雲行きが怪しい
設定としてはありがちな部類だろう。この後僕に手伝え、と要求してくるであろうことは想像に難くない。
もし僕が断ろうものなら、制裁といううなの暴力で僕を脅しにかかるに違いない。だけどそんな神には僕は屈しない。ここは男らしくきっぱり断ってやろう。力で人の感情や行動まで支配しようとする神である。そんな者の下に誰がつけるか。こうびしっと彼女に指摘してやり、彼女は今までの自分の行いを顧みて、むせび泣くのである。
そこを僕がやさしくなだめてあげて、落ち着いた彼女に、親に謝り実家に帰るよう優しく諭してあげるのだ。
そうして彼女は今までの態度を詫び目標こそは達成できなかったものの、人として一回り成長して実家に帰る。親は喜んで僕に謝礼などをよこすに違いない。
「口が半開きですよ?気持ち悪い」
彼女がじとっとした目で僕をみやっていた。
「未来の事を考えていたんだ」
「さぞ気持ち悪い未来なんでしょうね?あんなボケっとして。脳みそ枕に吸い取られちゃったのかと思ってびっくりしましたよ」
「僕たちのことだ」
彼女は正座したまま器用に足を小刻みに動かし僕との距離を3歩分ほど開けた。ニコニコしたまま表情は固く
距離も心も離れたようだ。
「ちなみにいくらたまってるんですか?」
僕は話題を変えるために彼女に聞いてみた。
「今は・・三百万円くらいですかね・・?」
「何年くらいで集めたんです?」
「二年でこれですね」
僕は素直に驚いた。お賽銭なんていいとこ千円入れてもらえれば御の字であろう。それを三百万である、一人百円いれてもらえるとしても、この神社には3千人くらいお参りにきたことになる。これは各地に神社ができるのも頷けるというものだ。ちょっと手伝いたくなってきた・・。
「あ、いえ賽銭だけじゃないんです募金とかもあります」
僕が関心していることに気づいたのだろう。彼女が申し訳なさそうに付け足した。募金?寂れた神社にはそういう救済処置みたいなものがあるのだろうか?聞いたことがない。
「えーっとですね 、・・街中で、募金してたんですよね心臓病がどうとかで・・・」
「暇つぶしの散歩をしていた私は、お金の話!と思って見にいったんですよね。そしたら母親らしき人が写真を持っていて、そこに写ってる男の子を見て神様の私にはわかちゃったんですよ。」
情感たっぷりに話す彼女の姿に僕は悪い予感がした。
「この子は絶対助からないって」




