トラウマに支配されおとなしくなる
「目が覚めましたか?いきなり倒れてしまったので驚きましたよ」
彼女の話によると、お参りを済ませた後の帰り道。僕は階段で足を滑らせたあげく、手すりにお腹を強打し、そのまま気絶してしまったらしい。
「それは、なんともかっこ悪いところをみせてしまいましたね」
「私がここまでおぶってきたんですよ?」
「そうなんですか?!いやー悪いことをしてしまいましたね。確かになんだかお腹のほうがにぶく痛みますね」
「あはは、よほど強く打たれたんでしょう可哀想に・・ゆっくり休んでいってくださいね?」
「いやいや、そんな見ず知らずの人の家で、ゆっくりとなんてできませんよ!歩くことはできますので一応病院で見てもらいに行こうかと思います。ホントにありがとうございました。」
僕はお礼を言うと体を起こして逃げようとした。
「ダメです寝てないと!あなた気絶するほど強く打ったんですよ絶対動いちゃダメですよ?いいですね?」
最後の方は目が笑っていなかった。僕は身体から来るトラウマで体がすくみ動けなくなる。
この女いけしゃぁしゃぁと嘘を吐く。罪悪感のかけらすら感じられない。
僕は蹴られたお腹をさすりながら、逃げるため周辺を確認した。ここは境内の中だろうか?古い木造の造りで、床には畳がひいてある。扉はすべて障子になっていて箪笥もまた古めかしい。昔ながらの日本家屋といった感じで、なんだか心が安らいだ。
「ここはどこなんですか?」
「私の家ですね」
「一人で住んでるんですか?」
「はい、両親は仕事が忙しくてなかなか会えないのです」
「それは寂しいですね、あなたは学生さん?」
「いえ、神様です」
「そうですか、がんばってくださいね。」
「え?それだけですか?」
まさか流されると思ってもみなかったらしく、自分から確認を入れてきた。食いつかなくていいんですか?神様ですよ?どうせろくなものじゃないくせに・・。モノノケですよ?なら僕も信じただろう。
だけど、動きが制限されているこの状態で、彼女の意に沿わない行為はハッキリ毒である。僕はそう思い、彼女が望んでいる話題へと足を向けることにした。僕にも興味がないといえば嘘になる。だけどこれ以上、彼女のことを深く知ってしまうのは、取り返しのつかないことになるような、そんな気がしていた。




