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空の子  作者: そうじ
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緊急招集(中央)

 卯の中刻。

 中央の講堂では慌ただしく人々が動いていた。それぞれに掃除用具、座布団などを手に持ち、ばたばたと動きまわり、ひと作業を終えると中心で指示をしている女性のところへ走りより、報告を終えて次の指示を受けている。女性は書面を持ち、ひとつひとつに印をつけ、静かだがはきはきとした口調で仕切っていた。

 講堂の扉がぎいと開き、朝日とともにひとりの大柄な男が入ってきた。ゆっくりと歩みをすすめ、作業の進み具合をおおまかに見ていく。

 白髪の老人が男を目にとめ、にこやかに笑って声をかける。

 「お。ガンザンか、おはよう。おまえ、相変わらず早いのう」

 「おはようございます。皆さんより早くは来ていませんよ。いつもご苦労さまです。今日もお世話をかけます」

 「なんの、こんなことしかできんでの」

 二人のやりとりに気づいて、場にいた者が次々に声をかける。

 「あ、ガンさんだ。おはようございます」

 「ガンさん、早いっすね」

 慌ただしく作業を進めていたものたちの顔が和やかになる。

 「ああ、おはよう。みんな、世話をかけるな」

 昨夜のやみの出現を受けて、今日は朝早くから緊急招集がかけられた。巫女コウからの直々の招集であった。

 中央の管理は西麓村の役割であり、会議などの場を整えるための準備班を設けていた。目立たないところで黙々とよく働くものたちばかりであり、ガンザンは必ず早めに来てねぎらいのことばをかけることにしている。

 準備班の責任者はガンザンの長女イズである。年は十八。すでに結婚し、子どもが一人いる。イズは祓い師ではないが淡々とした仕事のできる、おとなしい女性であった。その性格はガンザンの妻フユウとよく似ていた。

 「イズは」

 「ああ、イズちゃん、あそこっすよ」

 さきほどから指示をしている若い女性がガンザンに気づき、足早に近寄ってきた。白い肌を少し上気させ、汗をぬぐっていた。ガンザンを見あげ、にっこりと笑う。顔つきもフユウに似て、ふっくらとした白い頬、丸い鼻、黒い瞳を持っている。笑うと両の頬にえくぼができ、低い鼻がますます低くなり、それがたまらなくかわいい、とガンザンはいつも思っていた。

 もうひとり、ミノという娘がいるが、これはガンザンに似て頬骨が出ていて男のような顔をしている。性格も頑固でこうと決めたら泣きながらでもやり遂げる。ミノは能力を持って生まれ、まだ十四歳であるがすでに祓い師であった。祓い師として生きていくのであれば、そういう性格で仕方ないとガンザンは諦めてはいるが、女性なのに自分に似ていることが申しわけなかった。もっとも本人はそう気にしていないようすだったが、あれでは嫁のもらい手がなかろう。

 ガンザンの子はもともと六人の兄弟姉妹であった。姉妹は三人、兄弟が三人。が、やみに呑まれ、いまは四人となってしまった。

 兄弟で生き残ったのはタイシ、十七歳、コウシ、十五歳。このふたりはどちらも能力者である。能力者だからこそ生き残った。現在、ふたりとも祓い師となり、タイシは西麓村の長補佐、コウシは世話役に就き、昨日からはゲンの世話を担当している。男の兄弟はふたりっきりだというのに、弟コウシが兄タイシを嫌っていた。タイシは弟と仲良くしたいようだが、コウシがなかなか打ち解けてくれない。タイシは自由奔放な性格で、神経質でまじめなコウシはそんな兄が嫌いだった。

 姉妹で生き残ったのはイズとミノ。このふたりは仲がいい。性格も見てくれも違うがお互いを尊敬していた。イズはガンザンの第一子で、忙しい母フユウに代わって弟妹たちの面倒を見ていたため、タイシもコウシもイズを慕っている。ミノにとってはイズは母親のような存在であり、イズもミノをわが子のように思っていた。

 ガンザンはことばにこそ出さないがイズには苦労をかけたと思っている。しかも西麓村の準備役としてかなり厳しい仕事をさせている。

 イズはガンザンに無防備な笑顔を向けていた。

 「父さん、おはようございます」

 ガンザンも思わずにっこりと笑う。

 「おはよう。準備はできたか」

 「はい」

 「そうか。まだ到着していないのは?」

 「あ、はい」

 イズは名簿をめくった。すでに到着している者の名前には丸印がついている。

 「はい。六の瀬のスミさま、セイルどの。泉谷のノセさま、コタイどの。牛飼山のカイザどの、ホシナどの、田野池のイクリどの、それから・・・」

 (ケイリさま)

