エイリ
芽吹き
あれはもう十年以上も前
土の中奥深く、種がようやく芽を出した
私はその芽であったのだ
あれはもう十年以上も前
しかし、昨日のことのように思い出される
悪夢のように
あるいは
希望のように
暗黒に照らし出される赤い光
異様な輝きを放つ灯の下で
悪を垣間見た男が出刃包丁をさばく
まな板の上の彼女はざっくりと叩かれ
男の青い作業着が返り血を浴びる
残酷な男の顔は興奮で満たされる
ぎらぎらと脂がのって
ひとのものではない目の光
顔全体が張り詰めたようにつりあがり
笑っている
鬼か狂人かとの形相に
私はただ茫然と立ちすくみ
美しい、と漏らしていた
血まみれの男の手で顎をぐいと抑えつけられ
からだの半分を切り落とされ
内臓をもぎとられながら
彼女は口を開けたまま
目はあらぬ方向を見続けている
血の臭いを嗅ぎつけた蚊どもが
大勢やってきては
男のからだじゅうに吸い付いた
私の目は赤く染まる
私だけが感じることのできる恍惚
ここはやみすら寄り付かない
土の中の奥深く
誰も知らない暗黒の場所
決して陽に当たることのない場所
そこで種が芽を出した
私の命がはじまったのだ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
エイリはひとり、暗黒のなかで赤い光に照らされていた。
香が炊かれ、煙がくゆっている。
もうひとり、赤い光に照らされたモノがいた。もう「ひとり」とは呼べない、人であった物体である。
ろうそくの灯は決して赤くはなかった。が、エイリの顔が紅潮して赤く見えただけである。そしてそのモノはその体液によって赤黒く見えているだけであった。
そのモノが生前どういう名前でどういう性格だったか、どういう体格をしていたか、いまのエイリには関係ないことであった。エイリは赤い目をして両頬をぎらぎらと吊り上がらせながら、肉体の部品を検証しているだけである。
その肉体にはからだじゅうに多数の傷があった。エイリにとって過去にいちどだけ見たことのある傷跡であった。
喰いちぎられた部位が少ない。にもかかわらず体液が吸い取られている。
なるほどこれは獣のしわざではない。
人を喰うやみひと。
肉より体液や粘膜を好むのか。
しかし粘膜が多いはずの目が片方残っている。口腔も同じことがいえる。表面の傷跡は痛々しく残っているが、舌は喰われていない。
そして両足。傷はあるものの上半身ほどではない。
歩けるように、見えるように、発声できるように。
これは意図したものだ。
しかも父さんはいった。
このからだにはやみひとが入り込んでいなかった、と。
いままでの研究では呑まれたからだはやみひとに乗っ取られる、ということが推測され、それはほとんど確信の域に達している。
つまりやみひとの意識体を入れず、人を喰うやみひとにからだだけを襲わせ、半死のまま里へ返し、なにかを発声させるということが意図されている。ここまで無残な状態にしたのは、空人に恐怖を与えるのが目的か。
こんなこといままでなかった。
絶対的存在が現れた、としか思えない。
それはやみひとの意識体か、それとも未知の意識体か。
いったい、なにものなのか。
・・・ここまでか。
これから先は父さんの仕事だ。
それにしても、これだけ体液を吸い取られてよくも下山してきたものだ。
「ナツイだから、かしら・・・」
エイリは思わず発した自分の声にはっとした。そしてみずからの声を懐かしむように発声を続けた。
「そう、あなたはナツイだったんだわ」
エイリは診療台に横たえられたモノをはじめて「ひと」の目で見た。見るに絶えず、上から無造作に布をかぶせ、その場にうずくまった。ろうそくの灯がぐらりと揺れた。
ナツイは祓い師としての命を全うすることを決め、ガクウのもとでガクウのために生涯をささげた女性であった。ナツイの気力と根性にはガクウも一目置いていた。
