彼女の神力
一日目
草むしり
二日目
境内の掃除
三日目
彼女の家の掃除
四日目
階段や鳥居の掃除
五日目
彼女と将棋で遊ぶ
六日目
彼女が録画していた特番を見る。
七日目
これじゃぁダメだと頭をかかえる。
早くも一週間が過ぎました。一日目の頃はよしやってやろうという気持ちだったのですが。掃除しかすることがなく、四日目には僕が出来る範囲はだいたい終わってしまいました。五日目からは遊んでやりました。その間お客は一人も来ませんでした。さすがに異常じゃないですか?
「ずっとこんなんですよーあなたも諦めて昨日の将棋の続きしましょうよー」
「あなたね、感覚が麻痺してますよ。本気で一生ここに縛り付けられますよ」
「それは困りますね」
バリっと彼女は煎餅をかっこつけて齧る。全然かっこよくないのだけど。
「そういえば、普通にモノ食べますよね?神様なのに」
「お供え物とかあるじゃないですか?神様だって普通に食べますよ。生きているんですから」
お供え物ってそうだっけ・・?
「普通の人にはあなた、見えないんでしょ・・・?煎餅が浮いてるように見えるんですかね?」
「見えてない人にはいつの間にか無くなったように感じるみたいですよ。ほら、神隠しってやつですね」
煎餅にも神隠しってあるんだ・・・?
「ていうかお供え物なんてここには来ないでしょ。。あなた一体どうやって食物を手に入れてるんですか?」
「仕送りです」
神様にもダメなやつっているんだ。。。!!
掘り下げれば掘り下げるほど、人間よりになっていく。もうちょっと神様らしい事はないのだろうか。
「何かこー奇跡とかないんですか・・・?」
「んー・・・まぁ私の自信作はこの家ですね」
「そういえば、この家どうなっているんですか?神様の家ってみんなこうなんですか?」
「いえいえ、私のオリジナルですよ。下界の科学と私の神力を融合させた超ハイブリット使用になってますから」
超アホっぽい、でもやってる事はすごいのだ。彼女曰く許可無しではあらゆる事が制限されるのだとか。一度空き巣が入ったのだが、その空き巣は今も行方不明なのだとか。
「下界にそんな技術ないですよ・・・すごいんですね神力って」
「いやいや、ありますよ。本に乗ってた下界の技術を私が真似して神力で作っただけなんですから」
「はいはい、こんな技術があれば日本どころか世界中大騒ぎになりますよ。」
「ふ・・あなたってホント馬鹿なんですねー・・勉強不足にもほどがあります。いいでしょうその本を今から持ってきますよ」
え・・?本当にあるの?彼女はコタツから立ち上がると、どこかの部屋にゆったりと歩いて行った。その後ろ姿は自信に満ち溢れ変なオーラさえ見えてきそうだ。
実際この家を作ったわけだし、本当にあるのか・・?でも家が意志をもつなんて話聞いたことがない。じゃぁ一体彼女は何を持ってくるというのだろうか。
「おまたせしました」
彼女はそう言いながら、足で障子を開く。そうしてコタツの上に両手にかかえていた例の本をドサッと置いた。
「これがそうですよ。学の足りないあなたは特に何度も読み返すといいですよ」
僕を馬鹿にしながら自信たっぷりに置いたそれはド○えもんひみつ道具大辞典だった。彼女のアホをこれでもかというほど覆い隠す彼女の神力というものに、僕は心の底から畏怖せざるへなかった。




