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ダンジョンの救助部隊  作者: 結城一
第一章 ダンジョンエリート

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第6話 ジンクス

「ユート!」

 

カラン カラララッ

 

「ぅわ!」

 跳ね起きた弾みで手に握っていた剣が床に落ちる。

「なんだ、シロイ? 悪い夢か?」

 ユートは焚火の反対側でブーツの手入れをしている。口には干し肉を咥え、それをゆっくりと味わいながら、ブーツの底にこびり付いた肉片や汁をナイフで削り取っている。ダンジョン内では基本的に服や靴は脱がない。唯一脱ぐのは怪我の手当か今みたいに靴の手入れをしている時のみだ。

「今の……夢?」

 あまりにも現実っぽかった。汗の匂いから寝起きの口の中の味まで。

 私の足にしがみ付いて動きを奪ったユートの体温や体の硬さも。

「手負いの野獣みたいにうるさく唸っていたぞ」

「げんが悪い例え使うんじゃないよ」

「お前は今更悪ジンクスを気にするようなタマかよ。どんな夢だったんだ?」

「え?」

 私は冷汗と湿気でぬる付く前髪をかき上げて眉毛をひそめる。普段は私の夢なんか気にしない男なのに奴の真剣な目付きに心がざわつく。

「暗闇の中で人間の顔らしい物が物凄いスピードで近付いて来る夢」

 ユートは無言でブーツを置くとナイフに付いた汚れを地面の石にこすり付け、顔を上げる。

「俺もだ。同じ夢を見た。寝ているお前を起こしたら、お前は目のない能面で俺の足にしがみ付きやがった。そこで目が覚めた」

「……どういう事? 私とあんたは逆だが全く同じ夢だよ」

「分からねぇ。だがこの階層が何か仕掛けてくるんだったらそろそろだろ」

 確かにずっと嵐の前の静けさが続いている。それはまるでこのダンジョンに値踏みされ、私達の行動パターンや性格、得意や不得意な事を少しずつ試されているかのようである。

 ユートはブーツを履くと立ち上がる。

「さっきションベンをしていてちょっと気になった事がある」

 私はユートと同様に口に干し肉を突っ込むと体を伸ばす。変な体勢で寝たせいで関節からバキバキと音がする。口内に獣臭と強い香辛料が広がり、大量に出た唾液で肉をふやかしながら奥歯で延々と噛む。

 ユートは蔦に覆われた大きな石の箱らしき物の裏へと誘導する。アンモニア臭に混じって僅かに生臭い肉のような匂いがする。

「ションベンした場所を見てみろ」

 言われた通りそこに松明を近付ける。

 彼の尿が掛かった場所にあった蔦の色は赤黒から青色っぽい色が混じっている。そこだけ大量に瘤のような凹凸がいくつも折り重なり、中の液体が漏れ出ている。

「何これ。あんたのおしっこで爆発した……というよりも、増長? 異常成長? したみたいだけど」

「だろ? しょんべん掛かった瞬間にこう変化した。あと松明の火を遠ざけてみろ」

 私は彼に松明を渡すと彼はそれを箱の反対側へと隠す。尿が掛けられたその蔦の部分は僅かに発光をし、その光から小さな粉みたいなのが浮かび上がっては天上へと向かっている。真上の天井には大量にその粉が溜まっている。

 ユートは再び松明を近付ける。天井が光っていた場所はよく見ると壁の石がほころびている。

「ちょっと乗せて」

 有無を言わさずに彼の肩へと昇る。間近で調べてみるとそのほころびの裏には青黒い肉襞らしき物がぎっしりと詰まっている。石の天井の裏にだ。刃先で軽く刺してひねり回す。

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