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ダンジョンの救助部隊  作者: 結城一
第一章 ダンジョンエリート

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第5話 白い能面を編集

    ◇

 最下層に潜ってから今日で七日経つ。救済要請が来てから八日目だ。要請の位置はもう少し先で到達出来るはずである。

 初日と同様、何度も目に見えぬ動きを影の中で感じる。松明を近付けても何も見えない。だが確実に私達の後を追っている。時々重い何かを引きずる音がする。そして異様な気配がよどんだ空気に溶け込んでいる。

 

ズズ…… ズルッ ズルズル ズルル

 

 その時折聞こえてくる何かを引きずる音と水音以外は何もない。トラップの残骸は幾つも発見したが新しく発動したトラップは一つもない。これも異常事態である。トラップは階層毎に違うがどの階層も、どのダンジョンも、自然とすぐにトラップは自動修復される。こんな作動済みの状態のまま修復していないのは異例だ。

 もう一つの異例はモンスターに全く遭遇していない事だ。蔦以外は生きた反応が一つもない。いくらトラップに特化したダンジョンでも、ダンジョン特有のモンスターって言うのはいる。上の階層ではスライムやゴブリン、オークもいる。だがそれらを一匹も見かけていない。遺体すら、ない。

 そして更に異例なのは、ゴロノフ達は怪我の手当の頻度と負傷人数は増えている状態にも関わらず、前進を続けていた事である。食事をした形跡もまだ一度もない。もし食べ物を切らしていた場合、何故前進を続けていたのだ? どこまで続くか分からないダンジョンで。排泄した跡も見当たらない。

 ()()()()()らしい反応があまりにも、少ない。

 私は軽くとった仮眠から目覚めるとまだ向かいで寝ているユートを見る。手には剣がしっかりと握られている。睡眠中でも何かを警戒しているのだろう。彼のこういう勘はとてもよく当たる。

 私は横の壁を覆っている蔦を見る。ここら辺も床から壁、そして天井まで覆い尽している。血液のような液体が流れている以外は動きが見当たらない。

 

――――あまりにも、静か過ぎる


 そこで気付く。

 いつもの水滴の滴る音が、聞こえない。

 何も、聞こえない。

 剣を握って私は上半身を起こす。

 ふと奥の方で何か白っぽい物が見える。

 その白い影はゆっくり、ゆっくりと近付いて来る。

 揺れずに、スーッと無音で近付いて来る。

 

カチャッ

 

 剣を構えて立ち上がる。普段眠りの浅いユートは私の後ろでまだ寝ている。

 火が揺れる。

 壁や床の影と照らされた部分も揺れる。

 だがその白い影は明かりが当たっていないかのように、色の変化は見受けられない。

 

スゥゥゥゥ……

 

 突然、猛烈な速さでその白い影が近付き始める。

「……っ!」

 人間の顔だ。

 目も髪もない、真っ白な能面の顔だ。

 それがどんどん近付いている。

「ユート!」

 後ろで彼が跳ね起きる。

 無言で私の足にしがみ付く。

「ユート! 前だ! 放せ、ユート!」

 焦ってユートに目を向ける。

 

ギギギギ ギギ

 

 彼の首が錆びたような音を立ててぎこちなく頭を動かす。

 眼窩が、口の中が、真っ黒に窪んでいる。

 

カタカタカタカタ

 

 笑っている。

 目の無いユートの顔が私を見上げている。

 そして喉で笑っている。


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