覚強化に私の能力である『魔力増加』を託したわい。』
サービス精神の旺盛な石ころ…いや宝石さんだ。
「おう、ありがとう。」
俺は猫人間になった体を手足を動かしたり、耳を澄ましたり、して確認を行った。
脚力は加減して飛んでも3mくらいぴょんと浮いた。
視力もかなり遠くなものでも見えるほどあり、体の底に満ち溢れる説明使用の無いただそこには確かに『ある』魔力。
それもこれも全てこの宝石さんがしてくれた事だと改めて自覚した。
そして静止した時間は再び動き出し俺と龍の戦闘が始まった。
龍は雄叫びを上げると四方の竜巻はさら威力が増していく。
竜巻の高さは目算14mであり、恐らく本気で飛べば飛び越えられる自信がある高さであった。
俺は足の神経を集中させて一気に解き放った。
軽々と竜巻の高さを飛び越えることができる。
そして俺は体内に宿る魔力を手中に集中させると俺の手にはまた青白い光が集まり始めた。
落下先には龍がいて、俺はそのまま勢い任せに龍の首を引っ掻くと
その首筋に血が流れ
グガォーーーー。
と悲痛の声に飛び去って行くのであった。
龍が去るのを眺めているとふと我にかえり先ほどの疑問をぶつける。
「そういえば、お前は…」
と続けようとすると宝石さんは
『私か…私の名はギグス。聖宝石じゃ。』
「聖宝石?」
『そう。魔法石と違い高濃度の魔力域内で作られた純度の高い魔法石だ。通常なら主を見つけてから数週間でめざめるのだがな。オヌシの持つ環境適正で少しばかし早く目覚めた。』
どうやら俺の元々ある能力の効果によって早く目覚めたようだ。
聖宝石…恐らく魔法石とは全然違う出力を出せる石なんだろう。
俺はなるほどと頷くと、ギグスは続けた。
『私達、魔法石、聖宝石は主を見つけなくてはなんの役にも立たないただの石に成り下がる。
…あと魔法の使い方も後で教えてやろう。
まぁ簡単に習得できるものでは無い。
少しばかり時間はもらうが…
感謝しろ』
いちいち上から目線からの物言いだな。
しかしこの魔法の存在する世界で魔法なしって言うのもな。
ギグスの存在は正直有難かった。
長い時間ではあるが
魔法の使い方も指導してくれると言うので尚更だ。
俺は快く…とはいえないがその提案に乗ることにした。
「よろしく頼むよ…ギグス俺の名は…」
そうだな…俺の名は
「エリフだ」
とでも名乗っておこう。
……
そして俺は今から約1年という長い時間、魔法の出し方をギグスからレクチャーしてもらうことにした。
3章 修行の成果
あれから数週間程たった。
本来なら1年や2年、もしかしたらもっと時間が必要だったのだが、
俺の能力である環境適正の効果によりいち早く魔法の行使が可能となった。
しかしこの数週間は俺の人生で一番頑張った時期だったと言える。
理由は2つある。
1つ目はギグスのレクチャーが思ったよりもキツかったということ。
ギグスの持つ魔力を大量に俺の体に注ぎ込まれ何回も気絶してしまった。
これは魔力供給の過剰というものらしい。
人間ならば酸素を体内に取り込むのだが単純な話、人間の体に大量の酸素は返って毒になる。
魔物や魔法石もそれは変わらない。自分の持つ魔力供給量が一定値を超え、大量の魔力が注がれると毒になる。
じゃあなぜこの特訓を行ったのかというと。
大量の魔力供給が行われると同時に体内に注がれる魔力を抑えようとして魔力蓄積量がそれに従って一時的に増加する。
これを何回も行うと魔力蓄積量も自然と増えていくということだ。
あとは魔法を使う練習なのだがこれもかなりきつい。
魔法を行使する際に体内の魔力と媒体の魔法石を使って魔法を放つ訳だが。
当初は魔法を使ったあとに船酔いみたいな感覚が起こる。
小さい魔法なら問題ないのだがある程度強力な魔法となると話は別だ。
これが起こる原因は魔法を行使した際に生じる魔力減少(※体内の魔力が魔法を使った際に一定量減ること)に影響して起こる自然魔力供給(※体内の魔力が減少した際に自身が回りの魔力を取り込む現象のこと)が原因。
簡単に言えば、強力な魔法程使うと一定時間、船酔いに近い現象が起こり動きなくなる。ということ。
2つ目は、だが。
今まさに起こっている事だ。
魔法を使う練習をしていた時だった。
俺が中位魔法、雷轟双槌
を眼前の湖に放った時だ。
感電した小魚のような魔物と一緒に声を荒らげながら出てくるのは巨大な魚竜の姿だった。
数週間前のドラゴンの倍以上の大きさだった。
はっきり言ってしまえばこんなことを考えている暇などない。
俺は何故こうもドラゴンの類いと会うのだろうか。
魚竜は俺のことを視るとそのまま突っ込んで
くる。
魔法を使ってもいいのだが先程放った弱点属性である中位魔法雷轟双槌が効かないということは今の俺の持つ魔法では何も効かないということになる。
「逃げよ…」
俺は脚力強化で強力された足で一目散に逃げる。
『 あの魚竜は恐らく上位クラスの魔物 じゃ』
上位クラスの魔物?
