神友(三)
貧乏神、取りついた人間やその家族を貧困にする神。基本的には薄汚れた老人の姿で悲しそうな表情をしている。押し入れによく好んで住みつき味噌が好きだとか。囲炉裏の火が苦手だとか。
「貧乏神ってあなたね・・・馬鹿なんですか?一千万貯めるのに貧乏神呼んじゃうって馬鹿なんでしょ?」
「私の神友を悪く言うな!!」
ぼこぼこぼこぼこ
目が覚めると昼であった。
「やっと起きましたかー。死んじゃったんじゃないかと思いました。そろそろ埋める?って永遠ちゃんと真剣に話し合っていたとこなんですよ?」
「ッチ」
「永遠ちゃん露骨な舌打ちはやめて・・・」
僕はそう言いながら体を起こした。体のあちこちが痛くて気絶した後も殴られ続けたのがなんとなく解った。
「今・・・何日ですか?」
「永遠ちゃんが来たのが昨日のことです。まぁあなたが失神してだいたい20時間くらいたちましたよ。」
「もう・・やめてもいいですか?」
「あなたが永遠ちゃんの悪口言うからですよ。許しませんからね私は」
あれだけ殴っても足りないらしい。許さないのは僕の方だ・・・。
「あなた達、僕が気を失ってる間になにをしてたんですか?」
「ご飯食べてました」
「普通だ・・」
「あなたの分もせっかく用意したのに、ゆすっても起きなくて、むかついてあなたのお腹おもいっきり蹴ったら、ぐふぅとか呻いてアルマジロみたいにに体丸めてましたよアハハ。」
「よく笑えるな!!」
永遠ちゃんはお腹を押さえてピクピク震えていた。どうやら僕のその姿を思い出し腹がよじれるほど笑っているらしい。この時、彼女と永遠ちゃんはホントに仲良しさんなんだなと嫌々思い知らされた。性格悪すぎる。。
「でー永遠ちゃんにアイドルやりませんか?って話したんですけど、永遠ちゃんしぶっちゃって、なんとかしてくれませんか?」
「は?あなた何言ってんですか?」
「あなたは賛成してくれてたじゃないですか!!」
ぼこぼこぼこぼこ
目が覚めたのは夜であった。
「今・・何日ですか?」
「まだ日付変わってませんよ?・・・なんだか打たれ強くなりましたね・・・。」
嬉しくない・・。
横を見ると永遠ちゃんが俯いて涙をポロポロこぼしていた。一瞬僕のために涙をこぼしてくれているのかな?と思ったけど、そんな事ないかとすぐ正気に戻る。
「アイドルとかアイドルとかアイドルとかありえん」
永遠ちゃんからそんな言葉が聞こえてきた。人前に出るの苦手そうだもんね永遠ちゃん。
「嫌がってるじゃないですか永遠ちゃん。やめてあげましょうよ。無理矢理やらせたっていいことないですよ?」
「永遠ちゃん・・あれ無しですよ・・・?」
彼女がそう言うと永遠ちゃんは、目を大きく見開き、口をもごもごさせていた。
「いいんですか?私はどっちでもいいんですよ?」
永遠ちゃんが彼女の方に顔を向けながら、ポロポロ涙をこぼしていた。頬は上気し、なぜか色っぽい。
あれとは、なんのことだろうか・・?永遠ちゃんをここまでさせるあれとは一体・・・。僕はまたぼこぼこにされて、時間をすっ飛ばされるのも嫌なので、永遠ちゃんには申し訳ないけど見守ることにする。頑張れ永遠ちゃんと思いながらお茶をすすった。
「わ、わかったよぉ」
永遠ちゃんは思いの他すぐ折れた。だけど、涙は止まらずコタツの布団を濡らしている。そうか永遠ちゃんもまた被害者だったか。僕は永遠ちゃんに共感していた。
「ふふ、じゃぁあれ・・用意してきますね。待っててください」
その瞬間永遠ちゃんは、今まで見たことがないくらい目を輝かせ、顔に生気が戻った。涙も止まり、顔に光が差し永遠ちゃんが本来持っているであろう愛らしさが全面に押し出されてくる。
「は、はやく・・」
今までで一番大きい声でのおねだり、彼女はわかりましたと行って部屋を後にした。永遠ちゃんは彼女が戻ってくる間そわそわして、なんとも可愛らしかった。
今晩の夕食は味噌田楽だった。




