ショートショート
夜中の二時だった。
机の上でスマホが震えた。
眠気の残る目で画面を見る。
『悠斗』
その名前を見た瞬間、心臓が止まりかけた。
半年前に死んだ友達だった。
事故だったらしい。
詳しいことは誰も話さなかったし、学校も妙に静かだった。
だから俺も、聞かなかった。
……いや。
聞けなかった。
通知を開く。
『まだ、あそこにいる』
意味が分からない。
数秒固まってから、誰かの悪戯だと思った。
『誰?』
送る。
すぐ既読がついた。
『お前だけ、来なかった』
息が止まる。
脳裏に、あの日の記憶が浮かぶ。
放課後。
悠斗から何度も電話が来ていた。
でも俺はゲームをしていて、あとで返せばいいと思って無視した。
次の日、悠斗は来なかった。
そして、そのまま死んだ。
スマホがまた震える。
『寒い』
『暗い』
『助けて』
指が震えた。
『どこにいるんだよ』
送信。
少し間が空く。
『学校』
その瞬間。
部屋の窓がコン、と鳴った。
四階だ。
ありえない。
なのに、また鳴る。
コン。
コン。
ゆっくりカーテンを見る。
開けちゃ駄目だと思った。
でも。
もし本当に悠斗だったら。
俺は震える手でカーテンを開いた。
窓の外には――
誰もいなかった。
ただ。
窓ガラスに文字だけが浮かんでいた。
『なんで来なかったの?』
スマホが鳴る。
『既読つけたよね?』
その瞬間、部屋のドアが開いた。
後ろから。
「……春人」
聞き覚えのある声だった。
既読って便利だけど、時々怖いですよね。
返せなかった言葉とか、見なかった通知とか、あとから急に思い出す時があります。
この作品は、“もしあの時返していたら”をテーマに書きました。