 イズはことばにつまった。ケイリの名前が記され「未着」とされている。ガンザンはそのことに気づき、ことばをつないだ。

 「それからコウさまとゲンさまだな」

 イズは少し困った顔をした。

 「あの、父さん。コウさまもゲンさまもすでにお見えになっています」

 「えっ。なんで早くそれをいわん。どこにおいでなんだ」

 「いえ、コウさまが『気にするな』とひとこといわれて、おふたりで上のほうにいかれて」

 「御堂か」

 「たぶん。ですが、あのいいかたからするとご挨拶はよしたほうがよいと思います。なにか特別なお話がおありになるのでしょう」

 「そうか。おまえがそういうのならそうしよう」

 イズはコウから別のこともいわれていた。それをこのまじめな父にはいわないほうがいいだろうということも。

 イズはゲンから酒の臭いがしたことを察知した。それに気づいたコウは、

 「日出浦に行かせたんだ。あ、ガンザンにはいうな」

 と、笑いながらいった。

 (ああ。だったら仕方ない)

 イズも笑った。これがガンザンやコウシ、ミノだったらコウを責めるだろう。「昨日のあの強大なやみの出現で、被害が出たあとなのに酒なんて!」と。しかしイズはコウの意図が見えた。

 (ゲンさまに空の国の原点をお見せになったのだ)

 イズは陰でコウの遣いとして働く。コウのお付きとして表に出て動くのはミノであるが、裏で人知れず動くのがイズであった。ガンザンにさえイズがそうした働きをしていることは知らされていない。

 コウにとっては口の堅いイズはありがたい存在であった。イズはコウから指示されたことについて深く理由を聞くこともなかったし、誰のところに行ったとか、コウからどんな話を聞いたなどいっさい家族にもいわなかった。

 その点も母フユウとよく似ていた。フユウは西の大長老ヨクのお付きとして働いている。これは皆が周知のことである。が、フユウはヨクからいわれたことは、夫であり西麓の長であるガンザンにもいっさい口にしない。

 しかし、さすがのイズも近ごろのコウの動きが慌ただしいことをいぶかしく思っていた。

 コウさまはなにをなさろうとしているのか。ヨクさまもなにやら忙しくされておいでのようすだ。母さんはなにもいわれないが、おそらく私より身近に感じておられるはずだ。ゲンさまがおいでになったことと関係があるのだろうか。


 さて、御堂の前にはコウとゲン、そしてテテがいた。

「ゲン、これを飲め」

 コウは手に水筒を持っていた。ふたをあけると、ぷーんといかにも苦そうな臭いがしている。

 「なんだ、これ」

 「南麓からもらってきたんだ。臭い消しだ」

 「ほう。南はそういうのがあるのか」

 「あそこには医者や薬師がごろごろしている」

 ゲンはとにかく口に入れてみた。

 「ぐえ」

 「ははは。苦いだろ」

 「おまえの愛用の飲み物ってわけだ」

 「まあな。酒の臭いごときで信頼を損ねてはたまらんからな。ほれ、ゲン、水だ。たくさん飲め」

 こんどは大きめの水筒を五、六本、差し出した。

 「これはな、北麓の白泉の水だ」

 「はくせん?」

 「ああ。羽犬たちがいつも水を飲んだり、水浴びをしたりする。羽犬から教えられなければ誰も知らない場所なんだ。大変だったんだぞ。そこまで取りに行ったんだ。な、テテ」

 コウはテテの頭をなでた。

 テテは嬉しそうにコウにすり寄ったが、横目でぎろっとゲンをにらんだ。

 ゲンはふっと首をすくめて応じた。

 「おまえがジャクルじーさんを連れてきたっていうじゃないか。ということは、今日の酒の臭いはオレのせいじゃないぞ」

 「だからこうして臭い消しとか水とか調達してきただろ」

 「まったく、日出浦ひんづらのヤツらときたら」

 ゲンはぶつぶついいながら、水をがぶがぶ飲んだ。

 「ほう、これはうまい。昨日も酒もうまかったがこの水もうまいな。羽犬たちはいいもん飲んでいるんだな」

 そういってテテのほうをみたが、テテはゲンを無視である。ゲンはまた首をすくめるしかなかった。

 「酒がうまくて調子に乗って飲みすぎたな?」

 「む、無理やりだったんだ」

 ゲンはいいわけを試みたがことばが思いつかない。

 「ところで」

 コウが低い声で聞いてきた。

 「ジャクルの話は聞いたか」

 「聞いた。まだ整理がつかないが」

 「そのうちつながるさ」

 コウはそれだけしかいわなかった。ゲンは聞きたいことがたくさんあったがなにから聞けばいいのかわからない。コウの表情が暗く感じたので、とりあえず沈黙を埋めるために、

 「じーさんが今度はコウも一緒に日出浦ひんづらで酒を飲もう、だと」

 といった。

 「そうか」

 コウは少し笑った。ゲンはほっとして皮肉をいった。

 「なるほど。オレは貢ぎ物だったってことか」

 「人聞きの悪いことをいうな。日出浦のものたちと一度合わせておきたかったのだ。これから一緒に仕事をすることになる」

 「ヤツらになにをさせる気だ」

 「そう焦るな。あとで説明する。さ、行くぞ」

 (やみの気配を察知する能力を使って人々の行動の誘導をする、というところか)

