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ダンジョンの救助部隊  作者: 結城一
第三章 えぐるような連鎖

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28/30

28 この世で朽ち果てろ!

――――……くそ

 

 私は一瞬頭の中が真っ白になるとゆっくりと息を吐き出す。

「このダンジョン、嫌い」

「俺もだ」


――――だから出たいのか?


 振り向きざま一気にナイフをゴロノフの腹部へと突き刺し、横に引く。

 彼の口から真っ赤な血が吹き出す。大きな手で掴みかかってくるのを潜り、思いっきり柄を足で蹴り込む。

「ぐっ!  ……ぁ、ぐぁあああ!」

 握られた大きな拳が左こめかみに激突する。ミシッと嫌な音がして視界が真っ赤に染まる。痛みは、ない。それよりも激しい勢いで体が吹っ飛ぶ。

「てめぇ……! 何を――――」

「『胞子』は知らないんじゃなかったの⁉」

「話の流れでそうなっただけだろ! 俺があいつらのようなモンスターに見えるのかよ⁉︎」

「ここでは視覚情報は無意味! ユートはどこ⁉︎」

 ゴロノフはナイフを抜かずに少しずつ後ろにずり下がり、壁に寄りかかって床に滑り落ちる。赤い血溜まりが少しずつ広がる。

「だからそいつは知らねぇって! 俺がモンスターならばお前を助けるかよ⁉︎ さっきだってさっさと殺すだろ⁉︎」

「ここから脱出する切符ならば助けるでしょ! 擬態の存在を考慮するとあんたもここから出せない」

「救助隊じゃねぇ……のかよ⁉︎ 抹殺部隊じゃねぇか……!」

「必要ならば」

 私はふらつきながら立ち上がる。まだ剣を持っている彼の手を見る。

「人間だったら、あの世で償う。モンスターならばこの世で朽ち果てろ」

「ふ……ざ……けっ」

 彼の呼吸が荒い。私は彼の射程距離に入らないように気をつけながら座って彼を見つめる。頭がぐわんぐわん揺れる。

「残念ね。あんた、いい人だよ」

「俺を殺した女に褒められても困る」

 私は少し苦笑し、静かになっていく男を眺める。

「……剣を抜いてくれ」

「……自分で抜きなさい。大丈夫。最後まで……見ているから」

「冷酷だな」

「そうじゃなきゃこの仕事は出来ない」

 ゴロノフの頭から力が抜け、両腕が体の横へと落ちる。

 私は暫く彼を眺める。

 彼が動かなくなってからどれぐらい経ったのか分からない。私は立ち上がり、彼の体に深く刺さったままの柄を掴む。


ズズズ…… ズズ……


 突然ゴロノフの体が痙攣する。


カタカタカタカタカタカタ


「やっぱモンスターじゃないか!」

 ナイフを一気に引き抜き、後退りをする。ゴロノフの頭がゆっくりと上がって視線が合う。

「……この世で朽ち果てろ!」

 一振りで彼の頭を切り落とす。


ズズズ……


 頭が震え、少し動く。もう嗅ぎ慣れてきた強烈な腐臭が鼻を付く。

 ゴロノフの生きた頭部は見たくなくって私は通路をふらつきながら歩き始める。時々振り返り、彼の頭部が追いついて来ていないか確かめる。

「シロ……ィイ」

「くそ、この臭い蔦はマジで最悪」

 私を追いかけてくる小さな声を背にまた急ぐ。

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