エイリは小さい時からナツイにかわいがられてきた。エイリの真の悩みをナツイが知ってはわけではなかったが、ふさぎ込んでいるエイリをいつも慰め、姉のように接してくれた存在であった。
―――死んだものはそれまでだ。悲しむのではなく研究することに意味がある。
父のことばを胸のなかで唱えながら、よろよろと立ち上がった。
そのとき、かぶせられた布の端から右手の甲が見えた。腐敗が始まってはいたが見覚えのある手の甲であった。
ぶかっこうな浅黒い骨ばった関節。
(その手で私の頭を撫でてくれた)
慌ててエイリはその手を布で隠した。ろうそくの灯がまた揺れた。エイリは唇をぐっとかみしめて灯の動きを見つめた。
(私はまたここにいる)
エイリは赤黒く染まったわが手を眺め、嘲笑した。
エイリはガクウの娘である。
美しい女性であった。ガクウの長女であり、十七歳。肌の色は白くねっとりとした艶をもっていた。睫が長く瞳が大きい。その目でじっと見られると同性でもどきっとするほど強い視線を持っていた。色気がある。
エイリは能力者でも祓い師でもなかった。が、優秀な医師であった。ガクウの血をまともに引いたのであろう。幼いころから医術を学び、その技量はガクウ以上であった。ガクウも感嘆するほどの集中力と技量をもち、まわりもガクウの後継者として認めていた。
しかし、エイリ本人の意思は違っていた。
ガクウも一目置く優秀な医師でありながら、エイリは医術の道という業から抜け出したいと常に思っていた。力が認められるということはその道から外れられないということだ。エイリは自分の運命を嘆き悲しんだ。が、人体が目の前に置かれるとさきほどまで悲しんでいたことさえ忘れ、夢中になった。エイリが扱う人体には命はなかった。ガクウから定期的に与えられる亡骸である。
そんなエイリの精神的支柱は、母アキであった。
暗黒の場、研究棟。この棟の中に長くいると、もう二度と人としての生活はできないのではないかという不安が常につきまとった。その不安に溺れ、暗黒の場にとりこまれ、外に出ることさえできなくなる。そのうち堕ちていくようなその感覚が恍惚感に変わっていく。
そういうとき、きまって母がきた。あの重い扉をやすやすと開け、太陽の光と共に入ってくる母。時にガクウやエイリさえ拒否する暗黒の領域は、あっさりと母の力に屈した。色黒で丸い顔。大きく黒い瞳が闇の中で自ら光を放って燦然と輝き、太く温かい手がエイリの手をぐいとつかむ。
そして母はいうのだ。
「エイリ、ご飯だよ」
エイリはその瞬間、人に戻ったことを認知し、からだが熱くなった。そしてどうしようもなく嬉しくて、どうしようもなく切なくて、大声で泣き始めるのであった。
「ご飯食べてないから泣きたくなるんだよ。父さんもあんたもあきれるったらないよ」
母はそういってエイリをひょいっと抱きかかえ、すたすたと外に出た。母の温かい腕と厚い胸に包まれて「ああ、私は泣きたかったのだ」と気付き、感動にうち震え、エイリはわんわんと泣き続けた。母にしがみついて泣いているだけで簡単に外に出られた。
その度に、母さんは太陽のような人だと思ったものだった。
(母さんがいつも助けてくれた)
しかし、母は死んだ。病死であった。ガクウはアキを助けることができなかった。
それからのガクウはますます人体の研究に熱を入れた。村長としての仕事を持つガクウの代わりに人体の研究に携わるのは、とうぜんエイリであった。もはや暗黒の領域から助け出す太陽の光はなくなった。暗黒の場は誰も侵すことのできない聖域と化し、エイリは十分に堕ち、そのことに悦びを感じた。母がいなくなったから、存分に研究ができてかえってよかったのではないかとさえ思った。