 確かにあいつらと一緒にいれば、巨大なやみが出たあとでも「これから朝までやみは出現しない」といわれれば安心する。自分の家に帰ることもできる。次の日の仕事への影響も少なく、昨夜みたいに酒だって飲めるわけだ。精神的にも物理的にもずいぶんと楽になる。

 実際にそれぞれの村で食糧だって貯えないといけない。避難生活しているからといって生産活動を止めるわけにはいかない。数日のことであれば話は別だが、今後いつまで続くか皆目見当がつかない状態だ。あいつらの存在はいろんな意味で大きい。

 コウはテッテに乗り、すうっと下に降りていった。

 ゲンもそれに続こうとしてちらっと御堂を見た。近くで見ると確かにあまり大きな建物ではない。だいいち扉が狭い。天井は高く明るい陽が差し込むようにつくられているようである。

 (窓とか屋根とか外せば入れるんだけどなあ)

 「ゲン、なにやってるんだ。早く来い」

 コウが焦れて声をかけてきた。

 「ああ。すぐに行く」

 ゲンはなかばやけになって声を張り上げた。

 コウはさっさと講堂に入ってしまった。

 ゲンは仕方なくあとに続いた。


 「講堂」は大きかった。

 中に二百人は入れそうである。ここは中央学の中心として祓いの型を学ぶ場であった。

 ゲンは(ここなら扉から入れる)と思いながら飛んでいると、講堂の外に羽犬が数十頭たむろしているのを見つけた。ゲンに気付いて忌々しそうな目つきで見ている羽犬もいた。と、少し向こう側にケイケイがいた。

 (じーさんも来ているのか)

 ゲンが羽犬たちを見ていると、ケイケイがゲンに気付いて立ち上がり、うれしそうにしっぽを振った。ゲンもうれしくなって目を合わせてうなずいた。が、ケイケイが他の羽犬ににらまれていた。

 (あいつ、いじめられないかな)

 ゲンは羽犬たちの数を見て、かなりの人数が集められたことを知った。

 コウによると三十五人程度を集めたという。各村の大長老、長老、合わせて八人。長、長補佐、合わせて八人。各村の里長、十六人。あとは大長老、長がそれぞれ必要と思う者、数名。

 講堂の扉が見えた。ひとりの女性が立っている。イズであった。

 あたりはいやに静かである。

 晴れ渡った空が青く色づいてきた。日の出を終えた太陽が勢いをつけて講堂の大きな扉を照らしている。地面にはいくつかの水たまりが点在し、昨夜の雨を懐かしく思い出しているかのようである。

 コウとゲンが扉の前に降り立つと、イズがささっと出迎え膝をつく。

 「皆、そろったか」

 コウはイズの顔も見ずに早足で歩きながら尋ねる。イズはすっと立ち上がり小走りでコウにつく。

 「はい。全員そろいました」

 「南は」

 「ご指示のとおりに」

 コウは扉の前で目を閉じて手を合わせた。コウが目を開けると、その目つきが変わっていた。厳しい、前しか見ていない目。

 イズは観音開きの扉に両手をかけ、重そうに扉を開けた。ぎいと音がすると、その音を追いかけるようにして強い風がぶわっとコウを吹き付けた。コウの袴が風になびく。

 扉のあいだから陽光が中に吸い込まれていった。中には四十人程度の村人がきれいに並び、頭を垂れている。

 真ん中をたったったっ、とコウが歩き進む。ゲンはあとについた。コウは高座につくと、すとんと胡坐をかいた。そのようすを見てすぐ横にいるガンザンが声を発する。

 「コウさま、よろしくお願いします」

 「うん。昨日はみな、ご苦労であった」

 コウは座り心地が悪いのか、一、二度、腰を浮かせて座り直すようにして答えた。

 「ああいうのとこれからはつきあわねばならない。どのような状況であったかは、田野池のイクリ、川端のエフムに詳しく聞くように」

 コウは厳しい顔をしたまま早口でさっさと進める。

 「それから、ガンザン。今後の動き方、闘い方を酉の上刻までには伝達するように。昨夜の田野池での闘いがひな形になる。川端はゲンがいたので参考にならん」

 「心得ました」

 ガンザンも早口で返事をする。

 全員の表情が険しい。コウの口から出ることばを急ぎ記憶する。記録する暇はなかった。頭の中で反芻し次のコウのことばをまた記憶する。ことばに込められた意味があとになってじわっと染み込むように理解できてくるが、それを深く考えていたのでは間に合わない。疑問はあとまわしだ。とにかくコウのことばを受け入れるだけである。

