第三話 鏡
「さぁ、お入り。」
出てきたのは、初老の白いひげを少しあごに生やした普通のおじさんだった。(おじさんというよりおじいさんだけど。)
「おじゃましまぁす。」
小さな小屋の中はやはり狭く、その狭い中にぎゅうぎゅうに暖炉やテーブル、ロッキングチェア―、キッチンなどが詰めてあった。
そして、暖炉があるせいか、とてもぬくもりを感じた。
ルイは小さな机の前にあるソファに座った。僕も、ルイにつられ、隣に座った。
「その子が、リンか。」
初老の男性は、暖炉の前でルイに真剣な顔をして聞いた。
「そうだよ。どう思う?ダン。」
ルイが初老の男性にそう聞くと、う〜ん…とうなった。
「そうじゃ、リン。君にはまだわしの名前を言っとらんな。」
急にふられた僕は少しひるんだが、軽くうなずいた。
そういや、またこの人にも名前を知られている。僕は心の中でため息をついた。
「わしは、ダン・クラーク・キング。近くの教会で牧師をしておる。君の話はルイから聞いとる。」
僕はルイのほうを見た。ルイはすぐ僕の視線に気づき、にこっと笑みをくれた。
なぜ、ルイは僕のことを以前から知っていて、ダンに話しているんだ。
なぜ…なぜ…
「君は、空が好きなんだね。目がきれいな空色になっておる。」
僕の目は、純粋な茶色だ。空色なんていう青は少しも入っていない。
「視えるの。ダンには、その人の“色”が。」
「色?」
ルイとダンは目を合わし、アイコンタクトをした。
そのとき、暖炉からボンっと小さな爆発音が聞こえた。
「おっ…ジャストタイミング!」
暖炉の中に、羊皮紙で包まれた小包が現れていた。
ダンは小包を手にとると、そっとひもを解きそれを開けた。中には手鏡のようなものがあった。
「何ですか?それ。」
リンがダンに近づき、その手鏡のようなものを手にとった。
「ほら。」
僕の目の前に、バンッと持ってきた。
すると、目に映ったのは空の背景に深いコバルトブルーの服を着た僕だった。そして、瞳が空色をしていた。
僕は、後ろを見た。鏡に映っていた空はない。
体を見た。僕が着ている服は黒の服にGパンだ。
「どういう事?」
もう一度鏡を見た。
「だから、それはダンがもっている力と同じ、“色”を視れるんだよ。色っていうのは、その人の個性や能力、才能によって変わるの。私は烏を操れる能力を持つ。色は黒。」
「わしは赤。火を操れる。」
僕は、信じれなかった。ルイは確かに烏を操っていた。だけど、そんなの聞いたことない。
「信じられないようじゃな。さぁ見てごらん。」
ダンは、そういうとパチンと指を鳴らした。
すると、人差し指から小さな火が浮き上がった。
「僕の能力は何なの?」
とても気になって、興奮してしまった。
「それは…。」
ダンは意味ありげな笑みを浮かべた。
「何なんですか?ダンにはわかるんですか?」
* *
そのころ、空から雪がふっていた。
朝には、積っているだろう。
旅立ちは、痛いほど冷たい冬の風が出迎えてくれるのだろう。




