蛸の神様
あらすじ・・神様から四の地固めをくらう
「痛い痛いギブギブギブ」
「パスワードが違いまーす」
ギリギリギリ、そんな音が聞こえそうな締め上げに僕はたまらず音を上げる。
「無理強いできないんでしょ?神様は悪いことできないんでしょ?妖怪ですよねアンタ?」
「なんのことですかねー妖怪?!あぁ・・それ締めるワードですね~もうちょい強くしますねー」
「わかりましたわかりました手伝いますから離してください!!」
「なんだか無理してるなー言い方も大事ですよね・・?」
少しだけ足の力が弱まる。その間にちゃんと言え。ということだろう。やり方が手馴れすぎている。
「わかりました・・・。手伝わせて・・・ください・・。」
何かが崩れる音がした。プライドだと気づくにはそう長くはかからなかったのだが。
彼女はいそいそ足をほどくと、最初からそういえばいいんだよという態度でフンっと僕を一瞥した。こんなやつの下で働くのか?足の痛みなんかよりくっきりとした痛みが僕の胸を締め上げる。
「おめでとうございます。信者第一号ですね!いやぁ特典とか考えないとなープロマイドとかどうですかね?あー、神様アイドル神ドルなんていいかもしれませんね?いやぁ、アイデアがどんどん浮かぶなー」
務めて明るく彼女は話す。まるでさきほどまでのやり取りをなかったようにするみたいに。どうですか?それどころじゃねぇですよー?と危うく返しそうになる。
足をさすりながら彼女に聞いてみる。
「神様だから人に優しくしないといけないとかないんですかね・・?」
「逆です人が神様を敬い優しくするものです」
最近の若者はなってないですねーと彼女は冗談めかして言っている。なんとなく気に入らない。
「神様は人の許可がない場合は無理できないとかないんですかね?」
「そんなルールありましたっけ?」
ないみたいですね・・・
「じゃぁなんでさっきから僕の言質をとろうとしてたんですか・・?」
「神様なんだし無理矢理とか感じ悪いじゃないですかー?あなたがしたいからするんですよね?」
「いや、したいわけじゃぁ・・・」
足が触手のようにからまってくる
「なくはないんですよぉ」
蛸の妖怪かな?何を祀っているんだろこの神社は。僕はボンヤリ天井をみながらそう思った。
たんに、彼女の安っぽい正義感のために振り回されたらしい。あれが無理矢理じゃないとすると世の中の犯罪は犯罪と認められずに激減して、表面的には今より平和な世の中になるだろうなぁと意味もないのにそんなことを僕は考えていた。




