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夜会ー3

 私が主人公のローザです。


 何故でしょう。今そう言わなきゃいけないような気分になりました。素敵な性格の令嬢達を撃退して、何か滾ってたんでしょうか。


 足止めを食らっておりましたが、気を取り直して、ベスを探しに行きたいと思います。

 そう、エリザベスちゃんと愛称で呼び合う仲になったのです!


 彼女は「リズって呼んで」とか、しゃらくさいこと言っていましたが、それでは彼女に似合い過ぎるのです。

 美人故の取っ付きにくさを解消する為にも、私は別の愛称を提案しました。

「ザベスはどうかな」


 その時の彼女の顔は、物凄いものでした。呪われそうというか、呪われてそうというか……。そういうのに限って、夜寝る前に思い出すんですよね。勘弁して欲しいです。


 互いに妥協し合って、ベスに決まりました。私はロゼです。元が『ローザ』と短いので、アレンジし甲斐が無いとベスがブツクサ言っていましたがスルーです。


 会場を見渡しますが人が多く、中々見つけられません。ん?

 グルンと後ろを振り返ると、本日のパートナーであるダグラスが、中途半端に片手を挙げて立っていました。


  「声を掛ける前に気付くの、止めてもらっていいかな」疲れたように言います。手は肩でも叩こうとしていたんでしょう。

 ですがお断りです。


「だって背後から近寄ってきて、しかも体に触れようとしたでしょう」ムリムリと手を振ります。

 幼少の頃、柵から脱走する私と捕まえようとするメアリーとの攻防により、勘が働くようになったのです。逆にメアリーは対人用の罠を開発して、いまではエキスパートと言える腕前です。


 実は王都に来る時、逃げ出した動物や人を捕まえたのは、彼女の追跡技能と罠の成果なのです。

 貴族の仕事は人を使い、指示する事なので、手柄を横取りした訳ではありませんよ。

 私達の切磋琢磨を見ていたダグラスが、アイリーン様の捜索をメアリーに依頼したのも頷けます。


「お前はもう野生に帰った方がいいんじゃないか」

「私は一度も親の庇護から離れたことのない、人の手に飼い慣らされた生き物ですよ」

「毎日、野にいたけどな」

「貴方も毎日いたけどね」


 一瞬詰まった隙に話題を変えます。このままでは分が悪いですからね。

「ベスを探しているんだけど見なかった?」

「え? ああ、あの美人。私のいた方にはいなかったな」

 男が首を傾げても可愛くないですよ。


「好きな人がいても、やっぱり美人は気になるものなんですねぇ」


「えっ?」

「えっ?」

「なんで……!」

 みるみる顔が赤くなっていきますよ。ついマジマジと見てしまいます。


 頭に血が上ると言いますけど、これって本当に上っているんですかね。頭に血が集まったのなら他の部分は冷えているんでしょうか。

 それとも血管が拡がる? 血流?


 真っ赤になって口をパクパクさせているので、自分の勉強不足が露呈するようなことを考えます。考えるだけだからいいんです。

 彼は漸く息を整え、口を開きました。


「こんな所にいたの!」

 ベスです。私は普通の所にいましたよ。


「ベス! 見つけてくれて良かった。探してたのよ」

「貴女達、二人揃うと目立つから見つけられたのよ」

 そう言ってニヤニヤしながら私達を見比べてきます。淑女らしくないです。


 挨拶を交わす二人を見ながら、先日見かけたヤマダ様を思い返します。

 ダグラスとリチャードの他にも、三人の見目麗しい男性を侍らせていました。


 実は顔面偏差値はともかく、そういう方は他にもいるのです。

 ですがヤマダ様の評判が良くないのは、やはり見た目が日本人好みの可愛さだからかなぁと思います。


 この国の基準でみると、ハッキリ言って幼いんです。子供です。子供が夜会に来ているのです。

 それでいて年相応のあざとさがあり、つい眉をひそめてしまうのです。


 それに比べると、目の前の二人の、なんとお似合いなこと。

 なんでこっちを選ばなかったかなあ。


 挨拶が終わったようです。ベスがこちらを振り向きました。

「貴女に話があったのよ」

 私もです。


 お先にどうぞと仕草で示されます。

 では私から。

「お針子さんを紹介してほしいの。誰かいい人いない?」

「……紹介するのは構わないんだけど、どうしたの? 新しい服を作るの? お母様のドレスを手直ししていたんでしょう? メアリーは?」

「そのメアリーが居ないのよ」


 そう、侍女兼メイド兼料理人兼罠師のメアリーは、針子としても優秀なのです。


 そんなスーパー侍女の彼女がいなくなり、ダグラスの家から代わりに送られてきたのは、普通の優秀だろうと思われる侍女です。

 メアリーの抜けた穴を補えないのは仕方ないですが、仮にも主人の私に、髪を結いながら「自分の技術では気品までは補えない」とか、化粧しながら「見せかけでも、なんとか坊っちゃんに釣り合うようにしてみます」なんて言ってくるんですよ。

 本当のご主人様の評判の為にも、少しは遠慮しましょうよ……。

 

 今は殆どドレスの着付けでしか関わりません。

 背中のボタンやリボンを留めるのにどうしても人手がいるためです。


 そこで穏便に帰っていただくためにも、前開きのドレスを用意しようと思ったのです。


 後ろはそのままで、前の切り込みは隠しボタンや当て布・装飾で目立たなく。ただ、これを可能にする技術が足りません。


 この国では飾りボタンや飾りステッチなど、見せる文化が発達している分、隠すという発想があまりありません。

 ですから、隠しボタンというアイディアを売って、格安で仕立て直して貰おうと思ったのです。


 初の転生チートです。ショボいです。


 メアリーの件も含めて事情を説明すると、ダグラスはベスに滅茶苦茶怒られてました。



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