 (詳しく状況を説明しないのか。あれほど恐怖を与えたやみだったというのに)

 ゲンはちょっと心配になって場内を見まわした。が、余計な質問をするものはいない。どうやらコウのことばを追いかけるのに忙しいようだ。みな、食い入るようにコウのことばを聞いている。

 まわりのようすを知ってか知らずか、コウは淡々と続ける。

 「今日、みなに集まってもらったのはそのことではない」

  会場内で(え?)という顔の者もいたが、コウのいいたいことを理解して視線を落とす者もいた。

 コウはかまわず続けた。

 「ひとつめは、昨夜の南でのやみの出現についてだが、・・・ガクウ」

 コウはここで右隣にいるガクウをみた。ガクウはひとつうなずいて話しはじめた。

 「昨夜、西の田野池、北の川端で巨大なやみが出現しているとき、南の犬が淵に小規模のやみが出現した。小規模であったにもかかわらず、祓い師が二名と羽犬が三頭呑まれた」

 場が小さくどよめいた。

 「問題は呑まれ方だ。やみが出現すれば通常は外から近寄ってくるので猶予がある。しかし今回は犬舎のなかに突然現れ、一瞬で呑まれたという。犬が淵のホシナにそのときの状況を伝えてもらう。ホシナ」

 ホシナは三十代前半の女性であった。縮れた長い黒髪をひっつめてぐるっと巻き上げ、頭の上に乗せた格好で、淡い色をなした珊瑚のかんざしをひとつ着けている。もともと浅黒い顔色であるが、そのうえ顔色がすぐれず、目のまわりに隈をつくり頬がこけていた。後れ毛が乱れ落ちるように頬に垂れ、表情が痛々しく映って見える。

 「・・・はい。私は祓い師二人と犬舎のなかにおりました。段取りを聞いていたのですが、突然、祓い師たちが『やみの気配がする』といって、ほどなく・・・犬舎の奥からやみが現れ・・・」

 ここでホシナは咳き込んでしまった。祓い師のテオイが横にいて背中をさすっている。

 「なにがなんだかわからないうちに、あっという間でした。あれは果たして呑みこみだったのか私はわかりません・・・。しゅるっと音を立てて、こう・・・、渦を巻くようにして・・・」

 (しゅるっと? 渦を巻くように、だと?)

 ゲンはそのことばに反応した。なにかが脳裏によぎった。

 「あんなのは、はじめてみた・・・」

 ホシナの悲痛なつぶやきが場内に沈黙を招いた。ガクウがホシナに尋ねた。

 「ホシナ、おまえはそのときなにをしていた」

 「・・・はい。祓い師が『やみの気配がする』といったあと、私に犬舎から出るようにいいました。私は扉の方向に走って逃げました。ですが、扉から出るまえにやみが現れて、・・・私は怖くて足がすくんで座り込んで、そこで、・・・」

  ホシナは泣きだしそうであった。ガクウはそのようすを気にもとめず話を進めた。

 「そこで見たのか。つまり、位置的には五間ほど離れていたということだな」

 「・・・はい」

 コウはしばらくホシナをじっと見ていた。ホシナはコウを見なかった。視線を落としてがくがくと震え、下を向いたままであった。

 コウはホシナを見据えたまま低い声で聞いた。

 「そのほかにいうことはないか」

 「・・・いいえ」

 コウはホシナの顔をじっと見続けたが、ホシナがコウに目を合わせることはなかった。コウはふうっと息をついて、ガクウに顔を向けてうなずいた。ガクウもうなずき、話を続けた。

 「みな、よいか。つまり突然やみが出現するときには、今回と同じことが起こると考えてまず間違いない。そのときは無理に祓おうと考えず、五間以上の距離を取ることだ。いま考えられる対策はこれだけだ」

 場内はしんと静まっている。コウは皆の顔つきを見渡したあとガクウを促した。ガクウが続けた。

 「わかっていようが、いままでのやみひとの性質では今回のような呑まれ方はありえない。やみひとの性質が変化しているのか、それとも、まったく別者が現れたのか。それはまだ検証中だ。いずれにしてもやみの勢力には間違いない。今後は巨大なやみが出現すると同時にこの現象が起こると思われる。しかも羽犬も狙われる」

