神友㈡
「こちら、鐘無死永遠ちゃん。私の神友です。」
歓迎会から二日後の午後。彼女は僕に神友?とやらを紹介してくれた。僕の向かいで炬燵に入りペコリと頭を下げた少女は着物を着ていておかっぱ。まるで日本人形のような出で立ちでなんとも可愛らしかった。神友というからには何かの神なのだろう。座敷童・・僕の中のイメージではまさしくそれだった。
「永遠ちゃんこの人は・・・奴隷・・んー違った違った。お手伝いさんです」
僕は突っ込むのも面倒なので、何も言わず頭を下げた。永遠ちゃんと言われた少女は俯き、顔を赤らめながらもじもじしている。なんとも落ち着かないようだが、その仕草がなぜかとても可愛らしく僕は自然に笑顔になってしまう。
「どうも、永遠です」
とてもか細い声で顔を赤らめ、俯きながら自身の紹介を短めに終えた。正直すごい可愛い。
「永遠ちゃんは、すごい恥ずかしがり屋さんで、あとすごい人間嫌いでもあります」
人間嫌い?永遠ちゃんは顔を真っ赤にして小さい拳で彼女をポコポコ叩いていた。自身の事をそんな風に言われて怒っているのだろうか?ヤバイすごい可愛い。それから僕の方をチラチラ見るとなにやら彼女にコソコソ耳打ちをしていた。恥ずかしいのだろうか?彼女は永遠ちゃんに耳打ちされながら僕の方を見てはフムフムとなぜか難しそうな顔をして頷いている。
「えっと・・・お願いだからこっちをじろじろ見ないでくれませんか?気持ち悪すぎて吐いてしまいそうになります。一生鏡と会話していた方が神様のためのお手伝いになりますよ?トイレとかどうですか?便器に頭突っ込んでそのまま排泄物になってほしいんですけどダメですか?と永遠ちゃんが言っています」
と耳打ちを終えた彼女が言った。え?誰が?なんだって?僕は彼女と永遠ちゃんを交互に見る。彼女は神妙な面持ちで目を瞑り、永遠ちゃんは、顔を手で覆って頭を振りなんだかすごい恥ずかしそうにしてから、また彼女をポコポコ叩いていた。
あーわかった僕と永遠ちゃんを打ち解けさせるために彼女が冗談を言ったのだ。それにしたってあんまりだなぁ永遠ちゃんだって初対面の相手に対してそんな事を言ったと嘘をつかれたら怒るのも無理がないだろう。
「そのまんまいっちゃダメだよ」
ポコポコ叩きながら永遠ちゃんのか細い可愛い声が聞こえた。そのまんま?どのまんま?。
たぶん何かの聞き違いか勘違いだろう。永遠ちゃんは彼女を叩き終わるとまた耳打ちをしようとしている。僕は耳を澄まし永遠ちゃんからの耳打ちを盗み聞ぎしようと試みた。そうすると断片的な単語ではあったが永遠ちゃんから可愛い声が、手の隙間から僕の元まで届いてきた。
「ごみクズ、豚、単細胞、偽善者、変態、ごみクズ、腐った雑巾、ごみクズ、ごみクズ」
聞き取れた単語一覧である。この単語を全部使い、好意的な会話文を形成しなさい。お願いします。永遠ちゃんは顔を赤らめ耳打ちしながらもこっちをチラチラ見ている。その姿はとっても愛らしくたまに聞こえてくるごみクズは、僕の幻聴なんだと自分に言い聞かせることで精神の崩壊を防いだ。
「えーっと・・・あなたがとっても嫌いだそうです」
さすがの彼女も気を使ってくれたのか、聞こえてきた単語より随分ソフトな感じで僕に伝えてくれた。当の永遠ちゃんは、横で満足げにウンウンと頷いていた。勘違いではなさそうだ・・・。
「永遠ちゃんってどういう神様なんですか?」
僕は動揺をうまく隠せず、震える声で彼女に聞いてみた。彼女は言いにくそうにして目を逸らし、永遠ちゃんの方に目を向けた。永遠ちゃんは僕の方をキツク睨み、口の動きだけで「ごみクズ」と言っていた。
「えぇっと・・・貧乏神です」
僕は笑顔が引きつっていくのを隠そうともしなかった。




