カラス
ある日彼女と漫画を読んでくつろいでいるとピシャアアアアアアアアアアアンと外から雷が落ちたような音がした。
「な、なにが起きたんですか?!」
僕が何事かと驚いていると彼女が嬉しそうにして
「お、結界に何かかかったようですね」
とそう言った。
「は?」
「ふふふ、この神社の鳥居は良からぬモノがくぐると瞬間的に結界を張り相手を拘束するようにできているんですよ?」
え・・・?結界ってそんなトラップみたいなものだっけ・・・?
彼女がこのまま放置して朽ちていくのを待ってもいいですが、面白いので見に行きましょう。と性格の悪さを露呈させる発言をしたので、外に見に行くことにした。
カァーカァーカァー!
鳥居には一羽の鴉が中央辺りに固定されていて、身動きが取れずもがいているようだった。辺りには羽が散乱していて、なんとも可哀想な有様だ。よく見るとその鴉は足が3本あり、他の鴉とは毛色が違う事を示している。
「お、八咫烏ですか。何の用ですか?」
彼女はそう言いながら鴉に近づき、羽を無造作に一本毟り取ると鴉の目の前でヒラヒラとなびかせた。たぶん、この行動に大した意味はないのだろう。たんにおちょくってるだけだと思われる。鴉は暴れるのをやめ、深いため息をついたあと
「君のお父様に君の様子を見てきてほしいと頼まれたのだ」
か、鴉が喋った・・・!その声はなんとも凛々しく、僕は少し羨ましい!と思ってしまった。彼女は驚いてる僕をよそに大して驚いてはおらず、それどころか、どこか冷めた表情をしていた。
「おかしいですね?この結界は私に対して悪意がないと発動しないようになってるんですが?」
「君の地元で君に悪意がない者などいるのかね?いたとしても、あの方達と貧乏神の子ぐらいだろう?」
彼女はニッコリ★笑うとプチッ プチッ プチッ プチッ と無言で羽を毟り始めた。鴉はあきらめたようにうなだれ、されるがままになっている。さすがに可哀想になったので、彼女を止めた。
「可哀想ですし、それぐらいにしてあげましょう」
「え?あなたはどっちの味方なんですか?」
彼女は僕の方を向きニコー★と笑った。こえええええ。いつになく機嫌が悪い。ごめんね?鴉ちゃん。
彼女は無言になった僕から鴉の方に向き直り
「まぁいいです。ところでお父様には何と報告するつもりなんですか?」
「ろくでもなかった・・・。と報告するつもりだ」
「ねぇ?足が3本あるって邪魔じゃないですか?一本抜いてあげましょうか?こんなふうに」
そう言うと彼女はまた羽を毟り始めた。プチッ プチッ プチッ
「仕方ないではないか!!!吾輩だって、あの方達に君の良い報告を持っていって喜ばせたいのだ!だが、どうだ?君達ときたら怠けてばかりでろくに働きもしない!何か活動をするのかと思えば貧乏神の子と踊りだしたり、穴を掘ったり、半裸の男を家から引っ張り出したり!ろくでもない以外にどう報告しろと言うのだ?!」
鴉は力の限り叫んでいた。僕は僕達の今までの行いを思い出してみた。確かにろくでもないという感想しか思い浮かばない。
「お父様には、とてもとても立派になっていたと報告しなさい」
そんな熱の入った鴉をよそに、彼女は事も無げにしれっと嘘の報告をしなさいと強要する。
「あの方達に、吾輩は嘘をつけぬ・・。それなら、君が直接報告に行くといい。あの方達も喜ぶぞ。吾輩はここでは何もなかったことにして、帰るのを遅らすことにする・・・。とにかく羽を毟るのをやめないか、帰れなくなってしまうだろ」
彼女は手を止め、少し考えてから
「でも、一千万貯まっていませんよ?それでもいいのでしょうか?」
「あの方達だって、親なのだ。たまには君の顔が見たいのだよ。だけど、立場上そんな事を言うわけにはいかないのだ。だから吾輩に様子だけでも見てきてほしいと頼んだのだろうよ」
彼女はんーっと悩み
「わかりました」
とだけ鴉に返した。
動物虐待はダメです。絶対><