 ガクウの話は続いた。

 「現在、犬が淵から牛飼山に犬たちを移動させた。避難所ではあるが羽犬たちをひとところに集めるのは危険である。したがって本日夕方までに、授乳中の羽犬以外、ほとんどの成犬を選抜した者たちに貸与する。すでに各村の候補者が多数いるが、その中から各村の長が吟味して決める」

 ガクウのいいかたは威圧的である。が、誰も反発するものはいなかった。反発などできなかった。まったく理解のできない事態であり、それを状況から分析し把握しているのはコウとガクウだけである。いうとおりにするしかない。

 ガンザンは終始、腕組みをして話を聞いていたが、おもむろにコウに近づいてなにやらこそこそと話をはじめた。コウはうんうんとうなずいた。ガンザンが立ち上がり、静かに話しはじめた。

 「昨夜の状況は、皆にとって簡単には受け入れがたいことだと思う。それは私自身もそうだ」

 ガンザンの声は太く温かい。皆は素直にうなずく。ガクウが指示をしているときとは場内の雰囲気が違う。ガンザンの人気がこれでわかる。

 「おそらく長老さまたちにとってもはじめてのことだと思われます」

 長老たちが険しい顔をしてうなずく。ガンザンの声が場内に染み込むようであった。

 「しかし、我々がおびえてしまっては村人はたまらない。役につくものがしっかりと仕事を果たすことが第一だ。そして昨日の北麓と西麓のやみの出現については大いに語ってくれ。あの巨大なやみをコウさま、ゲンさまが一気に祓われたこともな。希望を持ってほしいのだ。これからも巨大なやみが出現すると想定されるが、コウさま、ゲンさまとともに闘えば勝てるという希望を持てば、よい緊張感が自然と生まれる」

 ここで皆の顔がほうっと安堵する。昨夜のコウとゲンの力については早くも噂が広まっていた。その噂が本当だったと確信したのであろう。

 「だが、犬が淵の件については情報が不十分だ。さきほどガクウが分析した対策については十分に浸透させてほしい。が、今回の犬が淵での状況を伝えるのは最小限にしたほうがよい。恐れを募らせる」

 ガクウがガンザンになにか声をかけていた。ガンザンはひとつうなずいて話を続けた。

 「これからはどのような情報でもいいので細かく報告してほしい。忙しいと思うが、できるだけ村人ひとりひとりの話を聞いてほしい。つまらない愚痴だと思ってもそこに真実が潜んでいることがある」

 ガンザンは皆の顔をひととおり見渡してからつけ加えた。

 「また、目を合わせて話をすれば人々の不安や恐れが少なくなる。たとえすべての不安や恐れを取り除くことができないとしても、そこに信頼が生まれる。不安や恐れは幻のようなものだ。自身で大きくも小さくもできる。不安を消すことはできなくても小さくすることはできる。小さくなれば安心する。安心すれば希望が見え、勇気が湧くものだ」

 皆、真摯にうなずく。

 が、ウルクだけは、うなずくふりをして別のことを考えていた。

 

 まあ、ガンザン得意の精神論だな。とはいえ、いまはそれに頼るしかない。それだけ、せっぱつまっているってことだ。かなり危険な事態ってことさ。

 へっ。いくら俺でも今度ばかりは笑えないな。

 南に出現したやみ。「突然やみが出現するときは五間以上距離を取れ」だと? 「突然やみが出現」なんて個人の感覚によるだろう。おおかたの村人は恐怖で動けなくなることぐらいわかっているだろうに。そうなったとき祓い師がそばにいたところでなんの役にも立たないんだぜ。ホシナのことば、聞いただろ? なんせ「あっという間」ってんだからな。つまり、祓う暇なんてない。たとえコウさまやゲンさまがいらしゃったとしてもどうにもならない、ってことじゃないか。みんな、気づいていないのか。それともあえていわないのか。ガンザンもガクウも気づいていながら、あんな指示でごまかそうってんだから、たいしたもんだ。俺にはとうていできない。くそっ。みんな気付くなよ。気づくことがいちばん罪なんだ。いや、気づいてもいいが公言するなよ。

 ウルクは珍しくため息をついた。ふと顔を上げるとコウと目が合った。コウはウルクを見ると片眉をあげ、ひとつうなずいた。

 うっ。俺の気持ちを読まれた? 余計なことを考えるな、ということか。

 まったく、コウさまには敵わないな。

 俺は子どもの頃、ヨウさまの美しさ、気高さに感動した。ただヨウさまのために働こうと決心した。サクさまも美しいがヨウさまにはかなわない。まあ、ガクウはサクさまがいちばん美しいといっているので好みの問題ではあるが。

