第一話 空
今日もまた、上を向いたら青い空が広がっていた。
* *
僕が今日もこんなに美しい青空を見れるのは、あの日があったからなのかも知れない。
* *
「ねぇ、」
振り返るときれいな黒髪の少女が可愛らしいワンピースを着て立っていた。
「どうしてずっと上向いてるの?」
僕は目の前にいる少女の美しさに自分が頬を赤らめている事に気づいた。
僕は考えもしなかった。なぜ自分が空を見ているのか。それは・・・
「僕にもわからないんだ。君にこの謎を解いてもらおうかな??」
僕は笑いを含めながら言った。別に、本気で言ったわけじゃないんだよ。ただ、君を見てるとじょうだんが言いたくなっただけなんだ。
「じゃぁ、行こう。」
「えっ」
今、僕は名前も知らない少女に手をひかれ、走っている。
どこへ行くのだろう。気になるけど、聞かない。なんだか、この少女についていくと心地が良かった。
「あっ」
急に少女は止まった。僕は急に止まった勢いで少女にぶつかった。少女から桜のようなかすかな花の香りが僕の鼻をつついた。
「リンに名前言ってなかったよね。」
たしかに聞いてない。だけど、僕も君に名前を教えていない。
「なんで僕の名前知ってるの・・・かな?」
「知ってるからだよ。」
そんな笑顔で言われても、答えになってないし。どう考えても答えになってないって。
「私の名前は、ルイ・ミカ・マクダウェル。なんとでも呼んで。あと、さっきから年下みたいに扱ってるけど、あんたより八歳年上の二十五歳なんだからね。…ま、いいけど。」
”ルイ・ミカ・マクダウェル”きれいな名前だ。それにしても、年上だとは。明らかに見た目は僕より三歳は年下だ。
そんなことを考えているうちに、空はすっかり赤く染まっていた。どれだけ走ったのだろう。ここはどこなのだろう。無我夢中にルイについて走っていたのだろう、思い返してもどこを走ったのか思い出せない。
「さぁ、もうすぐだよ。」
「もうすぐ?」
太陽がビルとビルの間に沈んでいく。
ちょうど太陽が見えなくなった時、ルイは口笛を短く鳴らした。
すると、沈んだ太陽の方から黒いかげがたくさん近づいてくる。どんどん、どんどん、近づいてくる。
よく見ると大量の烏。
「何あれ…」
「烏だよ。」
僕が聞きたいのはそんな答えじゃないって。
「あれに乗るよ。」
「え?!」
* *
君は、乗った。それが君の終わりであり、始まりでもあった。
彼女についていくことが果たして正しかったのか、そうでなかったのかは、私にもわからない。




