自称神様は逃がさない
賽銭箱に頭突っ込んだ人はあとかたもなく消えていて、正面にはいつの間にか、女の人が立っていた
「あれ・・?確かにいたのに・・・」
「あららー誰もいませんね?!逃げちゃったみたいですね?!まかせてください!この件は私が処理しますので!くれぐれも!あなたが警察などに密告・・じゃなくて相談!しないようにしてくださいね?!」
彼女は早口でそう申し立てて、額にじっとりと浮かべていた汗をぬぐった。
どう考えてもあやしい、関係者で何か知っているのだろう。僕はそう勘ぐって、この件は深く踏み込まないようにした。
「わかりましたお願いします。僕は少し用事がありますので、これで」
僕はそういって、すぐにここから立ち去ろうとした。
「ま、待ってください!この神社になにをしにきたんですか?!オ、オマイリなどではな、ないですか?!い、今サービス期間らしいですよ?!なんかお得で!すごいらしいですよ!ご利益3倍だとかなんとか!!」
必至すぎる。。潰れそうな商店街が投げやりにばら撒く商品券みたいだ。そもそもそんな安売りしてしまえる神様に、ご利益などないだろうに。0に3倍にしたってそれは0にしかならないだろうし。
「でも、、賽銭箱に頭を突っ込んだ人を見てしまいましたし・・・何か自身すら守れない神社が、なんのお願いを守るんだ?って話じゃないですか?アハハ」
僕は冗談めかして、つい本音を打ち明けた。普通の人なら固まり、怒るか寂しそうに笑うか、はたまた冗談で返すかである。
「私はここの神様です」
意味不明な切り返しに、僕は戦慄した。
「そうなんですかーではこれで!」
できるだけ平静を装いつつ、今にも瓦解しそうな橋の上に立ってると気づいた僕は、彼女の次の言葉を待たずに階段に向かって一目散に走り出した。
後ろを振り返らずに境内を抜け、階段に向かう。すると階段の中段あたりに先ほどの女の人が立っていた。
「逃げられませんよ?お参りをしてもらうまではね!!」
僕は正月に神社にくるのは2年ぶりくらいなのだけど、僕の知らない間に参拝の形式が変わったらしい。。お参りするまで逃げられない。




