神様は神様に感謝する
「正しい作法を心がけましょう。そうすることで、神様もうーん叶えちゃおっかなと思う確率が上がります」
「か、神様ってそんな適当な感じなんですか??」
彼女は笑顔のまま黙った、どうやらこれ以上深く掘るなと無言で答えたようだ。
「さぁさぁYOU-願いを言っちゃいなYO-」
自分のキャラすら定まらない神様に、己の欲望を見せるのはなんだか勇気のいる行為のようなきがした・・。とりあえず早く帰りたいし、家族の無事でも祈ろう。無難だろう。。
僕はそう思い、うる覚えの作法で参拝をおこなう。
まずは、一礼
これには神様(自称)もご満悦。目はキラキラ輝き次の動作はまだかまだかと猫のようにソワソワする。
次に、神様に来たことを知ってもらうために、強めに鈴を鳴らすだったかな?。カランカラン鈴は少しホコリを落としながらも、嬉しそうな音を出す。
「や、やぁな、何か願い事かな???えぇっと私がなんとか?なんとかしてあげよう!!」
さも、今気づきましたよ?という演技が妙に鼻につく。帰してください。と思わず願いそうになる。
彼女はどうにも落ち着かない様子で、足を曲げたり伸びをしたりして、抑えきれんばかりの喜びを動くことでなんとか消費しようとがんばっていた。
次にお賽銭、僕は財布を取り出して中から10円玉を取り出した。
これには神様(自称)も不満げ。急にあくびをしたり、下を見つめて悲しそうにしたり、僕の顔をチラチラ見ては何か言いたそうだ。
僕はなんとなく腹が立ち、10円玉を元の場所に戻して、1000円札を取り出した。その瞬間彼女の息は止まり、まるで神様でも見たかのような驚きを喜びが入り混じった顔で固まった。
僕は何食わぬ顔で賽銭箱に1000円札を落とした。
彼女は、両手を胸の前で固く結び、額をあて、何かに感謝を捧げた。
「神様ありがとうございます」
聞こえたその声は、とても綺麗で、色々言いたいことはあったのだけど、とりあえず来てしまった事に対する後悔は和らいでいった。




