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うりふたつ

作者: WAIai
掲載日:2026/10/28

「ー今日はどんな髪にする?」

そう聞いたのは、美容師の高橋友也で、ケープを巻いている。

客はにこりと笑うと、注文する。

「夏でも暑いから、短くきって」

「はいはい。分かりました、翔」

翔ー小田翔は14歳、若い客だった。

2人は魔法グッズの仲間で、うちとけていた。

夏の日差しがスポットライトを当てようとするので、ブラインドで阻止する。

エアコンが効いており、室内はちょうどいい温度だった。

「短くね、短く」

友也は呟くと、ポケットから折りたたみ式の鏡を取り出す。

そして手のひらサイズの鏡を開くと、手を当てる。

すると鏡の中からもう1つの手が出てきて、友也の姿となる。

「ーはい、任せた」

手を出すと、もう1人の自分とハイタッチし、友也は腕を組んで様子を窺う。

「出た!! 魔法の鏡!!」

翔が興奮気味に言う。

友也は静かにうなずくと、翔に聞く。

「今日も魔法の靴で来たのか?」

「もちろん!! 時速40キロくらいかな」

ケープから手を出し、親指を立ててくる。

友也はやれやれと微笑むと、1言告げる。

「バレるなよ? それと危険なスピードは出さないこと。いいな?」

「うん!! 友也さんの言う通りにする」

翔が明るく言うと、室内がパーティーしているみたい賑やかになる。

その間、もう1人の友也は動いており、翔の髪の毛を何ブロックにも分けてゴムでとめていく。

「友也さんだって、一歩、間違えれば危ないぜ? 美容師免許を持っているのに、どうして魔法の鏡を使うの?」

「大人の事情だ、大人の」

「何、それ。子ども扱いするなよな」

翔が膨れると、友也はくすりと笑う。

見ていて飽きない少年だった。

「そうだ!! 新しい仲間を見つけたんだよ!!」

「え…? 魔法グッズの?」

「そう!! 空飛ぶ傘を持った可愛い子」

「どんな子?」

「秘密。友也さんに取られたくないもの」

「この野郎。じゃあ言うな」

全くと首を振ると、もう1人の友也が髪のカットを始める。

友也はそれをじっと見、大丈夫そうだとOKを出す。

ーしかし中学生で彼女か。懐かしい。

多感な時期に恋人を作れるなら、この子は大きくなっても大丈夫だと安堵の息を吐く。

恋愛にいかず、勉強ばかりだと、息が詰まってしまって、いい大人になれるかどうか分からなかった。

ーもう何年の付き合いだ?

翔を発見したのは、10歳くらいの時で、すでに魔法の靴を使いこなしていた。

「ー髪を切るか?」

そう聞くと、にんまり笑ったのを思い出す。

「空飛ぶ傘か。なかなか面白いな」

「そうなんだよ!! たまたま出会ったんだけれど、その、明日葉学園の娘で、制服が似合っているんだ」

「そうか。頭の良い学校の娘なんだな。…お前は? 学校、どう?」

「勉強はさっぱり。得意科目は体育!!」

「体育ね…。それもいいけれど、ちゃんと大人になったら、何になりたいか考えろよ。時間はあるようでないんだから。早くしないと、じじいになるぞ」

「えー。じじいは嫌だな。何しよう?」

「好きなこととか、得意なことを伸ばしたほうがいい」

「じゃあ…スポーツ関係の仕事がいい!! 身体を動かすのが好きだし」

「なるほどな。…あ、そこはもう少し短く」

もう1人の友也に言うと、命令通りに動いていく。

翔と会話しながら見ていないようで、見ているのだった。

どんなことでも手を抜かない、それが友也のモットーだった。

「スポーツ関係か。体育教師とか、野球、サッカー、色々とあるぞ?」

「うん。急いで決める」

「馬鹿。急いで決めるな。大事なことはよく考えるんだよ」

「えー!! 早くって言ったり、ゆっくりって言ったり、面倒くさいな」

「大人になるってことは、面倒くさいことなんだよ」

翔の耳を引っ張ると、彼は顔を歪め、「痛っ」と呟く。

本当は頭を叩きたかったのだが、もう1人の友也がいるのでできなかった。

「あと少しで出来上がりだ。今のところはどう?」

「いい腕前!! 気に入った」

「毎回、気に入ってくれて、ありがとう。お前、正直だし、素直だから助かる」

「そうなの?」

「中にはうるさい奴らがいないわけではないんだけど…。理なんか言いたい放題だぞ」

「え、あの優しそうな人が? まじで?」

「あいつは私に甘えているんだよ。俺のほうが30代で年上だし。全く、俺だって甘えたいよ」

ぼやくと、正面の大きな鏡を見る。

14歳の翔と30代の友也では、大人と子どもと分かる差があった。

ー美は一瞬。でも昔に戻りたいかというと、そうでもないんだよな。

もう1人の友也も鏡に映っており、ハサミを動かしていく。

そろそろいいかと思い、口を開く。

「ストップ。もういい。後は私がチェックするから」

鏡を差し出すと、もう1人の友也が手を差し出し、鏡の中に消えていく。

大事そうに魔法の鏡をポケットに入れると、翔の髪の毛を構う。

「さらさらなんだよな、お前の髪。猫の毛みたいだ」

「そう? 俺的には、ヘアーワックスでまとまらなくて困っているんだけれど」

「スプレーとかムースとか、使ってみろ。人間、教わるのもいいけれど、体験するのが一番だ」

「分かった。色々と試してみる」

「よし」

翔からケープを取り、楽にさせてやると、友也は優しく声をかける。

「お茶、飲んでいくか?」

「もちろん!!」

「理からもらったパウンドケーキがあるんだよ」

「わお!! ますます食べたい!!」

「はは。分かった、分かった」

床に広がった髪をほうきで掃きつつ、了承すると、翔が鏡の前で全身を眺める。

「どうした? 気に食わないか?」

「あ、違う、違う!! 気に入ったから見ているの」

「そうか。それならいい」

髪の毛をゴミ箱に捨てると、ほうきを置き、手を払う。

「すぐに用意するから、座って待っていろ。…あ、安心しろ。理の魔法はクッキーのみだから」

「知っているよ。楽しみ、楽しみ。へへ」

明るい翔に救われ、友也は奥へ引っ込んでいく。

飲み物は何にしようとか、他にも何か出そうかなど考えつつ、ポケットを叩くと、

「これからも、よろしく」

と呟いたのだった。

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