話が動く
「所であなた暇ですよね?」
「失礼ですねあなた・・・」
いつも唐突に切り出してくるの勘弁してくれませんかね・・。彼女はむむっと唸ると何かを考え込んでいるらしく正座したまま腕を組み、難しい表情をしている。
「でもですねー・・そのうち暇になりますよ?」
「それは、あなたが、私の私生活に対して何か手を加えるということで、よろしいんでしょうか?」
「はい、いい意味で、です」
よくないんだろーなぁたぶん。
彼女は何かもじもじしながらこちらの様子を伺っている。いちおう物の頼み方は弁えているらしい。
最後は力に頼ることになるとしても、最初のうちだけでも、こういう控えめな態度というモノを大事にしてもらいたい。ふいに彼女は顔を上げ、まっすぐ私の目を見つめた。その眼は熱をおびていて何か決意を固くきめたような力強さが宿っていた。
「手伝え」
彼女の簡潔なその一言は、今までの彼女の人生とこれから起こるであろう苦難をすべて表現さししめしていた。たまらず僕は口を挟む。
「あんなに考えてそれなの?一体何考えてたの?」
「あなたがどうやったら言うこと聞くかですよ?殴るか蹴るか命令するかの3択でしたね」
悩みましたよ~と彼女はスイーツがどれも美味しそうで選ぶのに苦労しましたよ~という感じの笑顔でそう言った。その笑顔と残虐性のギャップが僕の恐怖をなおさら引き立てる。
「まぁ3択っていってもあなた次第で全択って事もあるんですよー早めにあきらめちゃいましょ?」
「ちょっと考えさせてください」
逃げる手段を・・・とりあえずこのままじゃ殴るか蹴られるかだ。話を逸らしつつ時間を稼がなければならない。
「手伝うって具体的に何をするんですか?」
「・・・ビラ配りとか?」
「神社で?聞いたことないですよ・・?はぁ・・・さすがですね。誰も思いつかないような発想をいとも簡単に!斬新ですね!」
彼女が僕の話し中に急にニコニコしだしたので、けなすつもりだったのだけど急転換で褒めてみた。すると彼女は真顔に戻り僕を疑うような目をして見てきた。最初からそういう表情してればこっちもわかりやすいんだよと。僕は冷や汗をかきながらそう思った。
「ですけど、ビラ作るのにもお金がいるんですよ?それにビラになんて書くんですか?お賽銭お願いしますとでも書くんですか?」
「それを考えるのもあなたの役目です」
ようは丸投げだろソレ
「そんなに暇じゃないんですよ僕は。仕事だって生活だってありますもの」
「暇になりますよ?だってもうすぐ死にますし」
え・・?最悪殺されるの・・?




