プロローグ
「いいかあ。今のお前らには必要ではないかもしれないが、社会に出た時に話題の引き出しになるから雑学は重要だぞ」
「「「はーい」」」
皆返事をするけれども、どこか上の空で。そんな俺たちを見て先生はため息をついた。
「今は確かに男子校だから、それがなんだよって状況だろうけどな。今日の授業はここまで」
先生が教室から去って教室からは一斉にため息の音が聞こえる。
「どこを見ても男しかいないのにさ。先生の言いたいことも分からなくもないけどさ」
「それを言うなよ。先生の花言葉……俺こないだ利用したぜ」
「何?誰にしたんだよ!」
「それは内緒。ふふーん」
全寮制の学校なので、地元に彼女を残してきている生徒もいる。互いに慣れない遠距離恋愛で別れてしまった者、順調に絆を強めている者……それぞれだ。
今日の先生の雑談は記念日ネタだった。こんなネタ、俺にも役立つ日が来るのだろうか?
いつもの朝のようにけたたましく目覚まし時計が鳴り響く。
「はあ……ちょっと早くないか?何時だよ」
時計を見るとまだ僕が起きる時間ではない。今日のスケジュールは……マネージャーだからフレックス対応だけど、労働保険の書類作成等があるので午前中は事務所勤務だったはずだ。
「まあいいか。あいつらもいることだし」
ベッドからゆっくりと起き上がり、キッチンに向かう。玄関に目線を向けると俺以外の靴が三足ある。いつものように、学園時代からの親友(というかむしろ悪友)が客間で寝ていることが分かる。
「完全に家をセカンドハウス扱いだから……全く」
届くことのない文句を言ってから、思い出すのは起きる直前に見た夢。
「昨日、あいつらとあんな話をしたせいか。ところで今日は何の日だろう?」
スマホでメールを確認してから検索アプリで調べ始める僕だった。