第9話 うごめく肉塊
広い部屋の床一面に肉片が散らばっている。その一つ一つが震えている。松明の明かりをかざすと影が大きく動く。天井の蔦から液体が大量に滴り落ち始める。
ポチョン…… ポチョン ポチョンポチョン……
「勘弁してくれ。どれだけいやがるんだ?」
ユートの呟きをかき消すほどの液体の滴る音が重なる。
一斉に蔦がざわつき始める。落ちてくる液体が徐々に形を持ち、肉片となってくる。その肉片が集まり、肉塊が大きく育ち始める。
大きな広場に五つの肉塊がしっかりとした形となってくる。
「暗過ぎて向こう側の壁が見えない。どう思う?」
「向こうに抜け道がある事を願って行くしかねぇだろ。応戦してもさっきみたいにきりがなかったら俺等は死ぬ」
「離れないで。ここではぐれたらもう合流出来るか分からないよ」
「あぁ。お前も離れるんじゃねぇぞ」
その瞬間。
すべての肉塊の上の部分にぽっかりと穴が開く。
穴から内部の奥深くまで見える。
再び強烈な腐臭が漂う。
私とユートは剣を構える。
ヌチャァァアアア
肉塊は一斉に高く伸び上がる。
穴はどんどんめくれていき、眼球や人間の指らしき突起、そして歯や舌と思われる物が現れる。流れるようにめくれる肉塊の気持ち悪さに鳥肌が立つ。まるで人間の体をこね回して成形したかのようだ。
「行くよ!」
私は大きく踏み出して駆け出す。
「すぐ後ろにいる!」
私とユートは剣を振り回し、お互いに近くの塊を切り裂く。青黒い液体が飛び散る。斬られた断面がうごめき、まるで次々と分裂していくかのように数が増えていく。
斬った肉片が地面に落ち、震え、虫のように動き回る。
落ちた肉片の断面も痙攣しているようにうごめくと物凄いスピードで私達に向かって這って来る。
「ぅわああ!」
悲鳴に急いでユートの方を向くと、彼は必死に剣を振り回している。足元にはその切った小さめの肉片が無数にうごめいている。
指のような突起がある個体はそれを足のように動かしながら移動をする。移動した後には少し崩れてしまった肉片が石床の上に転々と軌跡を残している。
剣を突き出し、彼の足元の敵を挿して後方へと投げる。
自分の背後で動きを感知して腕を後ろに引き、剣の刃を後方の敵に突き刺す。
液体が大量に飛び散る。
異臭のする液体が手に掛かり、指が握った柄の上を滑る。
手首をひねり、刃を下から斬り上げる。
ユートが数歩進んだのを確認してから再び部屋の奥の方へと駆け出す。
二人でもたついている間も天井の蔦から肉片が絶えず落ちてくる。




