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私には毎日の楽しみがある。
それは、とあるサイトに自作の小説をあげること。
もっとも、大した文章能力があるわけでも、アイディアがある訳でもない私の作品は常に「ありがちな展開」ばかりで、あまり良い評価をもらったことはない。
サイトは、1~10までの点数で読者が評価をつけることができるが、常に評価は3か4。
できれば5以上にしたい--そんな願望が、楽しむ一方で私の中に蓄積していた。
そんな、ある日のこと。
気分転換に書き始めたホラー小説が、5の評価を受けた上に、コメントまでされていた。
始めたばかりとはいえ、作品の内容自体はありがちだっただけに、私は、驚いた。
早速、コメントを読んでみると……
『無名: 5 ○○○○○』
思いの他シンプルすぎる内容に私は眉間にしわを寄せた。
無名はネット上なら良くあることなので別段気にはしなかった。
問題は、コメントの『5』という数字と○○○○○という人名と思しき名前だ。
5は、評価のことであろうか?
にしても、何故人名が書いてあるのだろか。
それに、何故か見覚えがある名前なのだ。
たしか、どこかで見たことが…聞いたことがあるはずの名前…。
私は暫し首をひねったが結局思い出せず、気のせいだろうと思い直し作品の続きを掲載することにした。
そして、翌日。
更新しようと開いてみると、またコメントがついていた。
『無名: 4 △△△△△』
また、数字と見覚えのある名前だ。
しかし、肝心なところで思い出せない。
違和感を感じつつ、私はその日も更新をした。
翌日
『無名: 3 ×××××』
あと少し、あと少しで思い出せそう。
しかし、今日も思い出せない。
でも、何故だろう? 言い知れぬ恐怖が、ゾワゾワと身の毛を立たせた。
更新は、しなかった。
そして、4日目。
例により、コメントが書き込まれていた。
正直、怖かった。
でも、一方であと少しで思い出せそうな人名に、今日こそは答えが得られるだろうという予感があった。
嫌な汗をかきつつ、コメントの欄をクリックする。
『無名: 2 □□□□□』
見覚えがある名前だ。
いや、あるに決まっている。
だって、この名前は――。
次の瞬間、隣の部屋から物凄い物音と、叫び声がした。
私が恐怖に震えあがっていると、数分で音はやみドアが開く音がする。
そして、私の部屋の扉がノックされた。
「明日は、お前だ」
名前は、隣の部屋の人のものだったのだから――