 ヨウさまが亡くなられて俺は絶望した。村長もやめようと思った。が、コウさまがお生まれになった。赤ん坊のコウさまを拝見して俺は思い直した。

 コウさまは光を放っておられたのだ。

 サクさま、ヨウさまのお顔と似ているにもかかわらず、コウさまは、失礼だが決して美しくはない。女らしくもない。ライさまも女らしくはなかったが御髪も見事で美しいお方だった。コウさまはというと、短髪で、少しでも伸びると自分でじゃきじゃきとお切りになるらしい。寝ぐせさえ直されない。なのに、お顔からあふれる神々しさ。青い透き通った瞳。決然とした言動。この方は別格なのだ。

 きっと皆が感じている。だからこそ、サクさま不在のいまでもこうして、わずか十二歳の巫女に従っている。通常なら大巫女、巫女がいて、その子として守られた存在であるはず。その三役をすべて一人でこなしておられるのだから。

 コウさまには負ける。

 ウルクはいつもそう思う。いま再び、何度目かの白旗をあげ、コウに向けて頭を垂れた。

 

 コウは再びせかせかと話しはじめる。

 「話のふたつめに入る。今後それぞれの避難所に、日出浦の者たちを三、四人ずつ配置する、ということだ」

 「え」

 「なんと」

 今度は明らかに困惑を声に出す者もいた。しかし、場内のざわつきをコウはきっぱりと無視した。

 「周知のことだが彼らはやみを祓う力はない。が、やみ出現の予測能力、察知能力、そして逃避能力はこれからの異常事態に必ず役に立つ。彼らの誘導に従えば呑まれることはまずない。やみの察知能力は我ら巫女と同等の能力だ。しかし、予測能力は巫女以上である」

 妙な緊張が人々の顔に走っている。ゲンはジャクルの話を思い出した。

 (お互いに「ソラモン」「うみんと」と蔑称で呼び合う仲だ。ことばではいい尽くせない確執があるのだろう)

 ゲンはジャクルを見とめた。ジャクルはざんばら頭をぽりぽりとかきむしりながらフケをとばしている。赤い顔をして「へへ」と笑っていた。

 (じーさん、あれからまた飲んできたな)

 ゲンの視線に気づいてジャクルはにいっと激しく笑顔を見せた。やっぱり歯が三本しかなかった。存在自体が緊張したこの場にまったくそぐわない。しかし、それが妙な安心感を与える。

 そう感じたのはゲンだけではなかったらしい。ジャクルのようすが目立って、結果的にまわりを笑顔にしている。普段なら酒臭く不潔な恰好をしたジャクルが毛嫌いされるのだろうが、異様な緊張に包まれたこの場では心の逃げ場とでもいうべき存在となった。

 コウもそうであったろう。ジャクルを見てことばが穏やかになった。

 「逃げっぷりは見事だぞ。巫女ではあの芸当はできん。なあ、ジャクル」

 「へへ、そりゃ、コウさんがいくら修行してもできゃあせん」

 ここで場内に笑いが起こり、緊張が少し解けた。

 「ははは。確かに」

 コウも笑顔を見せた。その顔をみて皆がほっとした顔つきになる。

 が、コウはすっと真顔になった。どうしても緊張を解くわけにいかないらしい。

 (コウのやつ、なにか焦ってるのか)

 ゲンはコウを凝視した。コウは早口である。

 「まずはやみを察知して準備する。巨大なやみであり、私かゲンがいればそのまま闘う。そうでなければ、逃げよ、ということだ。いままでのように祓いでなんとかなる相手ではない。エフム、そうであったろう」

 エフムは川端の里長である。

 「はっ」

 とかしこまって頭を垂れた。昨夜の巨大な「やみ」の恐怖を思い出したのであろう、その顔は苦渋の色を隠せない。

 「おっしゃる通りでございます。川端の祓い師はセグルさまをはじめとして実力者が多数おります。が、どうにもならず・・・。ゲンさまがおいでにならなかったら川端は全滅だったと思われます」

 さっきとは違う緊張が場内に走った。コウはその状態をあおるようにして厳しい声を上げた。

 「そして、南で出現した謎の呑みこみだ。あれもやみの出現が前提だ。たとえば正体がやみでなかったとしても」

 全員がはっとした。正体が「やみ」ではないとはどういうことだろう。

 コウは続ける。

 「日出浦の者たちは異質なものさえ見分ける。そのときも逃げるよう、すでに伝えてある」

 場内はしんと静まった。コウは声量を上げた。

 「祓うか逃げるか。その判断を日出浦のものに託す。本日より彼らを『誘導役』とする。私の直轄である。彼らの指示は私の指示だ。みな、従うように」

 場の気が止まったように感じる。凪のようであった。コウのことばがすんなり入らず、抵抗をなぐさめながら、無理やり自分の中に押し込んでいるようだ。

 ゲンは、コウのことばが人々のからだの前で固まっているのを感じた。

 (巫女のことばが受け入れられないとは重症だな。オレから見ればこんなに簡単で効果的な方法はないと思うのだが)