「強いのか?」
『 まぁ少なくとも、今のお主では勝てるような相手ではないな』
やっぱりか。
「知ってるよ。弱点の『 アレ』が効かないんだから…」
『アレ 』とは雷轟双槌のこと、ゲームなんかではお約束の弱点はこの世界でもあるらしい。
例えば炎属性には水属性が効く。
しかし水属性と雷属性は雷属性が有利になる。このようにいくつかの弱点があるのだ。
威力で補えることもあるのだが。
俺の使った中位魔法雷轟双槌は中位魔法と聞くとそれほど強くない魔法と思われがちだが一般魔法師が使う魔法の限界は中位魔法とされている。あくまで『一般的 』に、な訳だが。
そしてその一般的に。は俺も例外ではない。
俺の今使える最高の魔法である雷轟双槌を放ってもピクリともしない姿を見ると、逃走以外の手段は思いつかない。
俺が思考を巡らせている最中にもあの魚竜は声を鼓膜が破れる程に鳴らしながら迫っていた。
俺が逃げようと前を見た時だ。
「っ!…」
これはっ!?
幾億にも及ぶ幾何学的な模様が空間全体に張り巡らされていた。
これは魚竜が魔法を使い、自身を中心に一定の距離
に円になるように魔力結界を作り出しているんだ。
なぜ結界と分かったかというとこの数週間の間にギグスから既に教わっていたから。
ちなみに少しなら俺にも作ることが可能だ。
しかし俺なんかの作る結界とはまるで違った
。
「やばいな。完全に閉じ込められた。」
俺が現状況に苦渋しているとギグスはそんな焦っている俺を見て声を出す。
『 可能性はある。』
可能性…だと…?。
『 これはあくまでこの領域結界から抜け出す方法なのだが…』
…俺は黙ってギグスの説明に頷く。
『 我はここ数日間お主の持つ能力、環境適正を調べていたのだが…とその前に』
ギグスに青い光が灯ったその瞬間、空間が止まった。
俺が初めてギグスと出会った日に起きたあの現象だった。
俺が目をぱちくりしているとギグスは
『 これは我の能力で時間を停止させたのじゃ。』
なんだよそのチート能力……まぁいいけど。
『 そう…お主の持つ環境適正は五感で触れた音や、その物体やそのものの性質に対応出来るようになるようだな。……例えばだがお主は魔法を使えるようになりたいと頑張って修行していたな?通常ならば1,2年かかる訳なのだがお主の環境適正の効果によって魔法を行使するというその感覚がいち早く対応出来たのだよ。』
なんだがギグスはくどくどとわかりやすく説明しているようだが話の魂胆が分からない。
それと今の状況の打破とはどういう関係があるのか。
「そんで…?」
『まぁ、我にもお主の能力の全容は分からんのでなんとも言えないのだが… 』
数日間調べたんじゃないのかよ。
俺は頬を引き攣りながらもギグスの説明を聞く。
『あの魚竜の展開した領域結界に触れれば抜けられるのではないか? 』
「なんで疑問形なんだよ」
『 だから我にもお主の能力の全容は掴めていないと言ったじゃろ』
「これで魚竜に食べられたら。お前を恨むからな」
そもそも追い詰められたのは俺の力不足なわけなので恨む相手はお門違いなわけだが。…
『 仕方なかろう。お主のような奇特な力は初めて見るのだ。』
とりあえずだが、ひとつに俺の能力である環境適正で奴(魚竜)の展開した領域結界に触る。
まぁ、触ると簡単に言うが俺の環境適正の効果が出るまで時間はかかるし効果が出るまであの魚竜が何もしてこないとは言いきれないので魚竜の動きも気にしながら、この領域結界を触る訳だ。