そんな自分は病気なんだとエイリは思った。幾度も自分の命を断とうと思った。しかしエイリにはできなかった。自殺は空の神が禁じている。呪われた命と知りながら、エイリはお空さまを裏切ることはできなかった。
だったら。
やみに呑まれることを望み、何度も真夜中の山奥に入り込んだ。別にやみひとでなくとも良かった。獣の餌食になってもよかった。そうすれば私の命は空の国の一部となる。
しかし、その計画はことごとくうまくいかなかった。南山の山奥には獣、やみひとも多くいたが、「やまんと」も多く棲みついている。獣ややみひとに襲われそうになると、どこからともなく「やまんと」がやってきてはエイリを助けるのであった。
(理由はわかっている。あのときの胎児)
どこまでも呪われた命であることを痛感して生きるしかなかった。
エイリは十五歳になるまで毎日を朦朧と生きていた。医術に携わる時間以外は。
しかし、エイリにとって転機が訪れた。
サガンとの出会いであった。
サガンは貧しい農夫の家に生まれた長男であった。南麓村では畜産を営んでいる家庭も多いが、貧しいものたちはほとんどが農夫であった。生産する穀物や野菜などは、家族と家畜に食べさせるだけで精いっぱいであった。その庭で何頭かの牛や山羊、馬などを飼い、育て、暮らしに困っては裕福な家に売って生計を立てていた。
エイリが性懲りもなく夜の南山に入っていたころ、やみに襲われようとしているエイリをサガンが助けたのであった。サガンは祓い師ではない。しかし能力者であり、やみの出現を察知できた。能力者であるものが必ずしも祓い師になるということはない。祓い師になるためには村の学校に通わねばならず、その後も中央に通う必要がある。それは家計に余裕のある家の子だけができる。
サガンはエイリと同じ年の少年であった。エイリがあの有名なガクウの子で、優秀な医者などということは全く知らず、怪我をしたエイリを献身的に看病した。サガンには母親がいた。二人は懸命にエイリの面倒を見た。サガンもサガンの母もどこかエイリの母アキに似ていた。素朴で明るく、自然とともに生きていた。彼らは温かかった。これが「家族」だと思った。
エイリは自分の身分を隠し、サガンの家に居ついた。いままでの自分を捨てこれからやり直せる。そう思うと胸が躍った。毎日が新鮮で楽しくて、貧乏な暮らしであったがこころが満たされていた。生まれてはじめて「ひと」としての平凡な幸せを味わった。
そうして一年後にサガンの子を産んだ。エイリは「家族」とともにひっそりとささやかに暮らしていた。この幸せが永遠に続きますようにと毎日願った。毎日、毎日。そう、常に願わなければ壊れてしまう、はかない、危うい幸せ。
エイリはこの幸せが続かないことを心の奥底ではわかっていたのだろう。
果たしてエイリの幸せは続かなかった。サガンに出会って一年半ほど経ったある夜、エイリの家族はやみに襲われた。その夜出現したやみは、能力者であるサガンにも察知できない奇妙なやみだった。通常は遠くから徐々にやみが迫る気配がするものだが、そのときのやみひとは突然家の中にあらわれ、サガンとその母を呑み込んですうっと消えたのである。エイリがやっと手に入れた平凡な暮らしはあっさりと崩れた。
そのころ、ガクウはエイリを探し当てた。赤子を抱えた若い寡婦を、父は当然のことながら我がもとに呼び寄せた。父ガクウのもとに身を寄せることがどういうことかエイリは十分にわかっていた。医師として、とりわけ命のない人体の研究者としての役割を果たさねばならないということであった。
私はこんな道を歩きたいのではない。
そう願えば願うほど、抜けようとすればするほど、研究者としての道が彼女をがんじがらめにとらえた。幼いわが子の寝顔を見つめながら運命から抜けられないのだと絶望した。悲しみも涙も既に枯れ果てた。
