24 ゴロノフ再び
――――階段!
前方の闇の中で僅かに見えるのは間違いなく階段である。上方へ上る階段、そして下方へと続く階段。
これは多分、私の運命の分かれ道だ。
階段に到着する頃にはあまりゆっくりとどちらへと行こうか吟味する時間がない。後ろからは大量の肉塊が押し寄せ、どれも私を喰い付くそうとするかのように肉を伸ばしてくる。
――――下!
私はナイフを手にしたまま階段を駆け下りていく。手が階段の影に触れる。
カチッ
階段が大きく振動し始める。床が抜け落ち、石が真っ暗な穴の中へと落ちていく。私は階段から見える下の階層へと腕を伸ばして飛び込む。
硬い石に擦れて全身に細かな擦り傷が出来る。それでも一気に立ち上がり、無暗にまた走り出す。穴の方から私を追いかけてくる肉塊がこの階層の方にも滑り込んでくる。
この階層にも上の階のような灯りがある。ただ違うのは近くを通らないと灯されない事だ。マズい事にそうすると少し離れた場所に何がいるか全く見えないと言う事だ。
ブシュッ
「いっ……!」
後ろから肩に噛み付かれる。血飛沫が空気に散る。
ナイフを肉塊に突き刺し、力ずくで床に投げ飛ばす。
ナイフで更にその後ろにいる個体の指らしき物を斬り落とし、刃をひねって真っ二つに斬る。相変わらず異様に柔らかい感触に吐き気がする。
「しゃがめ!」
突然怒声がして私は咄嗟に頭を下げる。すぐ上を長剣の刃が通る。
力強い腕が私の腕を掴み、グイグイと引っ張って行く。
彼は私の後ろで肉塊を切り刻んでいきながら私はなるべく遠くに逃げようと足を動かす。
やがて距離が空いたのか少し静かになる。
「ユートをどうした⁉︎」
私はナイフをゴロノフの喉に押し当てて彼を壁に押しつける。
「おい⁉︎ 何なんだ! 君もユートって奴も知らねぇよ! 俺の逃げ道に君がいたから助けただけだ!」
良く見ると頬にあった血痕の中の涙の痕もなく、こっちのゴロノフの方が少し小さな傷が全身についている。
――――クソ! さっきのゴロノフとそっくりじゃないの!
「救助部隊だ。さっきあんたに会ったよ」
ゴロノフは両手を上げていたが焦った表情から一瞬で表情が消える。
「そいつは俺じゃねぇ。擬態だ」
「私の気絶したパートナーを連れて行った」
「……俺にナイフを向けている理由は分かったが、悪い。それは、本当に、俺じゃねぇ」
僅かに刃を引く。彼の喉の皮膚が少し裂けて真っ赤な血が滴る。
「人間?」
「人間だ」
私は刃を構えたまま少し下がる。ゴロノフは切れた喉を擦りながら私の全身に視線を走らせる。
「なんで救助部隊がここに?」
「あんたのパーティーから要請が来た」
「俺の?」
ゴロノフは少し眉毛を顰めると溜息を吐いて天井を見る。
「取り敢えず歩きながら話そう。一カ所には長く留まりたくない」