ちなみにだが時間停止しているこの状況で触ってもどういう訳か効果はないらしかった。
俺は先程ギグスにされた説明を再度確認した。
そうして時間は再びあの魚竜のけたたましい声と共に動き始めた。
4章 不具合報告
魚竜と対峙してから小一時間経過している訳だが領域結界の適正効果はまだ発生していない。
そろそろ俺の体力の方も危なかった。
「まだ効果が出ないのかよ!」
『 すまぬ。我としたことが……』
魚竜は水属性の魔法。水圧縮砲
を使おうと術式を描いていた。
水圧縮砲は水を圧縮させた
光線で、見てから避けるではまず避けられない。
この魔法は追加効果で障壁貫通(魔法障壁を貫通)というおっそろしい効果まで付いているのでまず防ぐことは出来ないらしい。
「やばいな。。ギグス、手はないか?」
『 うむ。…本当にすまぬ。…』
その時だった。
突如俺の脳内に声が聞こえた。
【個体IDエリフを確認しました。
能力である環境適正はバグによる間違いでした。
よってこれより転生特典を行います。。
まず
黒猫から鬼猫へ進化します。
そして…聴力強化、視力強化、脚力強化、嗅覚強化を統合し身体強化に統合進化しました。
能力、環境適正を消去し能力付与に移行します。
情報分析…物体など鑑識可能なものならば
その物の性質、構成などを知ることが可能。
環境最適解…環境適正の上位能力。環境適正は触れた時に効果が徐々に発動してくるが環境最適解は能力を行使する意思により発動する。効果速度も速い。
最後に転生支援を送り致します。
猫之千恵…この世界に存在しうる魔法の行使が可能になります。
また新たに魔法を作成することが可能です。
以上で報告を完了します。快適な………】
な、なんだ今のは。
無機質な声が頭に響いたのだが…なにかとんでもないことを言っていた気がする。
ギグスには聞こえていないらしい。
魚竜の水圧縮砲の術式の構築が完了したらしい。
今まさに放とうとしている。
『 すまぬ。我の役不足ゆえ…』
ギグスの言葉など俺の頭に入って来なかったそれよりも…俺はたった今授かった猫之千恵による能力に一か八か命を掛けようと思った
魚竜の口から放たれた水属性魔法水圧縮砲は俺に目掛けて飛んでくる。
…
今だ!!
『多重障壁』
これは通常の魔法障壁を幾重にも重ね掛けしただけの壁だ。
水圧縮砲の能力付加の障壁貫通が働いているのか多重結界もあと数枚程で突破されてしまう。それを見てギグスが『 やつの魔法には障壁貫通の効果が…』
など言っているがもちろん忘れている訳では無い。
予想通りだ。
「環境最適解使用!」
すると頭の奥から声が聞こえる。
【⠀環境最適解をどのように行使しますか?】
「俺の展開した残りの魔法障壁に水圧縮砲の『 障壁貫通』を対応させてくれ。」
【⠀了解しました。】
……瞬間。最後の障壁と奴の水圧縮砲が激突した。今まで通りならここで俺の障壁は紙同然に貫かれるのだが…そんなことは無かった。
障壁と水圧縮砲が鍔迫り合いをしているの見計らいその間に俺は領域結界も解除させ魚竜との戦闘を回避した。
『 お主今のは……』
ギグスが俺の変化に気づいたのかは分からないが今は後回し。
俺は身体強化を使い魚竜との距離を離してそのまま行く宛もなく去るのだった。
後で聞いたのだがあの魚竜はあの湖の主だった。
そもそも最初に俺が雷轟双槌を打たなければこのような事態にはならなかったので悪いのは俺の方だろう。と自分で自己完結した。
これから行く宛もないので自分の新しい能力を確認しながらゆっくりと旅をしようと思う。目的もないからね。