 するとコウはぼそっとつぶやいた。

 「指示に従わぬものは呑まれる、といっておるのだ」

 場は確実に冷えた。

 コウはしばらく焦点の合わない目を見せ、その状態で話を続けた。

 「自らの力でなんとかできる者は指示に従わずともよい。自分の生き方は自分で決めるものだ。どのような選択がなされたとしても責めを負わぬ」

 コウの声が低く、その目つきが恐ろしく冷えている。みな、固唾をのんで聞き入る。

 コウは気がついたかのように、すっと顔を上げた。場内すべての気がコウの挙動に集中する。

 「だが」

 コウはみなの顔をぐるっと見まわし、声を張った。

 「生きたいものは私に命を預けよ」

 ゲンには、鈴の音が無数に聞こえたような気がした。場に浮遊するすべての邪気が祓われる音。

 ここでコウは声を和らげ、前のめりになっていった。

 「いろいろと意見もあろうが、あれこれと論じている暇がないのだ。こだわりを捨てよ。私を信じてほしい。わかってくれるな」

 コウの青い目から柔らかい視線が注がれる。皆、暗示にかけられたようにうなずいてしまった。

 (こいつ、まるで詐欺師だな)

 ゲンはあきれてコウを見た。コウは姿勢をただした。

 「もういちどいう。日出浦のものたちは私の直轄役である! どのような指示であろうと必ず従うのだ。よいな」

 今度はコウのことばが、すとん、と皆の心に落ち着いた。

 「私からは以上だ。ガンザン、あとは頼む」

 コウはそういって立ち上がり、たったったっ、と歩き出した。

 あまりにも早い展開に全員が戸惑いを見せながら、慌てて頭を垂れる。

 ゲンもぽかんとしてそのようすを見ていると、ガンザンがひそひそと声をかけてきた。

 「ゲンさま、これから我々は少し話し合いをしますので・・・」

 ゲンは(それなら皆のようすを見てみたい)といおうとしたが、ガンザンが(早く出ていってほしい)という表情をしていたのでいうのをやめ、そのために、

 「あ、ああ、うん」

 と、妙な返事をして外に出ることになった。

 皆、頭を垂れて膝をつき礼をとっていたが、ジャクルだけがへへっと笑いながら、

 「ゲンさーん、またのー」

 と、手を振った。

 (ここで、昨夜酒を飲んだっていうなよ)

 と、ゲンははらはらしたが、そのジャクルの態度が妙にうれしかった。光の粉がふわっと舞い、皆が「おお」と驚くなか、浜の長老のギンカだけが、

 「こーりゃ、ジャクル。ゲンさまに気安く声かけるな」

 と、ジャクルを叱っていた。ジャクルも負けずに

 「なんじゃあ。わしとゲンさんは友だちになったんじゃ。おまえにとやかくいわれとうないわ」

 と返している。

 ゲンはそれを眺めながら会場を出ようとして、ギンカの横にいたギルに目をとめた。

 (ギル? 昨日はあんなに騒がしかったのに今日はどうしたんだ)

 ギルの表情は暗く沈んでいた。


 陽光が目にしみた。

 すでに辰の中刻を過ぎているようである。講堂の少し先には大きな楠がそびえ、そよ風が楠葉を揺らし、勢いづいた陽光にきらきらと輝く。

 木の下には木漏れ陽を受けながらコウが立っていた。コウは眉をしかめてゲンを見ている。

 「どうした」

 ゲンが話しかけると、コウは、

 「ゲン、おまえ、さっさと出てこい。話し合いは終わったんだから、おまえがいてもなんの役にも立たんだろうが」

 と、いらついた口調でいってきた。

 ゲンはむっとした。木漏れ陽がゲンにも注がれていた。

 「それなら、前もってそういっておけ。なんで後からぶつぶついうんだ」

 「そういうことはな、状況から察するもんだ」

 「コウ、おまえはことばが足りない。さっきだってそうだろ」

 「あれ以上なにをいうことがある」

 「おまえの指示をねじ込んだだけではないか。まわりの納得などおかまいなしだな」

 「それに合わせていたら日が暮れる。日が暮れればまた次のやみが出現する」

 「だが」

 「情に流されるな」

 (くそっ。いわれなくてもそんなことはわかっている)

