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神様気分  作者: みつる
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彼女は神様

熱い、ひたすらに熱い。だけど四方を炎に囲まれた今、僕はただ、どうすることもできずにハウス君を抱えたまま佇んでいた。これでは、死を覚悟して炎の中を突っ切るしか道はないだろう。ただ、僕が死んだら彼女は悲しんでくれるかな。こんな時だというのに、そんな事を考えてしまっていた。


ハウス君を強く抱きしめ、覚悟を決め僕は走りだそうとしたのだ 

すると、頭の上に冷たい感覚が落ちてきた。僕は反射的に上を向く。天井から滴って僕の頭の上に落ちたそれは水であった。消防車・・?

僕は瞬時にそう考えたのだが、天井から落ちてくる水はどんどんその勢いを増していった。そして家全体に何かを叩きつけているような激しい音の洪水が鳴り響く。・・・これは・・雨・・?

僕がそう思ったのも束の間、すぐ後ろであまりの水量に天井が崩れた。崩れ落ちた箇所から物凄い量の雨がなだれ込んでくる。バケツをひっくり返したようなという表現があるが、それどころではない。川を、海をひっくり返したような物凄い雨。僕は崩れそうになっている天井から、すでに崩れ落ちていたところへ移動する。立っていられないほどの雨、視界すらも閉ざすそれは僕が今まで見た事も聞いたこともないような雨だった。

僕等の家は火事で脆くなっていたのだろう。嫌な音を立て、黒いこげた柱を残し完全に崩れ落ちた。僕の前にあるのは焼けこげた木の残骸と雨だけであった。火は完全に鎮火したようで、所々から白い煙を上げている。僕は僕等の住んでた家の残骸を踏みながら歩いた。彼女のとこまで、雨はそれでも降り止もうとはしない。


いきなり前から強い衝撃が加わり僕は支えきれず、たまらず後ろに倒れてしまう。

「大丈夫ですか?!ケガはないですか?生きてますよね?!」

彼女だった。雨の中、僕等を探してここまできたのだろう。倒されて、とても痛かったのだが、とりあえず無事な事を伝える。

「大丈夫です・・。」

彼女はほっと一息つき、僕を押さえつけていた手を離した。それと同時に雨の勢いが弱まった。

「心配しました。家が崩れた時にはもうダメかもって思って・・・」

彼女は泣きそうな自分を必至に抑えているようだった。

「ハウス君も無事ですよ」

僕は胸元に抱えたままの木箱を彼女に見せてやる。

「ほ、ほんとに・・良かったホントに良かった・・・。死んじゃったら私にだってどうすることもできないんですからね・・・」

さすがにそこまでは無理なのか、でも本当に危ないとこだった。


「たまたま・・たまたま、雨が降ってくれて・・・・ホントに良かった・・・」

たまたま・・・?自覚がないのか・・?僕が車を走らせてる間、月も見えていたはずである。天気予報だって雨の予報ではなかったはずだ。それにこんな雨量の通り雨なんて聞いたこともない。雨は止んでいて、それどころか雲も切れ切れになり、隙間から星を覗かせていた。たぶん、これが彼女の神力なのだろう。正に神業というべきなのか。

「あ、あなたも、たまには役に立ちますねぇ・・・」

泣きそうになりながら次に出てきた言葉がそれだった。変なプライドとかあるのだろうか・・?僕と彼女は目を見合わせ、たまらず笑ってしまう。でも、僕はこれからハウス君があんな状況だというのに僕に託してくれた言葉を彼女に伝えなければならない。


「落ち着いて聞いてください、この火事の原因は・・」



「知ってます」

え・・・?

「あの草や木が教えてくれました」

彼女が指さした先にあったのは・・・何の変哲もない普通の草と木だった。僕には、彼女が言っていることが理解できない。

すると、唐突に彼女が立ち上がったのだ。僕は彼女を見上げる形になったのだが、夜の闇のせいなのか上手く彼女の表情が読み取れない。悪い予感がした。このまま彼女が終わらすとは思えない、いや、終わらすわけがない!


「さてと」

風が止んだ。




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