この子のためにやるしかないのだ。
エイリは研究者としての自分が怖かった。研究に携わると我を忘れる。没頭し、はっと気づくと数日過ぎてしまっていることさえある。医師として生きたからだを診るのならまだいい。エイリに課されたことは「死体の解剖」である。
しかし、やるしかないのだ。
その道はあのときから決まっていたのだから。
それはエイリが五歳の頃であった。
ある夜、ガクウは新鮮な死体を手に入れるために「やまんと」の墓を暴き、埋葬されたばかりの女性の死体を手に入れた。たった一人での実行であった。
昔は空人たちも「やまんと」のように土葬であった。が、山犬などの獣たちが墓を掘り返すこともあり、死を受け入れられない家族が未練を残すことも多く、墓を暴くものさえいた。そこで「うみんと」の慣わしをまねて、死体を海に葬ることにしたのであった。墓を暴くことは空の国の古文書に「箴言」としてきつく禁じられており、巫女の始祖が取り決めたといわれている。
ともあれ、死体はガクウの診療所の奥にある研究棟にあった。ガクウは暗い部屋の中でたった一人で解剖を試みようとしていた。
女のからだは下腹部が膨れている。臨月で死んだ女であった。
胎児の生態を調べることができる。なんという幸運であろう。
ガクウは奇声を発して喜びたい気分をぐっと抑えた。自然と頬の肉が上がってくる。
「ふ、ふ、ふ」
と不気味な声を上げていた。
おんなの腹を裂いた。中にいる胎児をずるりと取り上げた。
そこでガクウはぎょっとした。
まさか、・・・生きている? 胎児が生きている・・・。
ガクウはすぐに、その小さな首を絞めようとした。
そのとき、胎児が「ほぎゃあ」と泣き出した。
はっとひるんだとき、後ろから声がした。
「その子は生きたいようですね」
ガクウは「ひっ」と声を上げた。全身に冷水をかけられたように思った。そのまま動けなかったが、ゆっくりとからくり人形のような動きで後ろを振り向いた。
「あ・・・、あ・・・、サクさま・・・」
サクはにっこりと笑い、静かにガクウに歩みよった。
「その子は私が預かりましょう」
サクは、わなわなと震えているガクウの手から胎児を取り上げた。ガクウは胎児をサクに渡すと腰が抜け、がっくりと尻もちをついた。罪悪感にうちひしがれ、両手で顔を覆い隠して泣いた。
「父さん、泣いてるの?」
とあどけない声がした。ガクウはぎょっとして顔をあげた。
なんとエイリが見ているではないか。
五歳になったばかりのエイリが、小さな手でサクの袴をしっかりと握りしめ、きょとんとした目をしてガクウを見ている。
ガクウはエイリをひしと抱いた。膝をついたまま、エイリを抱きしめて泣くしかなかった。
すると、ガクウの頭上から声が降りてきた。
「安心なさい。空の神はあなたを祝福なさっています。その証拠にこうして私がここにいる。ガクウ、よくお聞きなさい。あなたとエイリに、人体の研究は許されました」
声は確かにサクの声だった。しかし、サクのはるか上から降りてきたとガクウは思った。ガクウがはっとしてサクを見上げると、サクは白い光を放ちながら微笑んでいた。
ガクウは、はっしとサクの足元にひれ伏した。歓喜でも恐怖でも感謝でもなく、ただ空の神への畏敬だけが全身を震わせていた。
エイリにとって、まだ幼いころの記憶であった。
ガクウは決してそのことを口にしなかった。だからこそエイリは、夢のなかの出来事ではなかったかと思うのであった。そして自分がこうして暗黒の場で、ひとの肉体を切り刻んでいるのも夢の続きなのだと。
「終わったか」
と声をかけるものがいた。エイリはゆっくりと振り返った。ガクウであった。
「どうした。ぼうっとして」
「いえ、別に。ナツイの葬儀も終わりましたか」
「うむ」
「誰にも怪しまれず?」
「おそらくは」
ガクウの返事ははっきりしなかった。