 「だからなんだ」

 「それではいまの事態を乗り切れない」

 「確かに非常事態だし、やることも多すぎる。が、おまえの焦りが見える」

 「この状態で焦らないことのほうがおかしい」

 「そうじゃなくてだな、なんというか、コウ、おまえだけが焦っていると感じるんだ」

 「おまえがわかっていないだけだ」

 ゲンはもどかしかった。

 木漏れ陽がゲンのからだに斑点を作って遊んでいるように見える。

 (おまえの計画のすべてを話せとはいわない。しかし)

 ゲンは少しの間、足元で遊んでいる斑点を眺め、顔をあげた。

 「コウ、ギルの表情に気づいたか」

 「ああ」

 「オレにはその理由がわからない。おまえはどうだ」

 「私はわかっている」

 「オレにはそこに隙が見える」

 「隙だと?」

 「つまりな、目に見えないおまえの焦りが、人の心に隙をつくることもあるということだ」

 「隙などない」

 「そうかな。おまえは生まれながらにして巫女だ。背負っているものも大きかろう。だが、人間の感情の機微がわかっているかは疑問だ。ほんの少しでも隙があればそれがひずみになる。ひずみができれば結果を出すのは難しい。できたとしてもいびつな結果になる」

 「ひずみなど、ない」

 「本当にそうか? おまえも少しは感じているのじゃないか」

 「なぜそういえる」

 「おまえがイライラして、オレに八つ当たりしているからだ」

 コウは黙ってしまった。

 ゲンはこれ以上反論をやめようと思った。これ以上いったらオレが八つ当たりしていることになる。

 すると、コウが「あっ」という顔をして講堂の扉を見た。

 いつのまにかヨクが講堂の前に立っていたのであった。

 杖をついてゆっくり出てきたはずなので、コウとゲンの口論を聞いていたのだろう。ヨクは微笑みながら、目で合図して羽犬とともに上にのぼっていく。コウは決まりの悪い顔をした。

 講堂から、浜の長老ギンカが出てきた。つづいて、テルイ、ソウイ、サキイ、ヨキイが出てきた。外にコウとゲンがいたことに少し驚いたようすであった。全員、会釈をして羽犬に乗った。

 最後にどこからともなくジャクルがひょっこり現れた。コウとゲンを見とめるとお決まりの笑顔を見せ、ケイケイを呼んで鼻歌まじりで上にあがっていく。

 コウはテテを呼んだ。

 どうやら御堂に行くつもりらしい。

 (こいつら、なにをする気なんだ? しかし、なんといってもオレは客分だ。求められたときだけ動けばいい存在だ)

 「じゃあな。オレは帰って寝るさ」

 ゲンは少し拗ねたいいかたになってしまったことを後悔した。

 するとコウがまっすぐにゲンを見た。

 「ゲン、ひとついわなかったことがある」

 「なんだ」

 「昨日、西麓の田野池で呑みこみの被害は出なかったが、その闘いのあと長老がひとり亡くなった」

 「え」

 「これから葬儀の話をする」

 「葬儀にはオレも参列できるか」

 「いや、葬儀は身内でごく少数でやるという決まりがある」

 「そうか」

 「ケイリという西麓の長老だ。能力者で祓いの力も強かった。昨日の会議には出席していた」

 ゲンは、ヨクの近くにいた長老だとはわかったが顔は思い出せなかった。

 「こういうことはよくあるのか?」

 「私が知る限り、過去にはなかった。だが、これからは覚悟せねばなるまい」

 「わかった。力を使いすぎた、ということか」

 「ガクウは老衰といった。自然な死であったらしい」

 「おまえはどう思う」

 「もともと生死に不自然はない。すべて神のご意向によるものだ」

 「そうか。・・・そうだな」

 ゲンは昨日のジャクルのことばを思い出した。

 『生き死には神様のなさることじゃ』

 コウは上を向いていった。

 「ケイリは昨夜、やみと闘うまえにとてもよい顔をしていたんだ」

 「そうか。よかった」

 「うん。よかったんだ、これで」

 コウはテッテに乗った。

 「ゲン、今夜の段取りはコウシに伝えてある」

 「わかった。じゃあな」

 ゲンが飛ぼうとすると、コウが呼び止めた。

 「ゲン」

 「なんだ」

 「さっきの話、気をつける」

 「そうか」

 「ギルには話を聞いてみる」

 「そうか」

 「うん」

 「じゃあな」

 「うん」

 ゲンはコウを見もせずに無表情で飛びあがった。が、コウに背中を向けたあと自然と顔がにやけてきた。

 (かわいいやつじゃないか)

 太陽がまぶしかった。



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