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ダンジョンの救助部隊  作者: 結城一
第一章 ダンジョンエリート

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第8話 トラップのネズミ

 私の叫び声に肉塊が一度プルンッと揺れる。

 再び、揺れる。

 切れ込みが徐々に広がり、中の眼球が忙しなく動きながら押し出されて出てくる。グリングリンと音がしそうなほど激しく動き回っていたが私とユートを見付けると真っ直ぐ私達と目を合わせる。瞳孔が開いていく。まるで獲物を見付けて歓喜しているみたいだ。

 ユートはそれに近付くと無言で斬る。腐敗臭のする薄い汁が飛び散る。刃が突き刺さった断面は僅かに震え、静かになる。

 

ポトッ ヌチャ…… ン

 

 どこかで何かが落ちるような音がする。

 

ズゥル ズゥル ズゥル

 

「ユート!」

「あぁ!」

 ユートは剣を肉塊から引き抜き、私と背中を合わせて構える。

 通路、天井、壁、再び通路。

 視線を走らせるが音の本体が見当たらない。

「見えない!」

「俺も見えねぇ! クソ、どこにいやがる!」

 

ズゥル ズゥル…… ヌチャヌチャ

 

 それがいた。

 ()()と言うよりは、徐々に()()()きた。

 壁から滲み出た小さな肉片達が集まり、少しずつ大きな塊となっていく。肉片はまるで意志を持つように震えながら集合していく。

「ユート、気を付けて!」

「お前もな!」

 その大きくなった肉塊は震え、うごめき、一歩踏み出す(・・・・・・)

 

ザシュッ

 

 切った剣には柔らかな感触が伝わる。骨もなく、手答えがない軟体動物を斬ったような嫌な感触だ。泡立った液体が刃先から滴る。

 何度も剣を振るっても肉塊は崩れない。私の剣と交差してユートの剣も肉塊を裂く。

 だが倒れない。

 私は松明を掴むと落ちた肉塊の一つに炎を近付ける。酷い匂いと真っ黒な煙が立ち登り、その肉塊は燃える。逃げ場のない煙は視界も空気も悪くする。

「くそ、燃やしたら空気が駄目になっちゃう!」

「細切れにしても動いてやがる! エンドレスだ! どうする、シロイ!」

 跳ね返った汁で濡れた手をズボンにぬぐう。

「……先に行こう! 切るのも燃やすのも無理だったら逃げるしかない!」

 ユートが再び徐々に高く盛り上がってきた物を二つに切り裂き、共に通路を駆け出す。後ろを振り返ると肉塊はバラバラと崩れ落ちていっている。すぐに石壁の中へと浸透していく。

「壁だ、ユート! 奴等、壁の中にいる! この臭い蔦で移動してるんじゃないの⁉」

「マジかよ! 逃げ場なんかねぇじゃねぇかよ!」

 

ゴゴ…… ゴ ゴゴゴゴゴ……

 

 足元が大きく振動する。天井から小さな石や蔦の切れ端が雨のように頭上に降ってくる。

 前方の通路の左右の壁が揺れ、天井から蔦が剥がれて通路の中で垂れ下がる。隣のユートに目配せしてから前方に再び視線を向ける。

 壁だ。

 壁がある。

 前方は行き止まりだ。

 二人共急な壁の出現にとっさにスピードを落とせず、激しく衝突をする。壁は長らくそこに存在していたかのように蔦が覆い被さり、古びた色をしている。拳で強く壁を叩くがビクともしない。

 右を見ると鋭角で通路が続いている。

 背後を振り返ると例の肉片が再び壁から滲み出始めている。

「ユート、来た! 行くしかない!」

「クソ! 俺達はトラップに掛かったネズミじゃねぇかよ!」

 私達は右の通路を走り出す。同じような腐臭のする蔦が広がっている。だが以前よりも鮮明な這いずりまわる音に戦慄する。時折壁が激しく振動をし、どこかで動くような気配が伝わってくる。

 

――――誘導されている!

 

 脇腹が痛くなってくる。この腐臭が肺に入り込み、まるで体を内側から侵しているかのようだ。

 そして、突然、目の前に大きな暗い空間が広がる。


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