(コウさまは見抜かれたやもしれぬ)
互いが同じことを思ったことを理解したが、双方とも口をつぐんだ。
ガクウが気を取り直すようにしていった。
「で? なにかわかったか」
「はい」
エイリはひとしきり説明をした。
「だれかがやみひとを操っているとしか思えないのです。つまりナツイを殺すことなく、歩ける状態で雷山の里に意図的に戻し、なにかをいわせようとした」
「そうか」
「ナツイから話を聞くことはできませんし」
エイリは自嘲気味に笑った。
「話なら聞いた」
「えっ」
ガクウは目を細め、エイリの肩に手を置いた。
「ナツイはなにを」
「よいか。いまからいうことは誰にもいってはならない。ナツイは」
エイリは、父の頬がぐいっと広がるのを感じた。
(笑った)
エイリはぞっとした。ガクウはふいに扉のほうを振り返り、そしてゆっくりとエイリに向きなおった。
「ナツイは、やみを操っているのはサクさまだ、といって息絶えた」
エイリは息が止まるかと思った。
「な、・・・なんですって」
ガクウはため息をついて顔をうつむかせた。
「くれぐれもこのことを他言してはならない。空人にしれたらコウさまの立場がない。いまは皆がコウさまを信じて行動することが肝心なのだ」
「は・・い・・・」
エイリは脳がしびれたかと思った。動けない。
そのとき、ろうそくの灯が揺れた。
(誰かいる)
まさかと思った。扉は分厚く重く、かたく閉めて錠をかければなかの音が外に漏れることはなく、もちろん外の音がなかに聞こえてくることはない。また、外から偶然見えることがあってもなかのようすがわからないように暗幕を張り巡らせ、常に暗くしている。したがって一寸先も定かではなく、人が簡単に入れる場所ではない。しかもここはガクウとエイリ、そしてサクだけが入ることが許されている暗黒の聖域である。アキは例外として、この建物自身が意思を持っているかのように人を寄せ付けようとしないのだから。
「父さん」
エイリはガクウに声をかけながら大きな瞳を左右させた。
「見てこよう」
ガクウは扉の前まで進み、確認をしているようすであった。しばらくして戻ってくると、
「大丈夫だ。誰もいない」
と笑みを浮かべながらいった。
(この笑顔を私はよく知っている。屍体を目の前にしたときの顔・・・)
この世でもっとも忌まわしい、そしてもっとも美しいその顔をエイリは幾度となく目にしてきた。
それからのガクウは滑らかに語り出した。これはガクウの考えがまとまっているときの癖であった。
「いちど呑まれたナツイが、やみの中でサクさまの御姿を見たのは確かだろう。つまりサクさまはご無事だと伝えたかったのだろう。ナツイはあれだけ無残なからだで山を下りてきたのだ。精神に異常をきたしていたのだと推測する」
「ですが、父さん」
「片目や口腔が喰われなかった、両足が歩ける状態だった、というのが気になるのだろう? その気持ちはわかるが、やみひとが意図的にできるはずがなく、ましてや誰かが操るなど考えられない。ナツイの気力がすべてだよ。そういうやつだったじゃないか。さ、もう行こう。ここを早く閉めねばならない」
(この人は嘘をついている)
エイリは反論しなかった。父が、自身の出した結論と別のことを語っていることがわかったからであった。こういうときの父はなにか企んでいる。そして、その企みを口にすることは決してない。
ガクウはエイリを気にもとめず、すたすたと歩き出し、扉を開けた。同時に湿った風がぶんっと吹き込み、エイリの黒髪が強くなびいた。雨の音がエイリの耳に届いた。
昼間だというのに外は尋常でなく暗かった。それでもエイリの目が染みた。
(目が痛い。あんなに黒く厚い雲に覆われているのに、ここには太陽が存在するのね)
エイリは暗黒の場を一瞥して、扉を固く閉じた。




