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神様気分  作者: みつる
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言い訳

家が駐車場になっていた。いや元々駐車場だったらしい。二時間調べ廻って得た成果がこれだ。僕は駐車場を自分の家だと思い込んでいたらしい。そんなはずはない。



私は5年もの間、色々してみてはいたのです。場内はできるだけ綺麗にしましたし、来客用のお菓子だって、期限が切れないように管理して出来るだけ美味しいものを選びぬきました。体制はいつだって万全であとは、誰かが私を見つけてくれるだけでした。



僕には心当たりが確かにあった。すんなり帰したなと思ったらこれだ・・。さすがに腸が煮えくり返る。身の周り整理じゃなくて心の整理と言い直したのはこういうことなのだろう。身の周りは私が何とかしておきますと。



私は確かに神様ですが、だからといって自分から何かが出来るわけではないのです。誰かに願われるから私達は存在しています。もし人々が神様を必要としなくなればそれは人にとって大変喜ばしい事なんでしょうね。



会社に電話がつながらなくってまさかと思って調べたら、そんな会社は存在していなかった。じゃぁ僕は今まで何をやってきたのだろう。ありえないことがおこりすぎてどうしていいかわからない。



人から願われない神社なんてそんなの、普通の民家におっきい貯金箱があるだけじゃないですか?5年間まともに人が来ないでどうしていいかわからない私は、そんな、どうでもいい事ばっかり考えてしまいます。必要とされない、誰も知らない、それは神様といえるのでしょうか。



僕は今朝登った階段をまた登る。辺りはすっかり夜で階段を上るごとに街の音が小さくなっていく。まるで階段を上がる事に夜が深くなっていくようだ。登りきるとそこには月に少しだけ照らされ光る不気味な神社があった。



まさか正月に人が来るとは思いませんでした。だってそれはお参りしにきたということなのですから。しかもその人は私が見えてるみたいです。もう嬉しくて嬉しくて私が神様だというのに、神様に感謝してしまいました。


ジャリジャリ・・砂利をこする音だけが境内に響く。

動くものが僕だけなのだろうか、ジャリジャリ・・その音以外に一切の音が聞こえてこない。何もかも死んでしまっているみたいだ。僕はかまわず歩を進める。



久々に人と喋ったら上手く話せませんでした。でも、楽しくて嬉しくてついつい私は喋りすぎてしまいます。彼は千円もいれてくれて、私は色々な感情が入り混じって泣きそうになってしまいました。


彼女の家が見えてくる。明かりがついていて、何かいい匂いがしてくる。夕飯の支度をしているのだろうか。こんな事をしておいて呑気なものだ。僕は怒りをより一層強める。



彼はお参りが済むとさっさと帰ろうとしてしまいました。お願いだから行かないでほしい。もう少しだけでもいいから居てほしい。私は強くそう思いましたが上手く言葉にできません。やり方はよくなかったかもしれないけど・・でも・・・。



ノックもせずに家に上がる。靴を脱ぎちらかして廊下を歩く。家に入れたということは彼女が許可してるということなのだろう。とりあえず家と仕事をどうにかしてもらわないと。



彼と話すうちにずっといてほしいと強く思うようになってしまいました。独りはダメですね。いつの間にか心が弱くなってます。

縛り付けるために彼に貸しをつくりました。これである程度、私は彼に力を使う事が出来るでしょう。ひどいことだとは解っているのですが。。



彼女と僕がいた部屋に近づく。部屋には明かりがついていて、僕は彼女がいるのを確信する。



彼の認識を少しだけずらしました。彼は怒るでしょうね。私は精一杯勇気を出して嘘をつこうと思います。



障子を開ける。彼女は僕が帰った時と同じ位置で正座してお茶を飲んでいた。



彼が来ました。やっぱり怒ってます。それはそうですよね。でも4時間くらいしか経ってないのに、なんだかなつかしくって嬉しくって、私は笑ってしまいそうになりました。



彼女の向かいに無言で座る。彼女も僕が何のために来たかわかっているのだろう。こっちを見ようともしない。そういえば初めてちゃんとお願いをするんだな。


彼は一月以内に死んでしまうでしょう。でも、もしかしたら私の傍にいれば回避ができるかもしれません。ホントは都合のいい我儘で、たんに傍にいてほしい言い訳なのですけど。それでも、きっと彼にとってもそれがいいんだと信じます。







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