7 お昼の時間
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パトロールも済んで午前中の稼業が終わり、これから待ちに待ったお昼休み。ぐぅと鳴ったお腹に急かされてお弁当の入った包みを鞄から持ち上げ、その重みにほっとした。そこそこ重量があるのでサプリメント七粒とかではなく、きちんとしたお米メインのお弁当のようだ。
ただ、ぼんち揚げがお弁当箱いっぱいに詰まっている可能性はなくもないので、やや緊張しながら開けてみたら、予想外のキャラ弁で思わず椅子から転げ落ちそうになる。上手いのかどうかはいまいちわからないけれど、手は込んでいる。どうやらクロイツはずいぶん早起きをしたようだ。
俺の体にだるまを描いたのと同じ人間が作ったとは思えない程度には上手がしかし、大の男にキャラ弁はないだろう。俺は蓋を持ったまましばし卵でできたポインコ兄弟を凝視した。
ほっぺたの赤は人参……じゃない、梅干しだ。あ、こっちの星が人参か。なんで星なのだろう。
弟が持っているこれは……タコさんウインナーか。茶色が少ないと思ったんだろうな。
全体的に黄色と白で色どりが悪いと思ったのだろう、デザイン関係なく適当に高菜を詰め込んでいるところがあいつらしい。いつもより小さい弁当箱ではあるが、それでも時間をかけて作っただろうことに変わりはないだろう。
朝ご飯も豪華だったし、なんだろう、なにか怖い、なにか嬉しいことでもあったのか。ぺコナカップのことで怒っていたはずなのに、朝ご飯もお弁当も気合いが入っていると逆に怖い。いや、もしかしたらこれは許してくれたことの合図かな。
それともなにか……そういえば、今朝は俺との話も上の空で様子が変だったうえに、いつもより顔色も悪い気がした。昨日の夜は海に行くって話をしたくらいで、別におかしな様子もなかったけれど。ペコナカップのことを忘れるくらいに、なにか気になる出来事があったのだろうか。またクロイツを殺そうとする追手が来たとか……。
わからない。俺は大きくため息をついて首を振った。
あいつは隠し事が多すぎるから、きっと俺がなにを考えてもあいつのことはわからない。暗澹たる気持ちでポインコ兄の方に箸を突き立てようとすると、俺の心を知らないポインコ兄は、どこを見ているかいまいちわからない視線でなんとも脳天気な顔をしていた。
……やっぱり上手いな。
とりあえず食べる前に写真撮っておくか。
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